第2589号 2004年6月21日


「内視鏡名人」が一同に集う

第67回日本消化器内視鏡学会開催


 さる5月26-28日,第67回日本消化器内視鏡学会が勝健一会長(阪医大第2内科教授)のもと,京都市の国立京都国際会館において開催された。「診断・治療技術の飛翔に向けて-医用光学とエレクトロニクスの世界」を理念に掲げた今回は,4つのビデオシンポジウム,6つのビデオワークショップと,具体的な技術をビジュアルで紹介するセッションが目立った。また,教育講演は「内視鏡名人からの警告」と銘打たれ,食道,胃・十二指腸,大腸,肝胆膵,病理など,各分野の「内視鏡名人」たちが演者として立ち,会場とともに内視鏡専門医としての技術について議論を交わした。


真の「内視鏡名人」とは

 教育講演「内視鏡名人からの警告」では,まず幕内博康氏(東海大)が,「食道」への内視鏡検査・治療について述べた。食道に限らず,内視鏡検査・治療はある程度の侵襲を伴うものである。幕内氏は,医療事故・訴訟が問題となっている昨今の情勢を考慮し,簡単な検査であっても必ずインフォームド・コンセントを確実に取る必要性を強調。さらにその際,出血,穿孔,極めてまれではあるが死亡の可能性,さらには診断能の限界についても文書で触れ,患者の了解を取るべきであるとした。

 実際の手技については,咽頭麻酔に加え意識下鎮静法(conscious sedation)も合わせて行うことにより,苦痛のない検査を心がけるべきであることを強調。観察については,「初心者のヨード染色はベテランの通常観察に勝る」と述べるなど,色素内視鏡の重要性を指摘した。

 続いて,浜田勉氏(社会保険中央病院)が「胃・十二指腸」の内視鏡検査・治療について述べた。浜田氏はまず,内視鏡検査は,第三者が後からデータを見て判断するのではなく,検査時に施行医が病変を見つけられるかどうかがすべてであることを強調し,見逃しの多い病変部位を個別に解説した。特に胃の噴門直下後壁,スコープの後ろ側,胃液の溜まる胃体部大湾については,それぞれ見逃し例を紹介した。

 また,内視鏡検査と生検診断の位置づけについては,両検査の不一致例などを紹介。ともかく生検診断から自立した診断を一度は下すことができるようになる必要があると述べた。

 多田正大氏(多田消化器クリニック)は「大腸」の内視鏡検査・治療について,自らの「大腸内視鏡の専門家」としての歩みを紹介しながら,後進へのアドヴァイスを述べた。大腸への内視鏡挿入は,消化管内での食物の流れに逆らって行うものであり,解剖学的には無理がある。そのため,無理なスコープの挿入は出血や穿孔といった偶発症を引き起こす危険性がある。多田氏は,「偶発症を避けるためにはとにかく無理をしないことが大切だが,一方で臨床においては“無理をしてでも検査をしなければいけない”ケースも多い」と述べ,検査技術に習熟する重要性を述べた。

 具体的な手技について多田氏は,現在では多数の書籍,あるいは高性能のコロナビの開発などによって,以前よりも容易に技術に習熟できる環境は整ってきたとしたものの,「技術は最終的には個人的なもの。さまざまな“名人”の技を参考にしつつも,自分なりの技術を身につけてほしい」と,やはり一朝一夕では習得できない,内視鏡の技術習得の困難さを強調した。また,いくら技術を高め,丁寧に観察を行っても見逃しがなくなるわけではなく,他の検査にも習熟する必要があるとし,「大腸内視鏡医であるよりも,一般内科医でありたい」と述べた。

 中島正継氏(京都第二赤十字病院)は,「肝胆膵」への内視鏡検査・治療について,ポイントをまとめた。中島氏は特に経口経乳頭的ルートによるERCP(内視鏡的逆行性胆膵管造影法)の活用について提言。ERCPは内視鏡の手技の中でも技術的に難しく,合併症の頻度が高い。特に急性膵炎は重症化した場合,有効な対策が乏しいため,細心の注意と対策が必要である。しかしながら,ERCPが有効な検査であることは疑いのないところであり,中島氏は,内視鏡医を志す人に,もっとERCPに習熟する機会が与えられるべきだと述べた。

 最後に病理医の立場から,渡辺英伸氏(新潟大)が発言。渡辺氏は,内視鏡診断に役立つ病理知識として,内視鏡での肉眼所見と,切除病変の対応をスライドで多数紹介し,解説した。最後に渡辺氏は,「真の内視鏡名人」とは「自己満足に陥らない,常に試行錯誤する,未完成の人」であるとし,旧来の知識・常識を変革する人材が育つことを望む,と述べた。

個々人の技量にあった手技を

 本教育講演では,上記5名の演者の講演時間は比較的短く,会場を交えたディスカッションに大きく時間が割かれた。特にインフォームド・コンセントに関することや,内視鏡挿入時にどの程度鎮静を行うべきなのか,などについては,演者同士,また会場との間で激しく意見が交わされた。

 最後に,座長をつとめた鈴木博昭氏(慈恵医大)と八尾恒良氏(福岡大)は,「インフォームド・コンセントを取ったほうがいいというのは原則としてあっても,多数の患者を受け持っていて難しいという現状もある」と述べ,どこまでインフォームド・コンセントをとっていくのかについては,各施設の状況に合わせる必要があるのではないか,と述べた。また,鎮静をはじめとした,内視鏡の技術全般については,「無理をせず,個々人の技術に応じた手技を行うこと」や「常に向上を志すこと」を「名人」の条件として上げ,教育講演のまとめとした。