医学界新聞

 

知は力! 情報収集の場を患者に提供

東京女子医大に「からだ情報館」オープン


 患者が医師に隠れてベッドサイドで医学書を読む光景も,今は昔。患者にも医学知識を持ってもらおうという考えが主流となってきた。東京女子医大では,患者やその家族が病気や身体についての情報を得るための「からだ情報館」が開設された。




 「からだ情報館」は,新設の総合外来センターの目玉として,6月2日オープンした。床面積は152 m2(50畳分)で,書棚と書棚の間の通路は車椅子が通れるように設計されている。利用できる資料は,医学関連書籍(約600冊),パンフレット(約200種類),ビデオ(約100本)など。また,退院後の生活も想定し,患者会の会報や都内の介護サービスガイドも用意されている。資料の閲覧は館内のみとなっているが,パンフレット類は持ち出し可能。ビデオはAVコーナーで閲覧となっている。パソコンも4台設置され,インターネットによる情報検索に使われる。

ここでしか得られない情報を提供

 コンセプトは「単なる患者さんの時間つぶしの場所ではない,当館でしか得られない情報を提供すること」。書籍選択の際には,家庭医学書ではなく,医学部生向けの教科書や辞典類,薬の解説書など比較的読みやすい専門書を優先。また,およそ500社の企業に,パンフレットやビデオなどの情報提供を依頼し,吟味収集したという。これは,「行政のサービスにしても,企業のパンフレットにしても,役に立つ情報が実はあるのに,1か所に集中していない」(設立準備委員の内潟氏)という現状の打開策でもある。中には,今回の準備を通して初めて知った便利なパンフレットもあったという。
 現在は,医学部図書館で経験を積んだ司書の桑原文子氏が常時対応している。今後は,元婦長にも非常勤ボランティアとして参加してもらい,医療職の視点で利用者への助言に当たる予定だ。書籍数は今度も段階的に増やしていく方針で,「将来的にはマスコミも調べものをするぐらいのレベルにしたい」という構想を持つ。インフォームド・コンセントが重要視され,慢性疾患においては患者のセルフケアが強調される昨今,「からだ情報館」の今後に注目だ。

「からだ情報館」の内部
館内の所々に観葉植物が置かれている。

 





インタビュー●内潟安子氏(東京女子医科大学糖尿病センター)

知識の共有が重要

 患者さんは外来で医師に説明を受けていったんは納得しても,家に帰るとわからなくなりがちです。家では確認するものもない。診察を受けた後で当館に寄って,説明された用語や検査のことをもう一度調べたり,家族の病気や在宅介護の資源についても情報収集してほしいと思います。
 インターネットが発達して,病気のことを知るのも簡単になりましたが,本当にその情報が確かなのか不安な場合もあるかもしれません。そんな時も,当館でビデオをいくつかみるなどして,知識を確認することができます。
 患者さんも知る意欲が増しています。特に慢性疾患は,まず知識が必要です。知らないがゆえに悲惨な目にあうのは,本人にとっても社会にとってもロスになります。そのためにもまず,患者さんが知識を高め,みんなと同じ知識を共有すること,それが合併症発症予防につながります。「こういう状態だから先生に相談したほうがいいのでは」と患者さんが気づくことで,医療者との接点ができればと願っています。
(談)