第2585号 2004年5月24日


転換期を迎えたリウマチの薬物療法

第48回日本リウマチ学会開催


 さる4月15-17日の3日間,岡山市の岡山コンベンションセンターで,井上一会長(岡山大教授)のもと,第48回日本リウマチ学会が開催された。画期的な新薬が相次いで臨床現場に登場するなど,現在関節リウマチの治療は大きな転換期を迎えている。また,会期中に,新しい診療ガイドライン(「診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン」厚労省研究班,班長=国立相模原病院 越智隆弘氏)が発表されたこともあり,活気あふれる学会となった。

 本学会プログラムには,シンポジウム「抗リウマチ薬の進歩」をはじめ,いわゆる抗リウマチ薬(疾患修飾性抗リウマチ薬,DMARDs)をテーマにした企画が多数組まれた他,新しい診療ガイドラインをめぐっては特別企画シンポジウムが企画され,いずれも多数の参加者を集めた。

 また,本学会との併催となった第13回国際リウマチシンポジウムでは,マーク・フェルドマン氏(ケネディ・リウマチ研究所)やロイ・フライシュマン氏(テキサス大サウスウエスタン・メディカルセンター)ら著名な研究者が招聘され,最新の薬物療法などをテーマに5題のシンポジウムが行なわれた。


 関節リウマチの薬物療法は,抗リウマチ薬の登場により大きく変わりつつある。すでに承認され,有効性が確立しているメトトレキサートなどに加え,昨(2003)年には免疫抑制薬であるレフルノミドと生物学的製剤であるインフリキシマブが本邦でも承認された。さらに米国ですでに承認されている薬や日本で開発された薬で,わが国で承認申請中もしくは臨床試験中のものもあり,今後も続々と有効性の高い新薬が臨床の場に投入される見込みだ。これらの新薬には大きな期待が寄せられているが,一方で,特異的な副作用も認められることから,その使用にあたっては十分な検討が必要とされている。

抗リウマチ薬の有効性と限界

 シンポジウム「抗リウマチ薬の進歩」(座長=東女医大 原まさ子氏,東邦大大森病院 川合眞一氏)では,そのような現状を踏まえ,「従来薬から新薬に至るさまざまな抗リウマチ薬の臨床での位置づけを明確にし,それらの有効性と限界を明らかにすること」(座長)をめざし,第一線の臨床家・研究者らが口演を行なった。

 まず,川合氏は,抗リウマチ薬の歴史と現状をオーバービューし,抗リウマチ薬の特徴について(1)遅効性である,(2)非特異的抗炎症作用はほとんどないが,RAの炎症症状を改善する,(3)免疫異常(リウマトイド因子)などを是正する,(4)反応する例とまったく反応しない例がある,(5)副作用は少なく,共通のものもある,(6)完全寛解は稀だが,関節破壊の進行を遅らせる可能性がある,(7)エスケープ現象がみられる,の7つ性質をあげた。

 川合氏は日本で既承認の各抗リウマチ薬の有効性のエビデンスを検討,明確に骨破壊を阻害する薬はサラゾスルファピリジン,メトトレキサート,レフルノミド,インフリキシマブの4つであるとした。しかし,これらの薬剤はいずれも特異的な副作用を持つことを強調し,特にレフルノミドについては,「当初稀とされていた間質性肺炎の合併が,わが国では必ずしも稀とは言えない。また,インフリキシマブとメトトレキサートの併用療法においてはカリニ肺炎の合併が少なくない」と述べ,使い分け,使い方の難しさを指摘した。

メトトレキサート使用の問題点

 続いて,山中寿氏(東女医大)は,「関節リウマチ患者の標準薬としてのメトトレキサート」と題して,2000年より東女医大膠原病リウマチセンターで開始したJ-ARAMISという前向き臨床研究(約4000名の関節リウマチ患者の情報を集積中)の成果から発表を行なった。

 メトトレキサートの有効性は多くの臨床試験,メタ分析で確認されており,現在最もエビデンスの明確な薬剤として,欧米では標準薬としての地位が確立している。しかし,日本では投与量が週8mg(米国は最大25mg)にまで抑えられているため,十分な効果が得られていないうえに,メトトレキサート投与の条件が,過去の治療において非ステロイド性抗炎症薬および他の抗リウマチ薬により十分な効果が得られていない場合に限られており,第一選択薬として投与できないという問題も指摘されている。

今後の薬物治療の方向性を議論

 そのような状況を踏まえつつ,山中氏はメトトレキサート投与の効果について検討,J-ARAMISのデータから医師ごとに異なる投与量の差(週4-15mg)とそのアウトカムの差異に注目。「メトトレキサートの用量は効果に反映する」,一方,「メトトレキサートの用量は安全性には反映しない」と述べ,「これからは,まずメトトレキサートとレフルノミドの投与で,(関節リウマチの進行を)抑えられるだろう。それでも抑えられない患者には生物学的製剤を用いるような形になる」と今後の薬物治療の方向性を示した。なお,メトトレキサートの用量については,現在日本リウマチ学会,製薬会社などが増量できるように厚労省に働きかけている。

 また,松本美富士氏(山梨県立看護大短大部)は「適応外使用薬剤の現状」をテーマに,わが国において保険診療上抗リウマチ薬として認可されていない薬剤の中で,抗リウマチ作用が期待されているいくつかの薬剤について,報告を行なった。

 奥田恭章氏(道後温泉病院リウマチセンター)は「併用療法の有効性」について検討。現在エビデンスに基づいて有用とされているメトトレキサートとの併用療法は,スルファサラジン+HCQ,シクロスポリン,生物学的製剤,ブシラミンなどであるが,奥田氏は「日常診療においては,注意深くていねいな診察,評価を行ない,parallel(併用で同時にスタートしそのまま経過を見る)でEBMのある薬剤をタイミングよくstep-up(追加併用)で使用するのがベター」とした。また,EBMの乏しい併用については効果,副作用を個々の患者で厳重に評価しながら治療を行なうことが重要だとした。

 近藤啓文氏(北里大)は,「免疫抑制薬・免疫調整薬の臨床開発」について発表。この分野の薬剤数が少ないことや,生物学的製剤の欠点(専門医としての経験と広い知識が必要,長期的副作用としての癌や感染症の誘発の危険性,注射製剤,高価)をあげ,臨床開発の必要性を強調した。近藤氏は,現在開発中の免疫調整薬にはT614とSMP-114,免疫抑制薬にはタクロリムスとシクロスポリンがあると報告し,また,昨年わが国でも認可されたレフルノミドについては,その有効性を指摘しつつも,その副作用による間質性肺炎が報告されていることから,注意を呼びかけた。

早期リウマチ患者への薬物療法が今後の課題に

 最後に登壇した江口勝美氏(長崎大)は「抗サイトカイン療法の位置付け」について述べた。抗サイトカイン療法を代表する薬剤が,昨年わが国でも承認されたインフリキシマブ(キメラ型抗TNFα抗体)であるが,本年度中には,エタネルセプト(ヒト抗TNFα抗体)も承認される見込みであり,また,アダリムマブ(ヒト抗TNFα抗体)とアトリズマブ(ヒト化抗IL-6レセプター抗体)も現在治験中である。

 江口氏は,これら生物学的製剤の特徴として(1)関節炎を抑制し,ACR(米国リウマチ学会の診断基準)の改善を導くことができる,(2)身体機能障害を改善する,(3)関節破壊の進行を阻止もしくはコントロールすることができる,との3点をあげ,一方欠点としては,結核の再燃をはじめとする感染症をきたしたり,アナフィラキシー様の注射反応をきたすことと,薬価が高価である点をあげた。また,インフリキシマブはメトトレキサートとの併用,エタネルセプトやアダリムマブは単独あるいはメトトレキサートとの併用で投与することとなっている。

 江口氏は,「関節リウマチの関節破壊は関節炎が発症して2年以内に約70%の患者に見られ,初期ほど進行が早い」と指摘。早期関節リウマチ患者に対して生物学的製剤とメトトレキサートを併用すると有効であるという欧米の報告を示し,早期関節リウマチ患者に生物学的製剤を使用するかどうかは,「ベネフィットとコスト,ベネフィットとリスクをどのように捉えるかにかかっている」と述べた。

 司会の川合氏は,シンポジウム全体を振り返り,「やはり従来薬ではメトトレキサートが中心となるのではないか。生物学的製剤が出てきてもメトトレキサートとの併用がキーになる」と述べ,シンポジウムを締めくくった。