医学界新聞

 

基礎教育と継続教育のコラボレーション

第34回日本看護学会(看護教育)より




 さる8月7-8日の両日,第34回日本看護学会(看護教育)が,古木優子学会長(石川県看護協会)のもと,金沢市の石川厚生年金会館において開催された。各地で開催される日本看護学会の専門領域別学会の1つである本学会は,今回「新時代の看護実践力充実をめざして」をテーマとし,全国から2000人を超える看護教育関係者が参加する盛況なものとなった。

教育と臨床の新しい関係

 8日に開かれたシンポジウム「看護実践力充実におけるコラボレーション」(座長=金沢大 泉キヨ子氏)では,基礎教育と継続教育の場で先駆的な取り組みをしている4人のシンポジストが,臨地実習体制づくりに向けての活発な議論を行なった。
 最初に登壇した雑賀美智子氏(東京都立青梅看護専門学校)は,新卒看護師における職場適応の実態調査を発表した。その結果,新卒看護師は就職後10か月には自分の知識・技術に自信を持っている反面,不足感も感じており,そうした状態で看護を行なっている現状が明らかになったという。
 氏はこうした実情に対し,基礎教育の立場から「看護技術や薬理学教育の見直し」,「心理的サポート体制の整備」の重要性を強調し,「これを実現するためには教育と臨地における情報共有と相互理解が必要である」と述べた。
 続いて小松美穂子氏(茨城県立医療大)は教育と臨床の連携が問われる背景として「医療の進歩による学習内容の増加」,「急速な臨床現場の変化」をあげた。そして,こうした状況の中で,患者に一定水準のケアを提供できる実践力を学生に身につけさせるには「教員と臨床家の協力による,教育内容の検討と到達目標の明確化が必要である」と述べ,臨床現場のニーズを教育の場に有効にフィードバックできる体制づくりの重要性を提言した。

学生を活かす継続教育を

 一方,臨床における継続教育の立場から佐藤八重子氏(虎の門病院)は虎の門病院における新人看護師の研修プログラムを紹介し,「看護技術は人間関係の中で実施されるもの。基礎教育でどんなに知識と技術を習得していたとしても,対象である人間に関心を持てなければ臨床で応用していくことは困難」と指摘。新人看護師が基礎教育で習得した能力をうまく臨床の場で活かせるようにすることが,継続教育を行なう側に求められることであると強調した。
 最後に登壇した中條和子氏(札幌ひばりが丘病院)は,看護実践能力を「ナースが自己の看護観にしたがって患者のケアを行なうための知識・技術・態度」と定義し,看護職が共有するべき看護観として,ナイチンゲールの「患者の生命力の消耗を最小にするよう生活過程を整える」,「三重の関心を注ぐ」を紹介した。
 さらに氏は,臨床現場のあり方について「新人看護師は臨床で実践能力を身につけていく段階。基礎教育を継承できるような卒後教育の内容を考え,優れた実践を示すことで新人看護師が見て学べるような環境を作れるよう努力しなければならない」と述べ,基礎教育に関心を持ち,その学びを継続できるようにコラボレーションを意識した取り組みをしていくことが新卒者を迎える側の責務であると強調した。
 最後に座長の泉氏は「看護は人間が対象の職業。対象である患者に目を向けられ,関心を持てる看護学生をいかに育てるか,ということについて教育に取り組んでいかなければならない」と締めくくった。