第2577号 2004年3月22日


第19回日本環境感染学会開催


 さる2月20-21日の両日,第19回日本環境感染学会が,砂川慶介会長(北里大)のもと,横浜市のパシフィコ横浜において,開催された。
 昨年のSARSやウエストナイル熱などの新興感染症の流行をふまえ,これから医療関係者がどのように感染症に対して取り組むべきか,院内感染対策や海外旅行者の診断・治療など幅広い視点での議論,提言が行なわれた。

不測の事態にどう対処するか

 特別講演「SARSその後-SARSに学ぶ院内感染対策」で登壇した岡部信彦氏(感染研)はまず「エビデンスを求めることは重要だが,すべての病気に最初からエビデンスやマニュアルがあるわけではない」としたうえで,SARSのような新興感染症が引き起こす不測の事態には,それまでの経験や知識による判断,対応が必要であり,特に「正しい情報を得る,そして考える」ことが重要であると述べた。
 そして氏は,今回の感染拡大の中心が医療機関であったことについて,院内感染対策の不十分さを指摘。これを裏づけるものとしてベトナムのバクマイ病院,香港のプリンス・オブ・ウェールズ病院において院内感染対策を徹底した結果,SARSの2次感染がまったく起こらなかったことを報告し,適切な院内感染対策が感染拡大防止に有効であることを強調した。

適切な情報提供と早期診断

 シンポジウム「旅行者感染症の現状と対応」(司会=慈恵医大 柴孝也氏,横浜市立市民病院 相楽裕子氏)では,海外旅行者の健康と感染症の国内侵入への対策が,空港検疫所や臨床医などさまざまな立場のシンポジストによって議論された。
 高崎智彦氏(感染研)は米国でのウエストナイル熱の流行について「海外からの感染症の侵入を防ぐことができず,国内で定着してしまった事例」としてその経緯を紹介するとともに,「ヒトにのみ感染する天然痘のようなウイルスと異なり,自然界の生態に密接にかかわる撲滅困難なウイルスである」と指摘し,わが国においてもヒト,鳥,蚊など多分野でのサーベイランスシステムが必要であると強調した。
 前澤良彦氏(厚労省成田空港検疫所)は,日本人海外旅行者の特徴として,ほとんどが5-10日間の短期間旅行であることをあげ,海外の感染症が潜伏期間のうちに国内に侵入する可能性が高いことを指摘した。
 成田空港検疫所では旅行者への感染症情報の提供や,帰国時に有症者の採血・検便などを行なっており,これによりマラリアやデング熱を早期発見することができたと報告。こうした取り組みが感染症の侵入防止に有益であることを示唆した。
 加地正伸氏(日本航空)は,産業医の立場から客室乗務員に対する感染症教育を紹介。食事や飲料水の選択に関して指導を徹底させるとともに,渡航先の衛生状況をあらかじめ調査,必要に応じた予防教育を行なっているという。
 吉川晃司氏(慈恵医大)は臨床医の立場から,帰国時に旅行者が発熱を訴える場合は,治療の遅れが致命的となるマラリアをまず鑑別し,あわせて腸・パラチフス,デング熱などを念頭に置くこと,下痢の場合は便培養の他に便の鏡検を行ない,熱帯感染症が疑われるようであれば個室対応および接触予防策を行なうことを述べた。
 氏は「旅行者感染症の対応においては迅速な対応と早期の適切な治療が欠かせない」とし,各医療機関での適切な初期対応の重要性を強調して講演をしめくくった。