第2582号 2004年4月26日


NURSING LIBRARY 看護関連 書籍・雑誌紹介


障害児にかかわるスタッフに必携のマニュアルが登場

療育マニュアル
落合靖男 編

《書 評》仲村美津枝(琉球大助教授・小児看護学)

いきいきとした子どもたちに惹きつけられる

 落合靖男先生編集の『療育マニュアル』で私が気に入っている点は,子どもたちの写真が豊富にあるということと,その写真の目のところに,黒テープがないということである。子どもたちは皆障害を持っているとは思えないほどいきいきして,不自由ながらもそれをものともせず笑っている。誰しもその子どもたちに惹きつけられ,一気に読んでしまえるマニュアルである。

障害児のwell-beingを絶えず求める

 そこに,障害を持っていても普通の子とまったく変わらないのだ,自分の子どもたちのかわいい姿を見てほしいという母親・家族のノーマライゼーション意識や,沖縄小児発達センターの医師をはじめ理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,看護師,保育士,ケースワーカーの意気込みが感じられる。この本のように,施設の全職種が一丸となって1つのマニュアルを作り上げることができるというのも,日頃から障害児とその家族を中心としたチームワークが当然の形として,でき上がっているためであろう。
 沖縄小児発達センターの看護師は,多くの障害のある子どもたちを抱え,その多忙な業務をこなしながらも,毎年必ず1篇以上の看護研究を発表して障害児の看護の改善・普及に努力しており,その成果がこのマニュアルにも充分生かされている。看護を担う私の立場からみても,絶えず障害児のwell―beingを追い求めて工夫を怠らない態度には頭が下がる思いである。
 このマニュアルは,肢体不自由児施設や,障害児施設の職員だけでなく,在宅の障害児を訪問する訪問看護師にとっても,その病態理解や看護援助に加え成長発達を促す援助技術の習得のためにも非常に役立つ本である。また小児科の病棟看護師にとっても,障害を持った児が入院して来た時には非常に役立つマニュアルだといえる。ポケットサイズであり,いつでも調べたい時や困った時さっと開ける利点があり,肢体不自由児施設や障害児施設の職員には是非1冊ずつ持っていてほしいマニュアルである。また少なくとも1冊は,訪問看護ステーションや小児科病棟にも置いてほしい本である。
B6変・頁196 定価(本体2,200円+税)医学書院


グループ療法で行なうがん患者へのサポート

がん患者と家族のためのサポートグループ
デイヴィッド・スピーゲル,キャサリン・クラッセン 著
朝倉隆司,田中祥子 監訳

《書 評》中村めぐみ(聖路加国際病院)

グループ療法の効果

 がん治療の進歩によりがん=ターミナルではなくなり,がんと共に生きるためにがん患者やその家族をいかにサポートするかが重要視されつつあり,その方法のひとつとしてグループ療法への関心が高まっている。
 本書の著者スピーゲルは心身相関に関する医学的研究のパイオニアであり,原著には「A Research―based Handbook of Psychosocial Care」いう副題がついているとおり,膨大な文献を参考に研究結果に基づいた記述がなされている。もう1人の著者クラッセンは訳者らの研究グループの招聘で昨年来日し,米国におけるがん患者のためのグループ療法について講演している。
 がんは悪性疾患であり,そのプロセスにおいてさまざまな苦痛・苦悩を体験するがゆえに,診断名や病気の詳細について十分語られていないことが少なくない。しかし著者らは「患者がいかなる悩みでも話し合え,そして受け入れられ理解されていると感じられる雰囲気の中で,定期的に集まる機会を提供することが有効」とし,グループでサポートを行なうアプローチを「支持・感情表出型グループ療法」と呼び,ソーシャルサポートと感情表出の両方が重要であることを強調している。

がんと向き合うための方法論

 本書の目的は,「治癒の可能性にかかわらず,ケアに焦点をあて,患者が医療者や患者同士から学ぶこと,病気による孤独感が強いときに多くのサポートが受けられると感じること,今まで経験したことのない感情を表現しそれに対処できること」であり,目標は「これから先起こる事態にしっかりとした気持ちで建設的に向き合い,病気やその治療,死の脅威が患者の生活に与えるダメージを最小限にとどめられるようになることである」と明記されている。
 そしてその方法論が研究結果や実例に基づき具体的に提示されているため,サポートグループを実践しようとしている人はもちろん,日頃がん患者や家族と接する機会の多い医療従事者にとっても非常に有益であり,強力な手引きとなることは間違いない。

サポートグループにかかわるすべての人への手引き書

 第1章はがんの診断に伴うストレスと抑うつの問題を取り上げ,ソーシャルサポートの重要性を,第2章はサポートグループが必要な理由について,第3章はグループリーダーがグループを運営する際のガイドラインを,第4章ではグループへの介入方法について,第5章ではメンバーがお互いにサポートしながら会話するように促す方法を提示している。
 第6章はセラピストの基本課題である患者たちの間での率直な感情表現を促すための方法を,第7章では死と死の過程に関する話し合いの課題を,第8章では生命にかかわる疾患から生じる深い孤独感に悩む患者を支援する取り組み,第9章では家族と特殊なグループの運営方法,第10章ではグループに共通する問題への対処法について記している。
 がん患者のためのサポートグループを手がけている者にとっては,ようやく手にすることができたと感じられる優れた書である。
A5・頁344 定価(本体3,400円+税)医学書院