医学界新聞

 

第7回日本在宅ケア学会が開催される

関係職種間の連携が課題に




 第7回日本在宅ケア学会が,さる1月25日,白澤政和氏(大阪市大)のもと,大阪市の大阪国際センターで開催された。メインテーマは「介護保険下での保健・医療・福祉の連携に向けて」。
 今回は,白澤氏による会長講演の他,ワークショップ「ヘルスプロモーションと地域ケア」「在宅ケアと障害者ケアマネジメント」やシンポジウム(後述)が企画され,関係職種が連携してどのような在宅ケアを構築すべきかを中心に議論が展開された。

どんなケアマネジメントが必要か

 「ケアマネジメント研究-実践の回顧と展望」と題した白澤氏の会長講演では,これまでの研究の流れと課題を整理し,今後のケアマネジメント発展のために必要な研究分野を提示した。現行の介護保険制度の課題として,ケアマネジメントのガイドラインを作成して,ケアマネジャー業務を明確化すること,さらにサービス事業者からの自立をあげた。同時に評価をどう行なうか,提供するケアにニーズの概念をどう含めていくべきかが課題とし,アセスメント・プロトコル研究を深める必要性を指摘した。
 一方,障害者領域では,今年4月から開始する支援費制度(障害者がサービスを選択し,利用者と提供する施設・事業者とが契約に基づきサービスを利用する制度。支給は市町村)や,市町村による地域福祉計画が進む中で,どこまでケアマネジャーが可能性を提示できるかは,今後のケアマネジメント発展の大きな分岐点になると述べた。さらに将来的には,在宅ケアの中に病院や施設をどう位置づけるかという問題を,学会として検討すべきではないか,と提言した。

多職種によるケアシステム構築

 シンポジウム「介護保険下での医療と福祉の連携-評価と課題」(司会=白澤氏)では,患者(利用者),医師,看護師,福祉の立場から在宅ケアにおける連携のあり方を語り合った。
 最初に,利用者の立場から北野忠男氏(大阪市介護家族の会連絡会)は,痴呆の母親の介護を10年以上続けている体験を解説する中で,「誰もが安心して老いられる社会づくり」を目標とする患者会を結成し,その活動が大きな支えになったことを強調。同時に,「専門職だけでなく,家族・患者本人を含めた連携のあり方をぜひ考えてほしい」と訴えた。
 さらに医師の立場から石川誠氏(初台リハビリテーション病院長)は,施設サービスの種類別の利用者数は約71万人いるが,2000年と2001年における介護患者の所在地の比較をしたところ,介護保健施設から在宅に移行する患者が非常に少ないことを明らかにし,連携がうまくいかない現状を指摘した。その上で,21世紀の介護保険サービスは,(1)リハビリテーションの前置主義の徹底,(2)施設の一元化・一本化,(3)ケアマネジメント体制の確立,(4)訪問・通所のなど複合的サービス拠点の普及,(5)訪問リハサービスの普遍化が必須だろうと結んだ。
 高崎絹子氏(東医歯大)は介護老人虐待を保健師と共同調査する中で,痴呆・寝たきり老人を抱える家族の精神的・心理的なサポートの必要性を痛感し電話相談を開始したエピソードを紹介。患者の医療依存度が高い場合,または介護者が精神障害など障害を持つ場合に困難と感じるが,「このような例が増えるほど,ますます保健師が頼りにされる存在になる。まさに保健・医療,さらに保健の連携の要は保健師と言えるのではないか」と述べた。
 続いて,福祉の立場から福富昌城氏(花園大)は,介護支援専門員は調整役としての機能が求められるが,そのためには,連携することとサービス提供の整理が必要であり,また連携にためには,「連携のための5箇条」(吉田光子)を引用し,「連携によりもたらされた結果を相手に報告することは,簡単なことだがだができてない場合が多く,成功の秘訣になる」と述べた。
 さらに,援助困難の例を紹介し,一見不可解な利用者・家族の行動も,相手の内面を理解することでその行動の背景が理解でき,その後のケアを大きく左右することから,利用者(介護者も含めて)の主観的な認知を含めたアセスメントが必要であることを強調した。
 シンポの後半は会場ともに,高齢者虐待の法整備化,看護と福祉のチームでケアマネジメント実施の重要性などが指摘された。また,「ケアマネジャーが,現状で連携の要になれないか」との質問には,診療報酬の整備(石川氏),利用者の心情を関係者に伝えていく能力が育っていない(福富氏),また教育の欠如などが指摘された。