第2581号 2004年4月19日


レジデントサバイバル 愛される研修医になるために

CHAPTER 3
君のコンサルテーションは魅力的か?(前編)

本田宜久(麻生飯塚病院呼吸器内科)


前回からのつづき】

 日常診療をまったくひとりで行なうことはほとんどない。ましてや,研修医時代はなおさらで,口頭でのコンサルテーションが日常である。他の医療者に対し与えるべき技術や知識の乏しい研修医。ならば,症例の問題点を簡潔かつ的確に伝えることは,研修医の必須アイテムといえる。与えるものがないならば,せめて,コンサルテーションそのもので相手の興味をそそってあげたい。少なくとも不機嫌にはさせたくはない。
 今回は,不機嫌な指導医が多い時間帯。すなわち,眠たい夜間の電話によるコンサルト場面を想定してみた。

名をなのる

指導医「はい,○○ですが」
研修医「あ,先生。60代女性なんですけど。10年前に胆嚢摘出術の既往があってですね。今日は嘔吐と腹痛で来られて,レントゲン上はですね……」
指導医「……。(誰だ,こいつ)」

コメント
 自分が誰と話しているのかわからない状況は,陰性感情のきっかけになりやすい。さらに,眠い時間帯,要領を得ないコンサルテーション,実力のない研修医と,イライラは倍増していく。
 最初でつまずかないために,「当直研修医の○○と申します」からはじめよう。

CAUTION
当たり前だが,最初に,呼び出す先生の名前もフルネームで必ず確認しよう。
例:
研修医「あの患者さん,呼吸状態がわるくて不安だから,本田先生に相談しよう。夜中でもしかたない。電話だ」
(ツゥルルル‥…)
指導医「もしもし,本田ですけども」
研修医「あ,先生。ちょっと呼吸状態の悪い患者さんがいるんですが……」
指導医「あの……,わたくし,精神科の本田ですが」
研修医「すみません!」
(後日,呼吸器内科の本田もひらあやまり)

間投詞を控え,区切りよく話す

指導医「はい,○○ですが」
研修医「当直研修医の△△ですがぁ。あのぉ,60代の男性でぇ,動悸でこられたんですけどぉ。なんかぁ,今日の夕方からドキドキするみたいでぇ。そのぉ,大腸検査で下剤も飲んでるみたいでぇ。えぇと,バイタルサインは安定してるんですけどぉ。心電図は心房細動みたいでぇ。えーと,ちょっと診てほしいんですけどぉ」
指導医「……。」

間投詞を控え,区切りよく話す
自分は間投詞でリズムをとっているつもりでも,聞く側にとっては苦痛となる

コメント
 指摘されないと気づかないのが,この余計な間投詞。多い人は1つの症例提示で50回以上言うこともある(研修医同士で数えてみよう)。自分は間投詞でリズムをとっているつもりでも,聞く側にとってはかなり苦痛である。
 勉強になるのは薬剤の説明会。製薬会社の医薬情報担当者(通称MRさん)のプレゼンを研究してみよう。「あのぉ,ええと」を連発するMRさんは珍しい。
 もちろん下手な人がいないわけではない。そんな,つまらない説明会に出会った時は,イライラせずにどうしてつまらないのかを研究してみるとよい。きっと今回取り上げたテーマの大切さを再発見できると思う。

その他の事例

質問に対して,いきなり「だから……」と答えはじめる。質問者には,「だから」の意味がわからないし,なんだか自分がものわかりの悪い人間と言われている気がする。

CAUTION
間合いの言葉がすべて悪いわけではない。間投詞ではなく,適切な接続詞を用いるとよい。本題や問題点に入っていくためのよいメッセージになる。筆者は「実は」を多用している。
例:とある8月の救命センター
指導医「はい,○○ですが」
研修医「当直研修医の△△です。大腿の発赤腫脹の患者さんについて相談したいのですが」
指導医「ほお。何歳?」
研修医「75歳の男性で,今朝から左下肢の発赤腫脹を自覚しています。実は基礎疾患に肝硬変がありまして,今,かなり痛がっています」
指導医「なになに!? それはビブリオの可能性は?」
研修医「しかも魚介類好きで,釣りにも行くそうです」
指導医「今から行くから,すぐに皮膚科の先生に相談して! 血液培養も採っておいてくれ」

相手の大変さを気遣う

指導医「はい,○○ですが」
研修医「当直研修医の△△です。70代女性の発熱なんですけど,フォーカスははっきりしないんですけど,レントゲン上では肺炎があるかもしれないんですが,CRPは……」
指導医「今から挿管する人がいるんだ!20分後でいいか?」
研修医「わかりました。すみません」
(20分後,再度指導医コール)
研修医「先生,先ほどはすみませんでした。今,よろしいですか?」
指導医「ああ,大丈夫だ。こちらこそすまなかったね」

コメント
 前々回でも紹介した内容である。
 全国ほとんどの病院で,当直医師は翌日も普通に働いている。研修医よりも確実に体力が低下しつつある指導医。夜中のコールはつらいものだ。さらに,当直に専念できないことも多く,この事例のように手が離せない時もある。
 電話は相手の状況にかかわりなく,有無を言わさぬ返答を要求する強制力の強いもの。陰性感情が起きやすいのだ。プレゼンの前にせめて,気遣いの言葉を付け加えてほしい。明日も普通に仕事があるお互いのために。もちろん急変時は例外である。

CAUTION
気遣いしすぎて卑屈になりすぎると,かえってイライラを増悪させる。
例:
研修医「あのぉ,先生。こんな時間に大変申し訳ないんですけど……。外傷患者さんがいまして。腹部CTをとったんですが……。今,よろしいでしょうか?」
指導医「今,帰るところなんだけど,なんなの!?」
 この場合,研修医の本心は気を遣っているのではなく,実は気が弱いだけ。相手ではなく,自分の身を気遣っていると言ってよい。自分が怒られるのではないかという不安な気持ちは,ますます指導医をイライラさせる。
 指導医の助けが必要なのは明らかなのだから,「押しが強く,かつ礼儀正しい態度」が大事。帰るつもりの指導医を帰さないのだから,「よろしくない時間にすみません。あなたの力が必要です」という強いメッセージを伝えよう。
 例えば,このように。
研修医「あ,先生。研修医の△△ですが,今,交通外傷の患者さんが来まして,腹部CTをいっしょにみてほしいんです。帰る時間にすみません。お願いします!」
指導医「しょうがねえなあ。わかった」
研修医「助かりました。ありがとうございます!!」

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 私事ですが,4月10日に結納をすませました。「ハズバンド・サバイバル」を教えていただきたい春です。




【筆者略歴】
1973年生まれ。長崎大卒。麻生飯塚病院での研修医時代より院内でのコミュニケーションに興味を持ち,以来事例を集めている。
yhondah2@aih-net.com