医学界新聞

 

〔座談会〕
理学療法の明日をひらく

教育の質向上をめざして

中屋 久長氏(高知リハビリテーション学院長/日本理学療法士協会長)
土肥 信之氏(広島県立保健福祉大学長/全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会長)
丸山 仁司氏(国際医療福祉大学理学療法学科長/日本理学療士協会副会長=司会)


 ゴールドプラン発表時(1989年)に1万人程度だった理学療法士有資格者は現在3万人を超え,当面右肩上がりの増加が予想される。2004年度には,養成校の入学定員が医学生と同じ8000人規模に達する見込みだ。これをPTに対する社会的ニーズの高まりとみる一方で,養成校の急増に伴う教育の質の低下が懸念されている。
 本座談会では,教育内容や教員の質,臨床実習など卒前教育にかかわる事項を中心に,発展期にあるいまだからこそ見直すべき課題と,将来の展望を探る。


丸山(司会) 理学療法教育の質を高めるという趣旨を考えながら,まずその教育内容について話をしてみたいと思います。現在何が課題と思われますか。
中屋 まず,指定規則のカリキュラムにおける自由裁量の部分を,各校がどのように活用しているかというところが大きなポイントになると思います。講義内容と時間配分,または学年配当といったものが,それぞれの学校によってバラツキがある。全体で統一すべきだという意味ではなくて,本当にそのかたちで適切なのかを細かく検討する時期に来ているということです。特に,新しい時代のPTの領域は,医療機関だけでなく介護・福祉分野へどんどん広がっています。それにあった教育内容かどうかということが,検討すべき事項ではないかと考えています。
丸山 指定規則の改正後は大綱化が進められ,養成機関の自由裁量が大きくなったという大事な点があると思います。また,PTの働く職域も変わってきて,在宅などでも問題がたくさん出ています。土肥先生,いかがですか。
土肥 カリキュラムの話がでましたが,そのカリキュラムで教える教員側の問題もあると思います。教育技能・技術についてのトレーニングをきちんと受けていなくても医療関係の教員にはなれるわけですが,教育の質をあげていくには,臨床経験と教育技術の両方が教員に求められます。いま,よくファカルティ・ディベロップメント(Faculty Development:教える立場にいる人が教え方について学ぶこと。以下,FD)といわれますが,こういうことをかなり意識してやっていかなければいけないだろうと思います。

教員自身も学ぶ機会を

丸山 PT・OTの場合は,4週間の教員講習会(原則5年以上の業務経験者対象,厚労省と医療研修推進財団の共催)があっていまも継続されていますが,それさえ受講すれば教員になれるのが現状です。教員の評価や,FDなどで教育手法を勉強するというようなことは,これまであまり行なわれてこなかったと思います。
中屋 それに,長期講習会は「受けることが望ましい」という程度のもので,義務にはなっていません。私の学校からも新任教員を何名か長期講習に出しましたが,最近は,学校数が増えたことによって新しい教員が講習を受けるチャンスが減っています。そういった環境にあるので,全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会,あるいは全国私立リハビリテーション学校連絡協議会などで,教員の質をあげるために自己研鑽の研修会をする必要があると思います。
丸山 いま文部科学省では,大学設置の時には必ずFDを義務づけています。土肥先生,学内のFDと,全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会でのFDについてお話いただけますか。
土肥 協会レベルで全国的にやるのは,それ自体はインセンティブになるので必要ですが,いちばん大事なことは,各学校なり地域の学校のグループで,教育の質をあげるにはどうしたらいいかということを教員同士が常に話し合う機会を持つことだと思います。
 医療関係者は昔から,教育というのは仕事の合い間にするものだという感覚があって,教育は二の次なんですね。そうではなくて,1日8時間の労働時間なら,そのうちの1時間は教育にあてる。後輩を指導するのは当たり前だとする文化を醸成していかなければ,成熟した社会になっていかないと思います。昔風の,「見て覚えなさい」というやり方では,いまの若い人はついてきませんね。
丸山 本学では,FD委員会というものをつくって,各学科の代表者が出て年に1度,教育方法の工夫について発表会をしています。それを互いに見ることで,「ああいう方法もあるのだ」と,非常に役立っています。今年は,臨床実習の仕方についての工夫を各学科で発表します。8学科あるので丸1日かかってしまうのですが,FDを各大学の中でやっていくことは大切だと思っています。専門学校ではいかがですか。
中屋 専門学校というのはいろんな意味で緩やかで,教員もそれに甘んじるところがあります。一方で,私学がPT全体の入学定員の9割,学校数で8割近くを占めますから,教育における私学の責任は重いわけです。そこで,PT・OT・STを有する私立大・短大および専門学校が加盟する全国私立リハビリテーション学校連絡協議会がつくられました。
 もともとは教員研修からはじめて,非常に内容も濃くなって,教育研究大会を同時に開いて研究発表もさせるようになりました。今年も,鹿児島で3泊4日の研修をしましたが,参加者は200名ぐらいです。それでも,全国に1000人近くいる教員からみれば2割程度の参加ですから,さきほど土肥先生がおっしゃったように,各学校やブロック単位での研修は重要だと思います。
丸山 全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会の場合は,土肥先生が会長になられてから全国総会で研修会をはじめられましたね。
土肥 そうです,それまでは総会の時は会議だけでした。今年からは各ブロックでも補助金を出しています。いつも教員を刺激する機会が必要なんですね。若い教員に,意識を植えつけていかないと,なかなかあとに続かないと思います。
中屋 学校単位の問題ですが,卒業生の集まり,研究会といったものを学校が主催して,教員がリーダーシップを取ることが大事になってくると思うのです。ある私学の専門学校では,近隣の卒業生を集めて研修をして,それが発展してきています。先生方にとっても勉強になっているようです。
丸山 全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会,全国私立リハビリテーション学校連絡協議会にはじまって,学校間でのFDもあって,日本理学療法士協会も1つ立ち上げたほうがいいんじゃないかという感じがしますね。

教員の自己評価のための学生評価

丸山 教員の質を高めるといった時に,いつも文部科学省から出てくる話は「学生評価」で,これはいま非常に話題になっています。本学でも,全教員が学生によるマークシート評価を受けています。土肥先生の大学ではいかがですか。
土肥 3年ほど前から学生評価をしています。中には抵抗のある教員もいますが,これによって自分の気がつかないことがわかります。ただ,学生評価の高い教育が本当にいい教育だとは限らないと思います。評価というのは難しいですね。例えば,学生時代はおもしろい講義じゃないと思っていても,社会に出てからいいことを教わっていたとわかることもあります。学生による評価自体を,教員の評価の俎上に乗せてしまうと間違うことがあると思います。ですから私は,「評価をしたかどうかを評価する」という言い方をしています。
丸山 卒業して何年かしてから,「この先生の授業はどうだったか」という評価をするのも,非常におもしろいのではないでしょうか。
土肥 そうですね。卒業生から意見を聞くことも大事だと思います。
中屋 いま,私どもの学院では教員の自己評価というのをしています。授業はうまくいったか,自分の思っていたことをうまく話せたか,学生がどういう反応をしたかということを書かせています。もっとも,先生方はなかなか書いてくれませんが。
土肥 学生による評価も,教員の自己評価の材料にすべきものですよね。
中屋 そうですね。それをそのまま教員の評価に使ってもらってはまずいですね。
土肥 私どもの大学では,評価結果は本人にだけフィードバックしています。マークシートの処理も誰にも見られないようにしてあります。
丸山 本学では,全教員で毎年,前期と後期に学生評価を実施していますが,指摘される問題点は毎回同じ結果が多いようです。教育の質を高めていくには,学生からの評価もありますし,教員が自分で評価を出すというのも非常におもしろい試みだと思います。
中屋 それから,他の教員からの評価というものもあります。授業参観のようにして他の先生が教室の後ろで聴くということを,以前に思い切ってやったことがあるのですが,これはかなりプレッシャーになるようでした。

■臨床実習の見直しは最重要課題

丸山 臨床実習はPT教育の中で非常に重要な部分で,問題点をあげるとたくさんあるかと思いますが,いかがでしょうか。
中屋 いまの学校数と実習生の数の増え方からいうと,まず実習施設が足りないという問題があります。それから,指導者が足りません。ですから,いままでのような(実習生の数だけ指導者が必要となる)マンツーマン方式の指導は限界にきているということですね。
土肥 実習については,たしかに問題があります。実習指導者というのは本来,教育のもっとも重要な部分を担っているわけですが,実質的には経験年数だけでその指導ができて,その質はバラバラですね。これは協会などではなく学校単位でいいですが,臨床実習でどこまで教えるか,実習指導者にどんな役割を期待するのか,学校側の指導目標を明確に示すことが大事だと思います。
中屋 全体で統一化しようという意味ではないですが,日本理学療法士協会でも,教育のガイドライン,あるいは臨床実習モデルといったものを作成する必要があろうかと思っています。
丸山 日本理学療法士協会では,「臨床実習の手引き」というものがありますが,あれをもう少し具体的にするといいのかなと思います。
中屋 いま,全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会と全国私立リハビリテーション学校連絡協議会とのあいだで,臨床実習検討委員会を立ち上げつつあります。学校側のグループがそういった方向づけをしていくことによって,実習指導者も受け入れ施設も変わっていくはずです。それと,全体のカリキュラムの中での臨床実習の割合も現状のままでいいのか,そろそろ指定規則の中で検討すべきと思っています。
土肥 ただ,実習の目標は学校の置かれた環境によってもずいぶんと違うと思います。ガイドラインといっても,「これとこれだけはできるようになってほしい」という最低限のラインを示すのがいいかもしれませんね。

実習場所の拡大やOSCE導入で施設不足を補う

丸山 今年のPTの入学定員は全国で7000名ぐらい,来年は8000名になるかもしれないといわれています。もうすぐ7000名あまりの学生が実習に出ることになり,深刻な実習施設不足になります。そこで,今後実習をどういうふうにしていったらよいでしょうか。
中屋 まず,臨床実習場所の拡大ですね。量ではなく,種類の拡大です。例えば,今後PTが活躍する必要性が出てくる訪問リハビリテーションなどの実習を増やしていくことによってカバーしていくことができると思います。また,マンツーマン方式となっている指導者対学生の割合を1対3-4に見直して,クリニカル・クラークシップ(学生が医療チームに参加し,患者に接する中で学ぶ手法)中心の体験学習にするのも対応策の1つです。それから,OSCEなど学内演習の時間を設けることで,臨床実習に置き換える方法があると思います。
土肥 いまは患者の権利意識が高くなっていて,資格のない学生が担当するのが難しくなってきているという問題もありますね。医師の場合,実技のほとんどは免許を取ってからです。PTもそういうふうになってくるんじゃないかという気がします。
丸山 臨床実習についてはやり方を少し変えていって,医療機関だけでなくいろいろな場に拡大していくことが大事ですね。
中屋 将来的には1万人ぐらいの実習生が全国に出るわけですから,いまのままでは吸収できません。しかも,一般病棟はどんどん縮小しているし,在院日数は少なくなるわけですから。
土肥 地域・在宅での実習を増やしていかないと……。
丸山 それは就職に関してもいえます。地域・在宅実習を体験して少しでも現場を知っていないかぎり,学生は就職しようとしないですね。

福祉で活躍するカギは慢性疾患教育にあり

中屋 老健施設も実習ができるようになったのはごく最近です。これからは訪問看護ステーションや在宅介護支援センターでも実習が必要だと思います。それと,最近は福祉用具,機器,住宅改修がPTの業務の中に入り込んできています。われわれはPTの専門性を活かしつつそちらに職域を伸ばしていかないと,社会の需要と供給とのギャップによって,オーバーフローが出てくるんじゃないかと心配しています。
土肥 ただ,あまり広げてしまうと,なんでも屋になってしまいますね。介護保険のケア・カンファレンスでPTに何が求められているかというと,「この人は歩けるようになるか」という運動学的な分析と,予後予測,そして何をしたらいいかという評価です。あまり職域を広げすぎて理念的になってしまってあれもこれもと言い出すと,ちょっと危ないような感じがあります。
中屋 広げすぎるのではなく,解剖生理学,運動学的に身体状況を把握できるPTが,福祉用具や住宅改修供給システムにかかわりを持つということですね。
土肥 そういうことにどんどん入っていけるタネは,学生のうちにまいておく必要があります。程度の問題ですね。
中屋 やはり,私たちの専門性をしっかり植え込む臨床実習が必要ですが,「広げていかないと」というのが,将来の需給バランスを考えると現実的にはあって……。
土肥 現実にはそうですね。その際,教育の中で「慢性疾患をハンドリングできる技術」というものを教えていかないといけません。急性期というのはいかにも治しているようですが,多くの場合本当は自然と治っている(笑)。だけど,慢性疾患にPTやOTが手をかけることによって改善していく,これは本当に“腕”です。だから,そういう教育をしてほしいという気持ちがあります。そうすれば,おっしゃるようなところへどんどん出て行けるし,福祉の現場はPTにとって宝の山だと思うのです。
丸山 PTの本質として,「運動学的・運動生理学的な見方を通して慢性疾患治療の枠組みが理解できる」ように教えていかないといけないということですね。そうしないと,卒業生が活躍する場がなくなってしまうわけです。どこにでも出て行けるようなスキルを育ててあげなければいけないと思います。

■「明日をひらく」ためのヒント

丸山 「教育の質向上をめざして」ということで,教育内容や教員の質の向上,臨床実習などについて話してきました。PTになるには国家試験に受からなければならないわけですが,土肥先生は国家試験委員長をずっと務めていらっしゃいました。来春から変更点がありますね。
土肥 来年(2004年)からの改善点は,設問形式がちょっと変わるだけですね。
丸山 将来的な方向性の話は,何か出ていますか。
土肥 1つは,問題のプール制への移行です。問題が,もうこれ以上作れないんです。
中屋 出つくしてるんですね。
土肥 ええ。もちろん一部を変えればまだできるのですが,ポイントになるところについては出つくしています。だから,今回は少し出題形式を変えたいということと,将来的には問題をプール制にしたいということのようです。
中屋 今年(2003年)の国家試験は,過去最高の98.5%の合格率でした。私は,学生に合格率がよいことで安心しないように,これから試験が変わっていくことを警告しているんですが,いまは練習でかなりの程度カバーできます。
土肥 国家試験はミニマムだから,過去問をやれば優秀な子だったらだいたい受かります。だから,合格率が上がるのはやむを得ないですね。どんどん重箱の隅をつつくような問題を出していっても,教育が歪んでしまいますから。
丸山 受験者数が多くなってくるから,難しくなるという噂も巷では出ているようですが……。
土肥 いや,それはないです。最初に審議会で合否基準を決めてから試験をやっていますから。試験をやってから「このへんで切ろう」というようなことは決してないようですね。
土肥 いまは出題問題のうち専門科目が半分,専門基礎科目が半分です。もっと専門科目を多くしろという声がありますが,僕はあの比率でいいと思っています。

養成校の国試予備校化の憂い

丸山 国家試験が,PTに求められる最低基準の1つのガイドラインになっていることから,あまり変な問題を出すと教育がおかしくなることは考えられます。また,いくら「教育は国家試験のために行なっているんじゃない」という声があっても,受からないと困るという学校側の事情もあります。
土肥 受かればいい,というのでも困りますけどね(笑)。
中屋 国家試験のための予備校までできたり,模擬テストや問題分析の業者がいるのは,どうかなあという気がしますね。国家試験対策をするのが教育だと思ったら大間違いです。僕がちょっと気になっているのは教育システムの問題で,4年制大学,短期大学,専門学校には3年制と4年制があって,これも専門学校に入るでしょうけれども盲学校と,5通りぐらいの課程がある。そして,これらの中には夜間の学科もあります。選択肢を広げるという意味ではいいかもしれませんが,どこかで一本,教育水準を保てるようなシステムづくりをしないといけないという感じがしています。
土肥 教育と資格取得というのはまったく別のものですが,いまはあまりにも強くくっついていますね。
中屋 本当に,資格を取るための学校がいっぱいできています。教育理念,設立の理念といったものに非常にバラツキがある。

生涯学習を通した自己研鑽を

丸山 そこで大切なのは,卒業してからの生涯学習です。いま,日本理学療法士協会では新人教育プログラムが行なわれていますね。その受講の状況や受講率などについて簡単に説明していただけますか。
中屋 順調に進んではいるのですが,(勤務先に他のPTがいない)ひとり職場がすごく多くて,研修に出られない場合があるので,講義をビデオにするなど,いろいろ工夫はしています。奈良勲前会長が生涯教育の重要性を主張して,いま7つの専門領域において専門PTを養成しています。大学への編入や大学院へ進むということも増えてきていますし,望ましい方向づけだと思っています。
丸山 いま,夜間や通信制の大学院が増えていて,大学院というのも生涯学習の1つとして位置づけられると思います。ほかに,各県での研修会が生涯学習につながっているわけですが,こういったもの全部がうまく体系化されるといいですね。あと10年もすると,日本全国でPTが10万人とも推測されていますので,生涯教育のシステムも大きく変えていく必要があると思います。
土肥 継続することが必要ですね。
中屋 一生継続して自己研鑽することが大事ですからね。あるドクターから私の若い頃に,「PTは3年放っておいたら馬鹿になる」って,ずいぶん大きな声で叱られたことがあります(笑)。でも,本当にそうですよね。臨床で毎日同じことばかりしていたら駄目になります。そういう点では,日本理学療法士協会も生涯教育システムを取り入れて,しかも専門領域の研修まではじめたというのはいいことじゃないでしょうか。

外部の視点でみたPTのアイデンティティ

土肥 座談会のタイトルが「理学療法の明日をひらく」ということですが,私はPTではないので,最後にPTに対するお願い,希望を述べたいと思います。PTは非常に高い教育レベルの伝統があるので,ぜひそれを守ってほしいということです。特に,解剖学や運動学などの基礎医学を大事にしていて,その部分を捨てようとしていないですね。その意味で,さまざまな医療関係職の中でもPTはまだまだ発展性のある職種だと思いますし,だからこそなおさら,そこを大事にしてほしい。
中屋 いま学校に受験してくる高校生と面接しますと,その部分が抜けていて,PT志望の動機を訊くと,「お年寄りのお世話をしたい」と言うんです。もちろん高校生ですからそれでもいいのですが,それがそのままで卒業してしまうと困るんですね。学校にいるあいだに専門性をきちんと教育しないと。
土肥 おそらく,当事者であるPTはその強みにそれほど気がついていないかもしれない。でも外から見ていると,そこに大きなアイデンティティがある。実際に社会から求められているし,他の職種にはまねのできないところです。
丸山 大変いいご示唆をいただきました。ありがとうございました。



中屋久長氏
1971年,私学最初のPT養成施設である高知リハビリテーション学院卒。水島中央病院勤務などを経て現職。75年に学院の修業年限を全国初の4年制に,また87年からは通信教育大学との併修制度を取り入れ,学士号を取得したセラピストを全国に輩出している。2003年5月,日本理学療法士協会長に就任。全国私立リハビリテーション協議会の運営幹事長も務める。「PTの質の確保の問題や今後活躍する領域について考えると,やはり教育がいちばん大切なテーマ」。



土肥信之氏
1966年慶大医学部卒。川崎医大講師,同助教授,藤田保健衛生大教授などを経て現職。専門は整形外科。理学療法士作業療法士国家試験委員長を歴任したほか,98年から現在まで全国理学療法士・作業療法士学校連絡協議会長も務めている。研修医として留学した米国ニューヨーク大では,教えることに対する熱意とチーム医療文化の成熟に感銘を受けた。「PTはスタート時点がよくて,いい教育レベルの伝統がある。これからの医療の中で非常に期待を持っている」。



丸山仁司氏
1973年行岡リハビリテーション専門学校卒(PT資格取得)。83年東京理科大学院工学研究科修了。東京都老人医療センター,板橋ナーシングホーム,東京都老人総合研究所などを経て現職。本座談会でもその重要性が強調された運動生理学・運動学を専門に,老人医療,福祉,研究教育の分野などで活躍。2003年5月より日本理学療法士協会副会長。「地域・在宅などへの就職を考慮して,医療機関以外への実習場所の拡大も大事になってくる」。