医学界新聞

 

第11回「脳の世紀」シンポジウム開催される


 第11回「脳の世紀」シンポジウムが,さる9月17日に,東京都千代田区の有楽町朝日ホールにおいて開催された。同シンポジウムでは伊藤正男実行委員会代表(理化研)のもと,「脳を知る・守る・創る」のテーマに昨年度より「脳を育む」という新テーマが加わり,4つの視点から脳研究の最新の成果が報告されている。
 今回は「臨界期の仕組み」(ヘンシュ貴雄氏・理化研),「分子を感じる・脳のにおい地図」(森憲作氏・東大),「アルツハイマー病治療法の進歩」(井原康夫氏・東大),「学習と記憶の計算モデル」(塚田稔氏・玉川学園大)について講演が行なわれ,講演後の質疑応答では会場に集まった多くの一般参加者から数多くの質問が寄せられた。
 また,特別講演として作家の加賀乙彦氏(写真)が「文学と脳」と題し,「天才」と称される歴史上の人物の多くがなんらかの精神病や性格異常を有していたこと,夏目漱石の躁うつ病と作品との関係などを紹介しながら文学的創造と脳について講演した。
 そして最後に氏は,「精神の異常というのは時として文学の独創性を際立たせる」と述べ,「今の科学では人間の心理を数量で表せるところしかまだわかっていないが,その数にならない心の動きが人間の脳のすばらしさでもある」と結んだ。