第2569号 2004年1月26日


NURSING LIBRARY 看護関連 書籍・雑誌紹介


豊富なイラストとともに学習できる心電図入門編

これならわかる! かんたんポイント心電図
奥出 潤 著

《書 評》高田幸千子(国立奈良病院)

 心電図。それは,循環器疾患看護に携わる看護師に限らず,すべての看護師,また,今看護を学んでいる学生にとっても,避けて通れないものである。しかし,「心電図は難解で…」と思い,できれば避けて通りたいと思っている方も少なくないだろう。
 避けて通れないなら,思い切って慣れ親しもう! というのが,本書『これならわかる! かんたんポイント心電図』である。

アキちゃんと一緒に心電図を勉強しよう

 本書には,勤務1年目の看護師アキちゃんと主任看護師,心電図について丁寧に教えてくれるO先生(Dr. O)が登場する。アキちゃんが,Dr. Oと主任看護師の力を借りて,心電図の基本や成り立ち,実際の心電図を学んでいく,という形式でまとめられている。
 「心電図診断の4つのステップ」「心電図波形の3つのルール」などのテーマに沿ったDr. Oの解説と,主任看護師が理解のためのヒントを与えてくれるので,解剖のポイント,イオン,刺激伝導系,種々の心電図波形などについて,1つひとつアキちゃんと一緒に理解していくことができる。中でも,アキちゃんが抱く素朴な疑問「サイナスってなに?」「AfとAFってどう違うの?」などに対するDr. Oの解説は,読者の理解をさらに深めてくれるだろう。
 豊富なイラストも本書の特徴の1つである。複雑になりがちな解剖図なども,シンプルでわかりやすいイラストで説明されているため,わかりにくい心臓と波形の関係などもイメージしやすい。また,刺激伝導系をレガッタのボートに乗る「号令係」「漕ぎ手」に例えるなど,理解を助けるための工夫がされている。
 さらに,心電図に関連した略語一覧が掲載されているのも役に立つ。医療の現場では,略語が飛び交い,ただでさえ混乱しがちな新人看護師は,さらに理解が困難な状況となっている。略語がわかることで,医師や先輩看護師の会話を理解できるようになり,患者の病態生理はもちろん心電図にも興味を持つきっかけになると思う。

臨床に活かせる心電図の知識を

 心電図の波形を丸覚えしただけでは看護には活かせない。患者の病態生理をきちんと理解することが重要である。心電図の波形から,その変化が何を意味するのか,どこが傷害されているのか,血行動態にどのような影響を及ぼすのか,緊急度は,と考えていくことが大切である。このような理解をしていくためには,解剖,刺激伝導系とその仕組み,実際の心電図を関連づけて捉える必要がある。
 本書では,虚血性心疾患の心電図変化だけでなく,心肥大や脚ブロック,危険な不整脈はもちろん期外収縮や心房細動,ペースメーカーの波形も解説されている。それぞれの心電図波形の特徴とその状態の時の電気活動が図示してあるため,波形と身体の中で起こっていることを関連づけて捉えることができる。波形の変化が何を示しているのかが読み進めるうちに理解できるため,応用の効く知識を身につけることができるはずである。心電図を学ぶ人のための初級本として,ぜひ一読を勧めたい1冊である。
A5・頁180 定価(本体1,800円+税)医学書院


つらい思い抱く人の傍らに

「燃えつきない」がん看護
安達富美子,平山正実 著
グリーフケアセンター 編集協力

《書 評》宮子あずさ(東京厚生年金病院)

 内科で9年働いた後,神経科(精神神経科)病棟に移って8年目になります。この間管理職となり,夜間の管理当直をするようになりました。この管理当直では,他病棟で亡くなる患者さんの死にしばしば立ち会います。そこには悲しみを抑えてその闘病をたたえるご家族の姿や,初めての死に泣き崩れた新人をやさしく励ます先輩看護師の姿があります。
 こうした究極の場面で垣間見える「人の力」に感動しながらも,1人になると魂を抜かれるように疲れている…。この感覚は本当に久しぶりです。改めて,「年に数十人の患者さんが亡くなる病棟で働いていたのは,本当にすごいことだったんだなあ」と思いました。
 温かい場面に立ち会ってすら,人の死はエネルギーを吸い取るものです。ましてやそれが良い経過でなかった場合は,看護師の消耗は極限に達します。最近まで私は,内科病棟で受けた患者さんからの「仕打ち」をつらく思い出すことがありました。あいさつをしただけで怒鳴った白血病の患者さん,1日中下肢マッサージを続けてももんでもらえなかった時間のことだけを責め続けた患者さん。「患者さんが一番つらかったんだ」とその場は自分の気持ちを納めても,年に何回か,ふとつらくなるのです。
 最近までと書いたのは,多少気持ちに変化が出てきたからです。精神科看護にかかわる中で,これら「泣かされた患者さん」の多くが,境界例の患者さんと非常に近い特徴を持っていると気づき,自分だけが悪かったのではないと思えるようになったのです。

受け入れられない理由がわかることで減る自責感

 逆説的ですが,看護師が患者さんのことを受け入れられない時ほど,「受け入れられない自分」を責めています。受け入れられない理由がわかり,受け入れることの難しさが了解できると,自責感が減ります。これが患者さんとの関係には,非常に大事だと実感しました。
 この本には,私が精神科で働く中でようやくわかったこれらのことが,カウンセリングの専門家からアドバイスされています。事例の選択も非常に適切で,昔の古傷がうずいて困りました。でも大丈夫。後にはきっちりフォローをしてくれるのが,この本の力です。
 今後私は,新たに開設される緩和ケア病棟の所属になる予定です。スタッフの燃えつきは,一番気になる点のひとつ。この本は,きっといつも近くに置いておきたいと思っています。最後に,この本にかかわった皆様へ。力になる著作をありがとうございました。
A5・頁192 定価(本体1,800円+税)医学書院


精神科救急がわかる――臨床家のための1冊

精神科臨床における救急場面の看護
Nursing the Psychiatric Emergency

マーティンF. ウォード 著
阿保順子,田崎博一,岡田 実,佐久間えりか 訳

《書 評》柴田恭亮(日本赤十字広島看護大学教授)

 精神科救急(Psychiatric Emergency,以下PEと略)は,専門の病院や部署でベテラン看護師によって行なわれる高度な危機介入なので,自分たちとは無関係だと思っている精神科看護師が多い。事実,PEでは,緊急手術などの医学的処置は前提になっていない。したがって,一般的な救急のイメージとPEは一致しない。
 ところが,精神科看護の現場では,日常的にPEが発生している。しかも,看護師がPEへの対応を誤った結果として救急病院へ転送されることが多い。こうした意味でも,一般的な救急のイメージとPEは一致しにくいのである。
 第1章は,救急に関する理論を参考にしながら,PEの特徴を説明している。また,この章を熟読すれば,PEと危機介入の違いが明らかになるだろう。
 第2章では,PEには,適切な計画と看護チームや病院全体で支援する体制の必要性が強調されている。「救急場面の対応は看護師個人の経験に委ねる。失敗した場合は,表面的な処理で一件落着。後々,密かにささやかれる当事者である看護師の責任」-こうしたわが国の実態と比べると,PEに対する考え方の違いを感じさせる。
 第3章は,精神科看護実践上のストレス因子を,行動制限をされた患者集団,労働環境,看護師間の関係性から説明している。すなわち,救急場面に直面した看護師は,二重のストレス状態に晒されているという。わが国では,議論されることが少ないが重要なことである。
 第4章は,この書のメインディッシュである。著者は介入方法としてゲームプラン(AIRS)の活用を提案している。特別なことではない。お馴染みの看護過程と思えばよい。アセスメント(Assessment),介入(Intervention),解決(Resolution),支援(Support)の4段階で構成される。詳しくは読んでのお楽しみ。実践してみようと思うはず。
 各段階の説明をていねいに読めば,精神科看護の本質が,随所にちりばめられている。訳者が「まえがき」で精神科看護の「原論」といっている所以である。
 第5章以下では,PE場面への介入方法(AIRS)を具体的な事例を用いて解説している。読めば,自殺,言動などによる暴力,行動制限,離院など,わが国の精神医療の現場では事故と呼んでいる事柄が,PEの対象だということが明らかになる。
 PE場面は,例外的なことではなく精神医療の現場では,ごく日常的に看護師が遭遇しているのである。しかるに,それに対する具体的な対策をわれわれは持ち合わせていなかった。事故対策ではなく,精神科救急看護としての専門的な対策の必要性を,あらためて考えさせてくれる。
 第9章以下では,ケアをめぐる看護師間の対立,患者から受ける看護師の心の傷(PTSD),対応に失敗したスタッフに対する支援などが記されている。現場では,意図的に避けられてきたことなので,抵抗を感じる人もいるだろう。しかし,AIRSの原理にしたがえば,当然必要になってくるプロセスである。
 とにかく本書を最後まで精読すれば,疑問や戸惑いは解消する。難解で意味のわかりにくい翻訳書が氾濫する昨今,珍しくわかりやすい実践に役立つ本といえる。現場の看護師のみならず,救急看護に携わっている方々には,ぜひ,読んでいただきたい本である。
 本書の根底にあるのは,著者の援助観と看護に対する考え方である。特別なことではない。国や時代を超えて,われわれでも共感できることである。PEの形だけを取り入れても意味はないだろう。
A5・頁280 定価(本体2,800円+税)医学書院