第2578号 2004年3月29日


〔座談会〕
私たちのプリセプター物語

<出席者>
末松あずさ氏(国立がんセンター東病院7A病棟看護師)
大久保千智氏(国立がんセンター東病院7A病棟看護師)
四方田 恵氏(国立がんセンター東病院7A病棟看護師)
川崎久恵氏(国立がんセンター東病院7A病棟看護師)
黒川亜紀子氏(同7B病棟看護師)
冨田美津枝氏(同5A病棟副看護師長)


 プリセプター・プリセプティ間の深いコミュニケーション,先輩からの適切なサポート,新人1人ひとりを勇気づける「がんばれノート」の存在――ここ国立がんセンター東病院7A病棟では,実にユニークかつ効果的なプリセプター制度が機能している。新人を迎えるこの時期,その教育システム運営の秘訣をスタッフの皆さんに語ってもらった。


スタッフ全員で新人を育てる

――まずはじめに,現行のプリセプター制度について簡単に教えてください。
川崎 7年目の川崎です。当院では,基本的に3年目の人が新人を1年間プリセプターとして担当する形をとっています。ただし,当病棟では担当といってもプリセプターにすべてを任せるのではなく,「1年目の教育はスタッフ全員で」というコンセンサスを持つようにしています。
冨田 私が7A病棟の副師長を務めていた時,プリセプターへのフォローアップを行なったところ「任せっきりだとプリセプターの負担が重い」という意見があり改善を試みました。「がんばれノート」もその過程で生まれたのです。プリセプター,プリセプティはもちろん,スタッフ全員が書き込めるノートを1冊病棟に置くことで,新人さんとプリセプターを皆でフォローしていけるのではないかと考えたのです。
川崎 はじめは「新人さんがんばれノート」という名前で,各チームに1冊だったのですが,今では「○○さんがんばれノート」という形で新人1人ひとりのノートが各チームに用意され,誰でも参照し書き込むことができるようになっています。
冨田 当病棟での制度がうまくいったのは,「がんばれノート」の存在はもちろんのこと,プリセプターである3年生をフォローする人がチームの中におり,そうした人たちのサポートがノートを通じて行なわれたからだと考えています。

「がんばれノート」。国立がんセンター東病院7A病棟には,新人1人ひとりに1冊ずつこうしたノートが置かれ,新人とプリセプターへのサポートが行なわれている。

「はじめてのプリセプター」のプレッシャー

――そんな7A病棟に昨年4月に配属されたばかりの大久保さん。この1年を振り返っていかがでしょうか。
大久保 最初に病棟に来た時,私の名前が入った「大久保さんがんばれノート」が準備されているのを見て,すごくうれしかったことを覚えています。学生時代からプリセプター制度のことは知っていて,漠然と「私の面倒を見てくれる先輩がいる」ということは知っていたのですが,ここまで準備して迎えてもらえるとは思っていませんでした。
 「がんばれノート」に象徴されるように,ここほど新人を大事にしてくれる職場はないんじゃないかと感じています。
末松 3年目の末松です。私の場合,昨年4月に自分がプリセプターとして大久保さんを迎えることになってはじめて,「ああ,私も大事にされてたんだなあ」と気づきましたね。新人の頃は,プリセプターや,他の先輩から教えてもらうことをただただ吸収して学んでいくのに必死で,皆がどれだけ私のことを支えてくれていたのかにはまったく気づいていませんでした。
 自分がプリセプターになってからは,新人を看護師として,あるいは1人の人としてみて,育てていくという難しさを感じるようになり,あらためて先輩方のすごさを実感しているところです。
冨田 末松さんはプリセプターになる直前の時期,1年生を引き受けるプレッシャーからか,すごく落ち込んで元気がありませんでしたよね。
末松 2年目の頃,先輩がプリセプターをしているのを見ていて「あんなことが自分にできるんだろうか」と自信を失っていました。知識や技術が自分に十分にないことがとても不安でしたし,また,「指導役になる」ということそのものが不安で,自分にそんな役が務まるはずもないと落ち込んでいたのだと思います。
冨田 実際やってみるとどうでしたか?
末松 最初のうちは,1年目で何もわからないから私が言ったこと,私がしていることを素直にぐんぐん吸収していくだろうと思うと,「自分の駄目なところも1年生に出てくるんだろうな」ってすごく怖かったですね。
 5月ぐらいになって,だんだんと周囲の人が大久保さんのことを「成長したね」と評価しているのを耳にするようになると,ようやく自分のことのようにうれしくなってきました。

ついつい厳しくなってしまう

川崎 その末松さんが1年目の頃,プリセプターを務めたのが四方田さんでした。やはり同じようなプレッシャーはあったのですか?
四方田 そうですね。末松さんが入ってきた時が,ちょうど今のような形でのプリセプター制度になった頃だったのですが,その頃から「プリセプター任せではなく,病棟で育てていくんだ」というコンセンサスはあったと思います。だから,末松さんが失敗しても自分のせいじゃない,という思いで臨んだのですが,実際に末松さんがピッカピカの1年生で病棟にやってきて,笑顔で配属の挨拶するのを見ていると「ほんとうに私でいいのかな」と,不安に押しつぶされそうになったことはよく覚えています。やっぱり,同じような気持ちでしたね。
 末松さんが言うとおり,こちらもまだまだ経験が浅くて,技術や知識面で不安はあるのに教えなくてはいけない。その不安は大きい一方で,実際に1年目として不安いっぱいで仕事をしている新人に対して「できれば内面的な部分でも支えてあげたい」とも思う。そのあたりに大きな葛藤があって,すごくきびしく接してしまったこともあったと思います。
川崎 大事に育てたいという思いと,自分にできるんだろうかという不安から,きつく接してしまうことがあった,ということですね。
四方田 そうです。また,感情的な言い方をしてしまって彼女がちょっとウルウルッとしたりすると,そういう言い方をしてしまった自分に対して,さらに自己嫌悪に陥ってしまったりして,自分の中でもぐちゃぐちゃしてしまうことが多い1年でしたね。でも,「がんばれノート」を見るとよくわかるように,周囲の人が温かかったり,厳しかったり,ほんとうにそれぞれいろんな接し方で新人を育てているんですね。その様子を目にしたり,ノートを見たりしているうちに,「ああ,彼女のいいところってこういうところなんだ」とか「彼女のこういう感性を大事にしてあげればいいのか」とか,いろんなことを考えることができました。ですから,そういった周囲からのサポートによって,プリセプターである私も大いに育ててもらえたと思います。
富田 「1年目の頃は大変だった」ということは,皆が乗り越えてきたところなので,それぞれがよくわかっている。だから,皆それぞれの立場からアドバイスできるのでしょう。ノートを「がんばれノート」と名付けたのも,そういう大変な新人時代を「がんばって乗り切っていこうね」という思いを込めたんですよね。
黒川 私は数年前にこちらに異動してきたので,ここでのプリセプターの経験はありませんが,以前にいた病院でプリセプターをやった時には,やはりきつくあたっていた記憶があります。
 ただ,ここでは新人を3年目のプリセプターが指導し,少し先輩がそれを見守って,という形が定着していることが大きな違いですよね。プリセプターがきつく当たっていても,私や,周囲にいる人が,また違ったやり方でアドバイスする。そういう環境が「がんばれノート」を通して定着している,ということを強く感じます。
四方田 私ならきつく言ってしまうようなことを,すごく優しく書いてくれる人もいれば,私だったら気づかないようなところをほめている人もいる。また,「四方田さんと末松さんのケアのおかげで次の勤務が楽だった」ということを書いてくれる人もいました。末松さんのノートだけれど,そういうことが書かれているのを読み返すと,私も泣けてくるんですよ。この座談会の前に読み返したんですけど,また泣いてしまいました。

姉妹のような関係

冨田 プリセプターが厳しければ,もっとキャリアのある先輩たちが,違ったかかわり方で新人を指導する。こういったことができるのは,スタッフがそれぞれ自分の役割を自覚しているからだと思います。
 例えば2年目の人が新人さんに対して「去年,私もそうだったよ」といったことをノートに書きます。それを新人はもちろん,スタッフがみんな読むことで,「ああ,2年目の人はこういうふうに考えて,かかわっているんだ」とわかる。そうすると,同じ新人に対する時でも,プリセプターとそれ以外の人ではかかわり方が変わってきます。そういうふうに,役割分担が自然とできてくるんだと思うんですよ。
 プリセプターがすごく厳しいのに,副師長である私が同じように厳しくしたら,新人は潰れてしまいますよね。だから私はいつも「かわいい,かわいい」「よくやった」「よくできるねー」という感じで,何があっても褒める役をすることが多かったです。よほどでないかぎり,怒ることはしません。それを見ているほかの人は,私が可愛がれば可愛がるほど,厳しくしてくれる(笑)。だから私は安心して褒められます。
黒川 「がんばれノート」があることで,そのあたりのバランスが取りやすかったというのはありますね。私は私の経験なりに,新人やプリセプターを見ていて言いたいことが出てきます。そういう時に「がんばれノート」があると,言いやすかったです。また,自分の経験から,プリセプターが精神的にきついっていうのはすごくよくわかるので,プリセプターには積極的に声をかけるようにしていました。
――プリセプターがどうしてもプリセプティーにきつくなってしまう時に,上の人が優しくフォローするというのは,昔の3世代同居の家族を思わせますね。孫に弱いお祖父さんがいて,はじめて父親や母親の厳しい教育が成立する,といったイメージと似ているように感じました。
冨田 そんな風に表現する人もいますよ。お母さんがいて,お姉さんがいて,自分がいて,可愛い妹たちがいて,といった形で,それぞれが自分の下に妹を持って,すぐ上のお姉さんがプリセプターで,もっと上のお姉さんがいて……私はお母さんみたいな感じですよね(笑)。

■プリセプターの1年を乗り越える

新人にきつくあたってしまう時

――プリセプターへのフォローアップ研修のようなものはあるのですか?
川崎 ありますね。プリセプターになる時を含め,年に4回ぐらいあります。
四方田 だいたい,他病棟の人たちとのグループワーク式なんですが,皆同じような気持ちを持っているのでわかりあえるという意味ではいいかもしれません。ただ,プリセプターばかりが集まるとどうしてもプリセプティへのマイナス感情が増幅されるところがあると感じました。
 逆に言えば,病棟での日常のなかでのフォローアップのほうが大きいですね。各年代の人がかかわってくれるので,プリセプティとの関係がつらくて,離れたい時には他の人がかかわってくれるということがある。実際,「今は彼女の近くにいたくない」と思う時があったんですが,そういう時には,末松さんへの周囲からのフォローアップは手厚かった。やはり,日々,病棟で勤務している時のフォローアップが大事だと思いますね。
黒川 関係が悪くなった時というのは,例えばどんな時ですか?
四方田 1回注意したことをまた繰り返したりすると,どうしても「前に言ったでしょっ!」と言いたくなっちゃうんですよね。それはまずいだろうな,と自分でも思うから,我慢するんですが,そうすると言葉はソフトでも結局きつーい口調で「末松さん! あの時のふり返りはした?」みたいなことを言っちゃうんですよ(笑)。
 そして,そんなふうに言ってしまった後で,「彼女は一生懸命働いているのに……私は1つの失敗だけを見て責めてしまった。彼女,自信をなくしていないだろうか」と落ち込んでしまうんです。
――末松さんは心当たりありますか?
末松 そりゃあありますよ。1年目の頃はいつも混乱していましたから。四方田さんから「末松さん!」て呼ばれると「ああ,なんだろう。また何かやったかな……」っていうのはありましたし,厳しく言われることもありました。ただ,それほど感情をぶつけられたとは思ってないですよ。
――大久保さんは今,末松さんの指導を受けているわけですが,いかがですか?
大久保 末松さんと同じで,感情的に怒られた,とは感じていないですね。最初の頃は「すごく厳しい先輩だなー」と思ってましたが,今ではそうやって厳しくしてもらったおかげで,成長できたという実感はありますから,末松さんがプリセプターでよかったな,と思っています。
黒川 末松さんは,意識的に厳しくしていたんですか?
末松 たしかに指導していて「私って,こんな人間だったんだ」「こんなに厳しかったんだ」って自分で驚くことがありました。
 今思うと,はじめて指導者という立場になって,大久保さんとの距離の取り方がわからなくて困惑していたんですね。これまでの家族とか友達とかとは関係性が違いますから。私はけっこうのめりこみやすいタイプなので,距離が近すぎると,大久保さんの感情にシンクロしてしまって自分が見えなくなりそうだと思って,意識的に距離を置こう,厳しく接しようと考えたところはあります。
 最近,やっと肩に力をいれずに彼女と接することができるようになったように思うのですが,結局1年近くかかってしまいましたね。仕事の話ばかりじゃなく,趣味の話とか,普通の話ができるようになって,すごく楽になりました。
川崎 最初に接する頃は,プリセプターがしゃべりっぱなしですよね。そうでなければ,物品の準備もすべて2人分で,それを教えながらやっているわけですから,なかなか雑談をする余裕なんてありませんよね。
四方田 何をするにも,話しながら,説明しながらで,さらにプリセプティがやることを後ろから見て「ああじゃない,こうじゃない」と指導する。詰所に戻ってから,その時に行なったことをひとしきり全部説明したりと,ほんとうにプリセプターってしゃべりっぱなしの日々を過ごすんですよね。
 そういった時間的な厳しさもありますし,精神的にもまだ看護経験が2年しかないわけで,それほどの自信があるわけでもない。だから余裕がないんですよね。
冨田 ここでは外科も内科も,急性期・慢性期はもちろん抗がん剤治療中の人まで,いろんな人が入院してきます。だから,教えなければならないことはそれこそワゴンへの物品出しから患者さんへのかかわり方まで,ほんとうにたくさんあります。新人が一人前になるためにはすごく時間がかかります。ですからプリセプター,プリセプティ双方への周囲からのサポートが,絶対に必要なんですよ。

■「一人前のナース」になるために

誰もが書き込める「がんばれノート」の果たす役割

――このチームでの教育がうまくいっていることの象徴が「がんばれノート」だと思います。
冨田 ノートがあることのメリットの1つは,それぞれの人の看護観がそれを通して共有できるということでしょうね。
 私には私の,川崎さんなら川崎さんの,経験に応じた看護への思いや考え方があって,それがノートににじみ出ているわけです。それを皆が読むと,だんだんとそれぞれの看護観というものが伝わっていくんだと思います。
 もちろん,お酒を飲みに行ったりすることで,そういったものを共有することもできると思うんですが,文章に残しておくことで,チーム以外の人もそれを共有することができます。実際,他チームの人が読んだり書いたりすることもありますから。
 もう1つのメリットは,実際の患者さんのかかわりについて,ノートを通して皆で議論できるというところでしょうね。ある患者さんが怒ってしまったとする。別の看護師がその理由を聞いて,そこに書き込む。そうすると,それを読んだ,まったく関係のない人から,「そういえば私も2年目の頃,それと同じような失敗をした」といったことが書かれていたりする。そういう多方向のやりとりができたということも大きいでしょうね。
黒川 以前いた病院にも指導用のノートはありましたが,「がんばれノート」のように,新人もベテランも関係なく書き込めるようなものではなく,もっぱら指導者同士での情報共有のようなものだったように思います。
――ここでは新人である大久保さんも積極的に書き込んでいますが,書きやすかったですか?
大久保 まずプリセプターである末松さんが書いてくれたことで,それに答えるような形で書き込めたので書きやすかったです。また,ノートに私の名前が書いてあるわけですから「私のノートなんだ」という意識がはじめからありました。それも書き込みやすかった理由だと思います。同期のノートと比べて,私のがいちばん分厚いのが自慢です(笑)。
――そのノートは,ナースステーションに置いてあるんですか。誰もが見て,書きたい人が書きこめるのですか?
冨田 カルテ台の上に置いてあります。だから医師にも見てくださいって言っているんですけどね。なかなか見てくれない(笑)。

私たちが「がんばれる」理由

――「がんばれノート」がプリセプターとプリセプティの交換日記に終わらずに,いろんな人が書き込むようになったのは,やはりチーム全体に「新人を皆で育てよう」という共通認識があったからでしょうか。
冨田 それもありますが,そもそも誰も新人教育に自分が無関係だなんて思ってないんですよ。大久保さんのプリセプターは末松さん。末松さんのプリセプターは四方田さん。四方田さんのプリセプターは川崎さん……といった形で,言ってみれば「関係ない人」なんていない。全員がどこかでつながっているんです。
川崎 実際,私も「大久保さんがんばれノート」にどんなことが書かれているんだろうと気になりますし,人の書き込みを読んでいると,自分のなかでもいろいろとこみ上げてきて,書くようになります。
四方田 新人が書き込んでいると,「応えたい!」という気持ちになりますよね。末松さんのノートを読み返してみると,彼女が自分で「大事だ!」と思ったところには下線が引っ張ってあったりするんですよね。そういう風に,新人がノートを大事にしていると,それに応えて書きたくなるんだと思います。
冨田 一人前のナースになるのって,本当は大変なことなんですよね。1年目は泣くほどつらい思いをする。2年目になって楽になるかと言ったらそんなことはなくて,1年目とは違うけれどやっぱりつらい。3年目もやはりつらい。自信を持って,胸を張って人を教えるなんて,ほんとうは相当経験がなければ無理。だから,逆にいえばみんな,1年目,2年目,3年目それぞれのつらさがよくわかるんだと思いますし,だからこそ応援したくなるんだと思います。特に1年目は誰しも「辞めたい」と思うものだし,そこを経て来ているから,皆,辞めないようにサポートしようという気持ちもあるんだと思います。
――皆さん,やはり「辞めたい」と思うことはあったのですか?
四方田 それはありますよ。今でもたまに「もう,辞めてやる!」って。
冨田 誰に言ってるのよ(笑)。
四方田 「ほんとに嫌だ」「もう続けられない」「自信がない」って思うことは,多々ありますよ。でも,病棟に来ると皆がいて,そのことが何だか楽しくてやっていけているという感じですね。
 1年目はどうしたって,先輩たちも恐いし,仕事もたいへん。何もわからない自分が,父親ぐらいの年代の人の思いを受け止めたりすることがすごくつらく思ってましたね。
 年数を経ても,仕事のつらさは同じようにあるのですが,やはり一緒に仕事をする仲間がいることは大きいです。末松さんとは今も同じチームなんですが,一緒にいるとすごく救われるんですよね。「ああ,体もつらいし,きょうは仕事に行きたくない」とか,ちょっと甘えてみても,彼女が笑わせて,元気づけて,「行って来い!」って送り出してくれたりします。「大きくなったもんだ」って思いますよね(笑)。
 副師長さんは,看護師として言っちゃ駄目だと思われそうなことでも,何でも言わせてくれる。「何でも言っていいけど,そのかわり患者さんの前では笑顔でね」と送り出される。そういうスタッフそれぞれとの人間関係が支えになって,気づいたら「辞める辞める」と言い続けてきたのに今のところ辞める予定がなくて,幸せなことだなと思いますよ(笑)。「辞めたい」と思うようなできごとを上回るいいことがいっぱいあった,っていうことなんでしょうね。
末松 いつも朝起きたら「ああ,仕事かぁ」と思うんですけど,病棟に来てテーブルに座ったらもう楽しくなってきて,「その日1日,がんばろう」という気になっている。帰るとまた「ああ,また明日仕事かぁ。やだなぁ」と思っているんですけどね(笑)。
 それはやっぱり,いろんな話を聞いてくれる先輩たちがいるからでしょうね。先輩たちからも新人や,私たちに対して心を開いて気持ちを話してくれるので,その安心感がある。だから,「がんばれノート」も1年目から書けるんだと思うんです。先輩とコミュニケーションが取れることは,仕事を続けていくうえですごく大事なことで,そのツールとしての「がんばれノート」の存在が,やっぱり大きいのかなと思います。

■「大久保さんがんばれノート」より

4/9 末松 7Aへようこそ。
 初めてのことでドギマギしていることと思います。私も試行錯誤しながらやっているので,心もとないと思いますがよろしくお願いします。私が教えられることといったら微々たるもので,しかしここで学ぶことは本当に本当にたくさんのことがあると思います。そしてここにいるスタッフの人たちはみな,7Aが誇るALL JAPANみたいなもので,本当にすばらしい人たちばかりです。
 本当に教えられることは少ないですが,一緒にまたイチから学んでいきたいと思っています。そして,看護師になってよかったなあ……と思ってくれたらそれで充分だと思っています。がんばっていきましょう。
4/9 大久保 メッセージありがとうございます。昨日はすごく緊張していて,これからやっていけるのかなーと不安に思ったりもしましたが,だんんだんと楽しく感じられるようになってきました。わからないことがわからない状況で,御迷惑をおかけすると思いますが,末松さんみたいなナースになりたいという今の気持ちを忘れず努力していきますので見放さずに応援してください。どうぞよろしくお願いします。
(中略)

4/15 末松 病棟に来て,実際患者さんとふれ合うようになって約1週がたちましたね。どうですか? 覚えることもほんとうに気が遠くなるほどたくさんあります。私も一気に本当にたくさんのことを伝えているし,しかもとりとめないことも山ほどあって,混乱させているだろうと思います。毎日毎日すごくたくさんのことを求めてしまい「いっぱいいっぱいなんだよ!!!」と腹立たしいこともあると思います。キャパを超えそうになったら必ずそう表現してください。
 常日頃から言っていることですがわからないこと,もう1度ききたいこと,スピードが早すぎる,自信がないこと,そういうことがあれば必ずそう表現してくださいね。
「はい,大丈夫です」といわれれば,私は理解してもらえたと思ってどんどん説明していきます。大丈夫でなければわかってもらえるように説明します。遠慮しないでください。それがプリセプター,プリセプティだと思います。
(中略)

4/16 川崎 今日は末松さん以外の指導係としてつかせていただきました。末松さんと比べてまた違う点に厳しいcheckが入ったのではないでしょうか。学生ではないので,大久保さんのアセスメントをチェックした本日です。やはりまだ4月なので,学生っぽさは残りますが,この1週で結構周囲のアセスメント内容を自分のものにしつつあるのかな……と感じました。面倒がらずに,恥ずかしがらずに,自分のアセスメントを言葉で表現してください。そうしたら,私たちは,それをさらに深めていこう・って返すので。これからも,どうぞよろしくね。

「大久保さんがんばれノート」より。大久保さん,末松さんはもちろん,多くの人からの書き込みでノートはびっしり。研修計画や振り返りまで挟み込まれたノートは,文字通り新人にとっての「宝物」。

※紙面の都合上これだけしかご紹介できませんが,「大久保さんがんばれノート」にはこの後も,大久保さん,そしてプリセプターである末松さんの成長の過程ともいうべき内容が満載されています。なお,末松さんの新人時代の「末松さんがんばれノート」は,書籍『はじめてのプリセプター 新人とともに学ぶ12か月』(医学書院,2003年)に収載されております。この春はじめて新人を担当するプリセプター,そして看護管理者の方はぜひご覧ください。


●出席者紹介
末松あずさ氏
7A病棟3年目看護師。昨年4月から大久保さんのプリセプターを務めている。
大久保千智氏
昨年7A病棟配属の新人看護師。プリセプターである末松さんの指導を受ける日々。
四方田恵氏
7A病棟5年目看護師。末松さんのプリセプターを務めた。
川崎久恵氏
7A病棟7年目看護師。四方田さんのプリセプターを務めた。
黒川亜紀子氏
7B病棟9年目看護師。病棟の「お姉さん」的存在。元7Aスタッフ。
冨田美津枝氏
元7A病棟副師長。5Aに異動後も7Aの「お母さん」的存在。