第2574号 2004年3月1日


〔投稿〕

何が「セクハラ」とみなされるのか?

――年齢,性別によるセクハラ感の違いを考える

田久浩志(中部学院大学人間福祉学部),斉田京子,入山貴弘,小島明美,小寺淳子,篠原麻依野,渡辺朋恵(以上,中部学院大学人間福祉学部健康福祉学科3年),田中圭,遠藤貴子(以上,中部学院大学人間福祉学部人間福祉学科3年)


男女間の認識はどうズレているか

 近年,職場・学校などでのセクシャルハラスメント(以下セクハラと略する)に関するトラブルが,新聞紙上やメディアで報道される機会が増加している。しかし,事件の内容ばかりが報道され,男女間のセクハラに対する認識がどのように異なっているのかといった定量的報告は少ない。
 また,女性の多い保健・医療・福祉の分野では,男性職員は対人関係に配慮しないと知らない間にセクハラ行為ととられてしまう場合も想定することができる。そうなると,潤滑なチームワークの保持が困難となり,質のよいサービスを提供していくことが難しくなる。
 サービスの質は施設・病院の利用者にとっても大きくかかわってくる事柄であり,チームワークの乱れから起こるサービスの質の低下は避けなければならない。
 さらに,セクハラは職場の同僚間だけのトラブルではなく,患者,利用者に対するトラブルの原因になることも考えられる。
 以上のような理由から,女性にとってどのような発言や行為がセクハラとみなされるのかを明確にし,トラブル回避のために学生,社会人の男女と,女性看護師を対象としてその意識の定量解析を行なった。

学生,社会人,看護師を調査対象に

 今回の調査で対象としたのは,福祉系大学であるG県C学院大学女子学生457名,男子学生338名,Y県一般社会人女性376名,一般社会人男性476名,G県女性看護師501名である。
 セクハラに対する認識は当事者同士の人間関係に依存する。そこで,今回の調査にあたっては,仕事の場での少し離れた関係の人,もしくは初対面の間柄の人と食事にいった時と状況を設定し,セクハラについて,女性の年齢別の変化と男女の認識の違いについて報告する。統計解析には,SAS社のJMP Ver5.01を使用した。
 回答者のフェース項目として性別,年齢,ファッション・化粧に凝るかなどを用いた。セクハラに対する認識の項目として,スリーサイズ,年齢,恋人の有無などを聞かれる,宴会の席でのお酌の強要などについて,「気にしない」(1点)から,「きわめて不快」(4点)の順序尺度を不快度として評価し,それらの問題と年代の関係を検討した。
 また不快な思いをした場合の女性の対処法について,1:忘れる,2:自分の中に留める,3:悪い風評を流す,という3つの項目で別に求めた。

調査結果をどう考えるか?

【不快な思いをした場合の女性の対処法】
 この調査結果からは学生,社会人に関係なく,悪い風評を流すという割合が,常に1/4程度存在しているということがわかった(図1)。不用意な発言で相手にセクハラとみなされてしまった場合,4人に1人の媒介者によって,大学や職場での立場が悪くなることが予測されるであろう。また,髪型に凝る,化粧に凝る,ファッションに凝る,の結果にかかわらず,悪い風評を流すという割合に変化は見られなかった。つまり年齢,外見などでセクハラに寛容かどうかは判断できないということが言える。つまり,化粧に凝るから,ファッションに凝るから,お年をめしているからなど,年齢や外見に頼った男性の思い込みによる判断は危険だということが言える。

【年齢を聞くこと】
 「年齢を聞くことに関して」は,不快に感じる割合が高かった。学生は学年で相手の年齢を判断することが可能であるが,社会人では外観と実年齢が必ずしも一致しないため,相手の年齢を判断することが難しいということが考えられる。このことから,相手の年齢を推定したうえでの不用意な発言は避けるべきことが示唆された(図2)。

【褒め言葉】
 褒め言葉に関しては,(色っぽい,セクシー),(美人,きれい),(かわいい)と言われる場合を調べた。全般に,きれい・かわいいと言われることに対しての不快度は低いが,「色っぽい・セクシー」などといわれることに対しては社会人での不快度が高かった(図3)。このことから,女性は性的なことを連想される言葉を嫌うことが考えられる。そのため,女性を褒める時には外見を取りあげるのを避け,知性や内面に注目することが無難であると考えられる。初対面の席で,場をもり立てるために女性に対して褒め言葉がでてこない場合は,一芸を磨き女性に楽しんでいただくのもよいのではないだろうか。

 若干の差はあるにしても各項目への感じ方は学生群(18-22歳)と社会人群(23-50歳以上)での差異はあまりなく同じような傾向がみられた。
【スリーサイズを聞くこと】
 「スリーサイズを聞く」では,どの年代でも80%以上が不快であると感じていた。これは何が目的でスリーサイズを聞くのかが不明なためではないだろうか。「宴会の席でのお酌の強要について」は,不快に思う割合が高かった(図4)。「女のくせに」という質問に対しては年齢に関係なく,8割以上が不快に思っており,学生と社会人の比較をしてみると,年齢が増すほど不快に感じる割合が多くなっている。社会人に関しては9割以上が不快に感じている。これは一般的に「女のくせに」というフレーズの後に続く言葉が否定的なものであることが多いためだろうと考えられる。

トラブル回避の基本とは?

 セクハラと受けとられる発言は年齢,性別によって千差万別であるが,男性への具体的な対処法には年代等で差が見られなかった。従って無用なトラブルを避けるためには,日常生活で同性異性を問わず,相手との関係を常に意識し,良好なコミュニケーションをとることが人間関係におけるトラブル回避の基本だと言えるのではないか。

『知って得する4か条』
 調査を行なった男女学生8名からの提案は以下の4点である。
1)女性としては褒められたいが,性の対象としては褒められたくない。(性的なニュアンスが感じられる言葉は,非常に嫌がられる)
2)褒め言葉は単なる感想ではない。(たとえ褒め言葉として自分が思ったとしても,“色っぽい”や“セクシー”などをストレートに表現することは懸命ではない。ソフトな言い方で伝えることをすすめる)
3)褒める時は内面を重視する。(無難に人を褒めるなら,内面に着目するとよい)
4)言う前に一呼吸おく。(言葉のセクハラを防止するには,言う前に今一度,検討するとよい)
 今回の解析は,職場での円滑な人間関係をとるための教育資料としても活用することが可能であると考えられる。そのため,今回の結果を各保健・医療・福祉施設の入職者へのオリエンテーションなどにフィードバックし,潤滑な職場環境の育成に役立ていただければ幸いである。
 なお,本報告は中部学院大学の田久ゼミ3年生全員でまとめたもので,内容の一部は第41回日本病院管理学会で発表した。

【参考】入山貴弘・渡辺朋恵:大学生のセクシャルハラスメントに関する意識調査(人間福祉学会国際シンポジウム2002)

【今回の調査に使用したアンケートについて】
今回の調査に使用したアンケートの質問項目は,

1: スリーサイズ, 体型などを聞かれるのはどうか
2: 恋人はいるのかと聞かれるのはどうか
3: 年齢を訊かれるのはどうか
4: 飲み会で「つげ」とお酌を強要されるのはどうか
5: 女のクセに……という発言はどうか
6: 髪の毛, 肩, 腰など体を触られるのはどうか
7: 色っぽい, セクシーと言われるのはどうか
8: 美人, きれいと言われるのはどうか
9: かわいいと言われるのはどうか
10: 必要もないのに個人的な性体験を尋ねられる
11: 男性が他の女性の身体, 服装や性的な関係などを他の人がいるところで話題にする

といった,セクハラに関係する11項目となっている。そして,この11項目の質問に対して,1:別に感じない,2:あまり不快でない,3:やや不快,4:きわめて不快といった4段階尺度を用い,この4段階の回答の中から自分に当てはまる回答を選択してもらった。