第2580号 2004年4月12日


チーム医療が拓く集中治療

第31回日本集中治療医学会開催


 さる3月4-6日,第31回日本集中治療医学会が前川剛志会長(山口大教授)のもと,福岡市の福岡国際会議場および福岡サンパレスにおいて「集中治療のあるべき姿-重症患者管理のシンクタンクとして」をテーマに開催された。
 日本集中治療医学会の学術集会は,医師,看護師,臨床工学技士の3部門で構成されているのが特徴であるが,「医師とコメディカルスタッフの協調体制が基盤」という前川氏の言葉どおり,部門間での情報交換を目的とした合同シンポジウムやパネルディスカッションが設けられ,活発な議論が行なわれた。


他診療科・コメディカルとの連携

 3月5日に行なわれた合同パネルディスカッション「集中治療部と各診療部門との連携-重症患者管理のシンクタンクの機能をいかにはたすか」(座長=九大 高橋成輔氏,同樹会結城病院 窪田達也氏)では,今回のテーマでもある「集中治療のあるべき姿」について,現場の医師・看護師による提言がなされた。
 最初に登壇した宮内善豊氏(綜合病院社会保険徳山中央病院)は,ICUを重症患者治療の拠点とするためには,「ICUでしかできない治療」をめざすべきであると指摘。そのためにICU専門医は,自らの治療水準を上げる努力はもちろん,他診療部門との協力関係を築き,他科医師・コメディカルに集中治療について理解を得る必要があると強調した。
 西田修氏(海南病院)は自身の勤務する病院にICUが新設された際の経験から,ICUの新規開設にあたっては「Generalか否か」,「Open systemかClose systemか」という2つの問題があったことを述べた。
 Open systemでは各診療科の重症患者を1か所に集め,各科の医師がそれぞれ担当するのに対し,Close systemでは各科医師の協力のもと,ICU専門医が中心となって治療を行なう。氏は,「GeneralかつClose system」を選択した理由として,Generalの利点は病院全体のレベル向上および地域医療に貢献できること,Close systemでは患者に滴定治療ができ,指揮系統が1本化されるため医療訴訟を未然に防ぐ効果もあると述べた。
 しかし同時に,こうしたシステムの運営には各科やコメディカルスタッフとの連携が必須となる。そのためICU専門医を中心とした医師・コメディカルによるコミュニケーションの場を設ける必要性があるとし,毎日行なっているカンファレンスの様子を紹介した。
 金成元氏(国立がんセンター中央病院)は造血幹細胞移植を行なう医師の立場から,移植医とICU専門医との連携について提言した。造血幹細胞移植患者は,悪性リンパ腫や白血病などの治療のために大量化学療法や全身放射線照射を受けており,これによる骨髄・免疫抑制のため重症敗血症を合併するリスクがある。氏は同種造血幹細胞移植を受けた390例のうち,重症敗血症と診断されICUに入室した26例について検討し,幹細胞移植後に発症した重症敗血症の死亡率が高いことを指摘,新たな治療戦略のみならず,移植医と集中治療医の連携による早期診断,早期治療が重要であるとした。

栄養スクリーニングによる病態改善

 藤岡智恵氏(麻生飯塚病院)は,ICUナースがNST(nutrition support team)活動に参加する意義について発表。重症患者には少なからず栄養不良が認められることをあげ,「急性期患者の栄養管理は軽視されがちだが,ICUで早期に指摘し改善されることで予後の向上が期待できる」と述べた。
 また,NSTの回診にICUナースや薬剤師が参加することは医療ミスの予防に効果があるだけでなく,各部署・各職種における診療連携にもつながると強調した。
 松月みどり氏(日大板橋病院)の施設では,集中治療部の診療は診療科担当医が行ない,術後多臓器不全に陥った患者はICU専門医が単独で診療を行なう集中治療診療体制をとっている。氏は外科ICUと救命救急ICUの連携においては,治療方針に関して十分な検討が必要なこと,また集中治療部の課題として,研修終了後のバランスのよい医師を配置し各科の専門医が教育にあたることをあげた。
 講演後のディスカッションでは,「ICUを術後,救急,小児のように目的別にするべきか,統合するべきか」というテーマに対して西田氏が,「歴史的にはGeneralが基本。中規模病院では細分化すると機能しないのではないか」と指摘,マンパワー不足の問題に関しては「ICU専門医にコーディネーターとしての能力があればうまくいくだろう」と述べた。
 また,「診療科担当医とICU専門医の役割分担」について宮内氏は,軽症の場合は各診療担当医がICU専門医と連絡を密にしながら診療し,全身管理が必要な重症の場合にはICU専門医が担当するのがよいのではないかと提言した。
 最後にまとめとして登壇した座長の窪田氏は,集中治療部に必要なのは「各診療科との円滑なコミュニケーションのもと,医師・コメディカルによるチーム医療が機能していること」だとし,ICU専門医には集中治療における技術だけでなく,集中治療部のキーパーソンとなる資質が求められているとした。そして最後に「ICUは重症患者の“最後の砦”であり,患者の社会復帰に全力を投入しなければならない」と述べ,議論を締めくくった。