第2585号 2004年5月24日


レジデントサバイバル 愛される研修医になるために

CHAPTER 4
君のコンサルテーションは魅力的か?(後編)

本田宜久(麻生飯塚病院呼吸器内科)


前回からのつづき】

 日常診療をまったくひとりで行なうことはほとんどない。ましてや,研修医時代はなおさらで,口頭でのコンサルテーションが日常である。他の医療者に対し与えるべき技術や知識の乏しい研修医。ならば,症例の問題点を簡潔かつ的確に伝えることは,研修医の必須アイテムといえる。与えるものがないならば,せめて,コンサルテーションそのもので相手の興味をそそってあげたい。すくなくとも不機嫌にはさせたくはない。

 前回に引きつづき今回も,不機嫌な指導医が多い時間帯。すなわち,眠たい夜間のコンサルト場面を想定してみた。

コンサルトの目的(診断,入院の必要性,治療など)を明確に

研修医「当直研修医の△△です。70代女性でもともと肺気腫で呼吸器内科に通院されている方で,入退院を繰り返しています。今回も昨日から入院されていまして,セフトリアキソンを投与されていて,肺炎像はそんなにないんですけど……」

指導医「ごめん。何が聞きたいの?」

研修医「あ,えーっとですね。あのう……。あ,そうだ。治療の相談です。この場合,ステロイドを使った方がいいのか,どのくらい使えばいいのかなんですが」

指導医「ああ,なるほどね。それを先に言わなきゃ」

コメント

 前々回,「結論を先に言う」という項目をあげたが,今回は,結論とすべき内容のカテゴリーに焦点をあててみた。指導医をコールする前に整理してほしい。「自分が何を相談したいのか」,「自分のコンサルテーションは何をアウトカムとして提示するのか」を。コンサルテーションの目的(例えば診断,入院適応,治療,手術適応,カテーテル検査やファイバースコープなどの専門的手技の必要性など)を絞ってくれると非常に明確になり,聞きやすい。もちろん,はじめから上手にできる人は稀。しかし,1年後には成長していたいと常に意識してほしい。

その他の事例

●診断「腹痛の診断がつかずに困っているんです」
●入院適応「気胸の方がいまして,帰宅か入院か迷っています」
●手術適応「交通外傷による腹腔内出血の方がいまして,手術適応について先生に相談したいのですが」
●専門的手技「上部消化管出血の緊急内視鏡のご相談なのですが」

CAUTION

自分が結論を求められたからといって,同じことをナースに求めて不機嫌になってはいけない。

例:

看護師「先生,息苦しい感じがあると○○さんがおっしゃっているんですけど。SpO2は95%で変わりはなく,バイタルサインも安定していて,でも,本人も不安が強いみたいでですね」

研修医「僕に何をしろっていうの!?」

看護師「(電話終了後)『僕に何をしろっていうの!?』だって! もうコールしてやる気がしない!!」

 看護師の電話対応が上記のように,歯切れの悪い時が時折ある。「異常はなさそうだけど,なんとなく大丈夫か不安」という気持ちであることが多いようだ。そして,たいてい準夜から深夜へ引き継ぐ際に,その不安が強くなるので,呼ばれるのは夜中である。こちらも疲れていればイライラすることもあるだろう。ここで,ぐっとこらえることができるかで,懐の深さと謙虚さが見られている。もちろん,これは研修医時代が終わっても続く。

重症疾患のキーワードをうまく使う(「一応」は禁忌)

研修医「婦人科当直の○○先生ですか? 下腹痛の40歳女性です。3時間くらい前からの持続痛ですが,炎症所見ははっきりしません。おなかも硬くないし,反跳痛もないのですが,一応,念のために先生に診ていただきたいんですが」

婦人科医「何を診てほしいの?」

研修医突然の下腹痛で,妊娠反応も陰性です。茎捻転を心配してるので,先生に診察していただきたいんです」

婦人科医「なるほどわかりました。行きましょう」

コメント

 「一応みてほしい」,「コンサルトしておくのが決まりだから診てください」というコンサルトを楽しいと思ってくれる人は少ない。「一応みてほしい」なら,「一応みましたよ」で終わってしまうかもしれない。夜間は集中力の途切れる時間帯。指導医のアドレナリンが出るようなコンサルトが望ましい(研修医に対するアドレナリンではなく,疾患に対するそれである)。そのためには,「先生に○○を指摘してほしい。除外してほしい」という責任の具体的所在が必要である。前項「コンサルトの目的」のカテゴリーを意識した会話からはじまり,重症疾患を想起させるキーワードを盛り込むと,指導医の目が覚めてくる。

その他の事例

●「骨盤骨折で循環動態が安定しなくて,困っています」
●「腹痛が鎮痛剤でも改善しないんです」
●「心嚢液が貯留していて,タンポナーデかどうかみてください」
●「喀血がつづいていて,窒息が心配です」
●「突然発症の胸痛で,心筋梗塞を疑っています」

自分の未熟さを正直に言う

研修医「当直研修医の△△です。突然の腰背部痛の60代男性について相談があるのですが,よろしいですか」

指導医「どうしたの?」

研修医「基礎疾患に高血圧があって,近医通院中の方です。今日,車を降りた瞬間に腰背部痛がありまして。大動脈解離を心配して,CTをとりました」

指導医「どうだった?」

研修医「典型的な像ではないんですが,いくつかのスライスで疑わしいところがありまして,判断に迷ってます。自分では決められません」

指導医「よしわかった」

コメント

 研修医として,自分の経験のなさや知識の少なさに悔しい思いをすることもたくさんあるが,実は「その未熟さこそ,研修医の武器」である。だからこそ,指導医を呼ぶ権利があり,指導医には答える義務がある。自分ができない部分を助けてほしいと,具体的に正直に誠意をこめて伝えよう。もちろん,その武器は長く持つことはできない。期間限定の武器であることは,承知しておいてほしい。

その他の事例

●「救命センターで撮影した腹部CTで虫垂炎を読影する自信がない」
●「エコーで卵巣腫大の有無がよくわからない」
●「頻脈の患者。洞性頻脈や心房粗動かPSVTか判断がつかない」
●「頭部外傷の患者。頭蓋骨骨折の有無を判断できない」
●「重症交通外傷。自分だけでみる自信がない」

コンサルテーションは感謝と感動で終わる

指導医「○○君,抗生剤を使った方がいいよ。バンコマイシンとゲンタマイシンをはじめよう」

研修医「先生,教えていただきたいんですが,今,抗生剤を使うという判断は,どこがポイントになったのですか?」

指導医「そうねえ。迷ったんだけどね。感染性心内膜炎(I.E.)にしては全身状態がいいしね。I.E.じゃない可能性のほうが高いと思うよ。ただね,もし抗生剤を使わずに経過をみて,ぶどう球菌のI.E.だったら,取り返しがつかない。確率だけでは行動は決められない。否定しきれない疾患が致死的疾患か否かで行動は変わる。もちろん,培養をしっかりとってね」

研修医「なるほど! ありがとございました。勉強になりました!」

 そして,この研修医はこの感動を数人の研修医につたえ,感動がshareされていった。

イラスト/小玉高弘(看護師)
コンサルテーションは最高の学びの場である
指導医が決断を下した思考過程を自分のものとしよう! 研修医の質問が指導医の質を上げ,ひいては患者利益となる

コメント

 コンサルテーションは最高の学びの場である。指導医が決断を下した思考過程を自分のものとしよう! 研修医の質問が指導医の質を上げ,ひいては患者利益となる。そして,その興味の喰いつきこそ,指導医への感謝と感動につながっていく。最後に,「勉強になりました」,「助かりました」,「ありがとうございました」など,感謝感動の言葉で締めくくろう。それで,指導医も「眠い時間だったけど,役に立ててよかったな」と思うもの。研修医こそ,指導医がさらに勉強する情熱をもちつづけるための「よきコーチ」なのだ。

CAUTION

 「今の若い者は……」というコメントを腐らず真摯に受け止めよう。こうした発言は繰り返されるものではあるが,真実も含まれている。自分の成長にいかしていこう。

 参考までに,当院でのメールでのやりとりにあった,ある指導医からのコメントを紹介する。もちろん,当院の研修医はみな熱心でやる気十分であるが,それでもこんな意見がでる。

 「最近,研修医の先生の活動につきまして,いくつか疑問に思う点があったので,取り急ぎご報告申し上げます。

 救急外来でコンサルトをされることがあるのですが,コンサルトしたらしっ放し。中には診察をいっしょにされる先生もいらっしゃいますが,研修医の先生の大部分がカルテを渡してコンサルトしたらそのまま,なんですね。外来で待っている患者さんがいる時はしょうがないと思いますが,深夜でこっちが診察を終えて出てきたら,かなりくつろいでて,「え? こっちに返すの?」っていうふうな態度をとられたこともあったそうです。時間があるのなら,せっかくなんだし,診察についてもよいのでは,と思います。こっちに回してそのまま,っていうのはコンサルトというより,研修医の先生ですでに診断つけてしまってますよね。

 コンサルトであるなら,最後まで自分たちで診る,というふうにした方がいいのでは,と思います」

 このような誤解を避けるためにも,感謝と感動で終わるコンサルテーションを意識してほしい。




【筆者略歴】
 1973年生まれ。長崎大卒。麻生飯塚病院での研修医時代より院内でのコミュニケーションに興味を持ち,以来事例を集めている。
yhondah2@aih-net.com