医学界新聞

 

SARS,テロ対策を含めた感染症対策強化へ

厚労省審議会が法改正に向けた提言まとめる


 さる8月21日,厚生労働省厚生科学審議会感染症分科会は,感染症対策の見直しについての提言をまとめた。本提言は,新興感染症やバイオテロ,動物由来の感染症への対策など,日本が今後取り組むべき感染症対策についてとりまとめたもの。

SARS,天然痘は1類感染症に分類

 現時点において国内に病原体の侵入のないSARS,天然痘については,患者発生時には原則として入院が必要なことや,海外において建物への立ち入り禁止措置がとられていることなどから,1類感染症としての分類が相当と判断された。関連して検疫体制の一層の強化も求めている。また,1類感染症指定医療機関の確保・充実への努力も求めていく内容も盛り込まれた。
 動物由来の感染症対策についても言及されており,動物に対する輸入届け出制度の創設や,自治体レベルでも病原体を媒介する動物の調査を行なう必要性も指摘されている。

自治体と国との連携密に

 感染症発生時における初動の要といえる積極的疫学調査の重要性と,その実施にあたっての自治体と国との連携効率化の必要性も強調された。SARSのような新興感染症や,バイオテロ発生時などの緊急の事態に際しても,自治体間の緊密な連携や,国が自治体に対して措置を講ずるよう指示できるためのルール作りが必要とも述べられている。
 関連して,疫学調査の専門家,治療に携わるスタッフ,保健所や地方衛生研究所の職員といった,感染症にかかわる専門家の育成も課題として取り上げられた。
 国会での審議時期については未定だが,本提言は今後の感染症法改正の方向を示すことになる。