医学界新聞

 

医学部教育の現状と今後の方向性

東京医科歯科大学園祭で医学部学生がシンポジウムを企画




 さる10月18日,東京医科歯科大学において,シンポジウム「いい医師にはどうなれる? いい医者はどう育つ?」が開催された。第52回御茶の水祭の学生企画として同学医学科4年の小池宙さんが企画したこのシンポジウムでは,麻生武志氏(東医歯大教授),辻本好子氏(COML),信友浩一氏(九大病院副院長)の3氏が,学生有志とともに医学部教育の現状と,今後の課題について意見を交し合った。

 臨床的な新カリの意義を確認
 まず麻生氏は同学のカリキュラム改善検討委員長としての立場から,改革が進む同学医学部の新カリキュラムを紹介した。新カリキュラムの大きな特徴は専門科目教育の早期開始と,少人数・自由選択科目の導入である。麻生氏は,導入後の評価は必要だが,将来の医師を育てるという意味で,自ら問題を提起し解決する能力を滋養するカリキュラムにしていきたいと展望を述べた。
 続いて辻本氏は市民の立場から医学教育への希望を述べた。患者が求めるのは「事故に遭いたくない」「安全であること」「安心と納得」の3点であるとしたうえで,米国の市民ボランティアによるシミュレイテッド・ペイシェント(SP)を用いた研修の様子を紹介。「プロ=流暢ということではない。いい意味でのアマチュアリズムをもち続けることが本当のプロであり,そのためにもアメリカのSP研修のような,市民とのインタラクティブな交流を教育の場にこれからも取り入れてほしい」と述べた。
 最後に信友氏は,現場の立場から医学教育の課題をあげた。病名を診断し,治療を処方する「診療」に対して,臨床医,特に主治医には,相手の意図や状態を察することに基づく「診察」能力が求められる。信友氏は,この「診察」能力をいかに滋養していくかが今後の課題であり,昨今話題となっている医療事故などに関しても,そうした能力に基づいた患者との信頼関係によって,「紛争ゼロ」をめざすことは可能であると述べた。