医学界新聞

 

投 稿

学生同士,考え,語り,実行する

-IFMSA-JAPAN秋の大会開催

藤元 瞳(IFMSA-JAPAN Vice President for External Affairs,千葉大学医学部・5年)


 2002年10月12-14日の3日間,北里大学医学部にてIFMSA-Japan秋の総会が開かれました。その報告をさせていただきます。今回は6つの委員会による分科会で,それぞれのテーマについてWorkshopを行なう他,代替医療Workshop,元アスキーMarketing本部長による部活の広報と資金集めについてのTraining,臨床交換留学とSummer School,国際会議のレポートが行なわれました。医学教育の分科会には,前東海大学学長の黒川清先生もいらっしゃいました。それぞれを簡単に報告します(学生の名前は企画担当者名)。

 

エイズと生殖(SCORA)「AIDS:慢性病の時代に」

安西 耕(杏林大4年)
 薬害エイズによってHIVに感染した方をお招きし,お話を伺いました。とても楽しく,笑いがたえなかったです。体験談を多く入れて,私たちが普段気づくことのない感染者の悩みなどをお話いただきました。薬の副作用のことや薬を飲むために大量の水を飲む必要があることなど……,そして医療系の学生へのメッセージもいただきました。また,AIDS啓発活動している高校生の発表もありました。自然な感覚を身につけた高校生を見ていると,医学生の私たちはHIVへの考え方が変わるチャンスがないだけで,チャンスさえつかめればきっと彼らのような自然なHIVへの感覚を身につけられるのではないかと思いました。
 「最近また日本でAIDSブームがやってきている」という言葉が印象的でした。「ブーム」といっても日本でHIVの感染者数が増えたとかいうことではなく,マスコミやら雑誌の中で「AIDS」という言葉が増えてきたという意味です。
 「血液製剤の薬害エイズの裁判が落ち着いてしまってから,なんだか国内でのHIV問題が解決したような印象を受けてしまい,そして国内のHIV問題への関心は徐々になくなっていった」
 というお話がありました。
 「AIDS問題をマスコミにブームとして考えさせないように草の根運動的にやっていき,そしてマスコミを通して“ブーム”ではないHIV問題を広げる必要がある。そうでなければまた,ブームで終わってしまう」この言葉に大きくうなずけました。


公衆衛生(SCOPH)災害医療Workshop

林 伸宇(千葉大2年)
あなたがトリアージタッグを切る時 あなたは“助けない”勇気をもてますか?
 無線機を使用した災害シミュレーションゲームを通じて,情報伝達の難しさ,トリアージをする際の葛藤などを体験しました。ゲーム途中にも参加希望者が殺到する反響ぶりでした。
 また,震災・ボランティアを体験された方から直接お話がありました。よかれと思って話を聞いてあげることが実は被災者を傷つけてしまうこともある,というお話も印象的でした。 路上生活者の支援活動の紹介
 路上生活というものの実態と,医学生たちと路上の方々との間に交わされた会話などが紹介されました。事実をただ提示することで,偏見や誤解を取り除くとともに,医学生のボランティア参加が求められていることが伝わってきました。参加者が目を潤ませる場面も見られました。


難民と平和(SCORP)

北村勝誠(北大2年)

 難民と平和の委員会では,日本の難民と彼らが抱える問題についてもっとみんなに知ってもらおうという目的で,LectureとDiscussionの2本立てのWorkshopが開かれました。Lectureでは,アジア福祉教育財団難民事業本部から廣野富美子さんに,日本の難民の現状や彼らに対する支援体制,今後の課題などについて講演をしていただき,その後のDiscussionでは,「自分たちにできる日本の難民への支援プロジェクト」ということで,国内認定難民との交流パーティや難民を対象とした無料の健康診断などを提案する声が参加者の間から聞かれました。


医学教育(SCOME)

神谷文雄(東海大2年),富坂美織(順大4年)

 東海大学医学部より黒川先生をお招きして,医学教育をはじめとする幅広い範囲に渡る講演をしていただきました。医学教育を問題とする時,私たち医学生は常にカリキュラム表や実習日数といった表面的な比較にとらわれがちでしたが,実際に参加してみることの重要性に気づかされ,私たちのML上で留学体験を共有することの意義を再認識しました。また卒後の進路についても,大学勤務,開業,研究をはじめ,さまざまな可能性を山の高さや傾斜といった例えを用いてわかりやすく説明してくださり,できる限り多くの可能性を知った上で自分の道を選ぶことの大切さ,そして多種多様な進路すべてが評価されるべきであるということを確信できました。


臨床交換留学(SCOPE)

国光多望(山梨医大2年)

 IFMSAの臨床交換留学の委員会(SCOPE)には現在69か国が参加し,加盟国間で1対1の交換留学を行なっています。7万円という少額で,4週間の病院実習と宿泊施設,期間中1日2回の食事が提供されます。今年度は日本から81名の留学生が交換留学に参加し,海外から同数の留学生を受け入れることが予定されております。
 SCOPEでは秋の大会中,日本で交換留学に参加する各大学の担当者(Local Exchange Officer; LEO)を対象にLeo Training Program(LTP)を開催しました。2003年度から文書を電子化してやりとりするElectronic Exchange System(E-Ex)が導入されるため,各大学のLEOに新システムを浸透させ移行を滞りなく行なうことが主目的でありました。PCルームを借りて新システムのトレーニングを行なった他,留学生受け入れ中のトラブル等について話し合う場を設けました。


リサーチ交換留学(SCORE)

下川広治(山形大4年)

 SCOREとは,リサーチ交換留学に関する委員会で,日本では去年から活動を始めた新しい委員会です。10月中にリサーチ留学の申し込み募集を行なっていたことと,新規加盟校を広げるために,今回の大会ではSCOREの紹介と説明会を行ないました。リサーチ留学というと臨床実習留学に比べ知名度はまだ低いのですが,来年度の留学では14人の留学生を世界各国に送り出す予定です。
 研究室への留学という特殊性もあって興味を持っている人々が多く集まり,留学説明では多くの質問や意見が飛び交い内容の濃いものとなりました。
 また今回は民間より経営コンサルタントの方をゲストに迎え,好評を得ました。今回のWSをはじめとして今後さらに活動を広げていきたいと思っています。


代替医療講演

森川すいめい(日大3年)

 医学部生でもあり,鍼灸師でもある森川さんが講義を行ないました。概論では,代替医療の紹介があるとともに,世界的に東洋医学のニーズが高く,今後は日本が中心となって代替医療を進めていく環境にあるというお話でした。後半は,民族楽器や民族舞踊の披露に加え,中国最古の医学書が生まれた2千年前の世界を想像してもらうことを通して,古代人が医学理論を考え出した智慧と必然性を実感できました。また講義では,古代文献を引用しながら「氣」という用語が生まれた背景を例に取って,伝統医学と現代医学の一番の違いはただ用語にあるだけで,自然科学としての性質は同じだという考えが提示されました。
 同様の催し「IFMSA-Japan説明会」を12月22日に,大阪市立大学にて開催しますので,興味を持ってくださった方はぜひいらしてください。
 詳しい内容については,http://ifmsa-j.umin.ac.jp/をご覧下さい。

●IFMSAとは?
 国際医学生連盟(IFMSA; International Federation of Medical Students' Associations)は,医療系学生が国際的な視野と優れた人格を形成することを目的として1951年に設立されました。WMA(世界医師会)・WHOによって,公式に医学生を代表する国際フォーラムとして認められ,国連経済社会理事会に登録された,非営利・非政治の国連NGOです。2002年8月現在82か国が加盟し,約100万の医学生を代表しており,本部はフランスCedexの世界医師会内にあります。日本では日本国際医学生連盟(IFMSA-Japan)が支部となって活動しています。
 IFMSAには6つの常設委員会があり,さまざまなプロジェクト・ワークショップを世界各国で運営しています。
・エイズと生殖(SCORA)
・難民と平和(SCORP)
・公衆衛生(SCOPH)
・医学教育(SCOME)
・臨床交換留学(SCOPE)
・リサーチ交換留学(SCORE)
 詳しくはホームページをご覧ください!
IFMSA Webpage=http://www.ifmsa.org/
IFMSA-Japan Webpage=http://ifmsa-j.umin.ac.jp/