医学界新聞

 

模擬患者団体の代表が揃い踏み

第1回全国模擬患者学研究大会開催される




 さる10月12日,東京の聖路加看護大学において,第1回全国模擬患者学研究大会(主催:ライフ・プランニング・センター)が開催された。
 日本に模擬患者を紹介し,その普及に努めてきた日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)は,基調講演の中で,模擬患者を活用した医学教育の歴史を概説。日野原氏によれば,その源泉は,1964年に米国のバロウ氏(現在南イリノイ大学副学長)が,医学生の臨床教育の中で,神経所見のデモンストレーションに模擬患者を用いたことにさかのぼるという。その後,欧米各地で模擬患者の活用は進み,現在は完全に普遍化した。
 一方,日本における模擬患者活動は,主に医学教育における医療面接教育への参加を通じて発展してきた。OSCEの卒前教育への導入もあいまって,全国各地で模擬患者は養成されており,藤崎和彦氏(岐阜大)の推計では,約5-600人の模擬患者がすでに養成されている模様だ。本大会では,日本の模擬患者活動の基礎をつくってきた,模擬患者団体の代表らが登壇し,それぞれの立場から模擬患者活動の意義を訴えた。
 模擬患者の養成でもっとも古い歴史を持つCOMLの辻本好子氏は「92年に米国へ行き,模擬患者が一市民として医学教育に参加して,凛としたフィードバックをしている姿に感動した」というエピソードを紹介。さらにCOMLの実践から,模擬患者活動が,医療者と市民が対等の立場でともに「患者中心の医療」をめざす方法であることを示唆した。
 本紙連載の単行本『あなたの患者になりたい』(医学書院刊)の著者として知られる東京SP研究会の佐伯晴子氏は,一般市民が模擬患者になることで「医療サービスの受け手からの期待と評価」を伝えることができる,と模擬患者活動の意義を述べ,「信頼にもとづく,医療者も患者も中心になる医療」を追求したいと,今後の活動に期待を込めた。
 また,医療コミュニケーション薫陶塾の黒岩かをる氏は「医療教育においては患者中心の考え方にからませて教育が行なわれることが重要。医療者を育成する責任の一端は市民が担うべき」との考えを述べた。