医学界新聞

 

臨床研修必修化へ向けて
指導医たちのトレーニングが始まる

第1回VHJ臨床指導医養成セミナー開催


 さる3月15-16日の両日,東京の如水会館で「VHJ臨床指導医養成セミナー」が開催された。VHJとは,Voluntary Hospitals of Japanの略称で,日鋼記念病院,亀田総合病院など地域医療の中核を担う民間病院のネットワークであるが,臨床研修の必修化を目前に控えた今,各施設がいかに優れた指導医を確保し,研修医本位の研修内容を提供できるかが,医療界の大きな課題となっていることから,本セミナーが企画された。

悩める指導医たちのニードに応える

 コースディレクターを務めた岡田唯男氏(亀田メディカルセンター)によれば,「主に医学教育関連のメーリングリストで参加者を募っただけだが,全国から定員を超える応募があった」とのことで,この領域への研修・教育現場のニードの高さをうかがわせた。
 講師は,岡田氏の他,葛西龍樹氏(カレスアライアンス),杉本なおみ氏(慶大),鈴木富雄氏(名大),藤沼康樹氏(東京ほくと医療生協),マデリン・ポラック氏(亀田メディカルセンター)が担当し,講義とワークショップ形式による中身のプログラムが2日間にわたり行なわれ,ケーススタディでは,「僕もまったく同じケースで悩んでいます」と言う参加者からの声も聞かれた(プログラムの内容は下記の宮田靖志氏によるレポートを参照のこと)。

  

  


理論的で実践的な指導医セミナー

宮田靖志(JA北海道厚生連地域医療研修センター札幌厚生北野病院)


充実の講師陣

 このセミナーには53名の指導医が参加しており,北海道から沖縄,大学病院から診療所,外科系専門医からプライマリケア医,と実にさまざまなな指導医が顔を揃えていた。これはこのセミナーの講師陣からすれば納得のいくものである。私がこのセミナーに参加しようと決めたのも,しっかりとした理論的背景を持ちながら,現在実際の臨床の現場で研修医教育にあたられている方々が,講師陣として迎えられていたからである。

教育の新たな世界に目を向けさせてくれる

 セミナーは,各ワークショップ(WS)に全体講義を挟むという形式で進められ,全体として非常にまとまっており効果的であった。全体講義は,「学習者中心の臨床教育」,「成人教育を基本とした現在の医学教育のトピックス」,「研修医教育のための正しいFDの理解」など,どれも今までの古い考えを取り払って新たな世界に目を向けさせてくれるものであった。
 杉本先生のWSでは,研修医間である課題についてディスカッションさせ,そこで発生したコミュニケーションについて振り返りを促す方法を体験した。実際の臨床問題をディスカッションしながらコミュニケーション能力を高めていくことに,この方法をどうやって応用できるのかを私の課題とした。葛西先生のWSでは,患者中心の医療の教育,映画を用いたヒューマニティ教育の実際を体験した。
 鈴木先生のWSでは,病棟で研修医を教育することのノウハウを各自が再検討してシェアしあい,今までの問題点が再整理された。

白熱した議論

 藤沼先生のWSでは,研修医のサポートとして振り返り作業とメンタリングについて検討した。振り返りを形にして学習を定着させることの意義が理論的に説明され,またポートフォリオの実際も紹介され,すぐにでも実践に持ち込みたいと思った。さらに,メンタリングについては議論が白熱し,この問題が指導医にとってどれだけ重要かが再確認された。
 どれも満足のいくものであったが,コース設定の都合上私は岡田先生のフィードバックのWSに参加できなかったことが非常に残念であった。
 懇親会の席上で岡田先生に,「第1回と銘打ってあるからには,次も企画していただけるんですね?」たずねたところ,第2回も計画されるとのことであった。今回参加できなかった指導医の方々には朗報である。今回このような非常に実践的でまた理論的な指導医セミナーを企画された岡田先生に感謝したい。