医学界新聞

 

UCLAのドクターリング・コース

東大で医学教育連続講義が開催される




 東京大学医学教育国際協力研究センターでは,ジェローム・ホフマン氏(UCLA教授,写真左)を客員教授として招聘。氏の来日(7-10月)に伴い,同センター主催による医学教育連続講義「米国の医学教育とUCLAのDoctoringコース」が,4回にわたって行なわれた(本講義は,大学病院医療情報ネットワークMINCSでも放映された)。

難しい問題をどう患者に告げるか

 本コースは,UCLAでも90年代のはじめから導入されたばかりで,アメリカでも新しい試みとして注目をされるもの。医学的知識だけではなく,人間味にあふれ,生涯学ぶ姿勢を持ち,困難な問題に自分自身の考えで対応できる医師の養成を目的として導入されたものである。小グループ制で社会的・心理的な問題を持つ症例に関する議論や,実際に悪い知らせを患者に伝える場面を想定して,模擬患者を相手に診療を再現して,どのように患者の理解を得るか,医療に積極的に参加できるようになるのかなどを話し合うことで,医師としてのあり方を模索する機会となる。本コースは医師としての高い倫理観やモチベーションを得る機会として高く評価され,医学生たちにも人気の高いコースの1つである。
 ホフマン氏は,医学知識偏重だったこれまでの医学教育の反省から,新しいアプローチを模索した結果として本プログラムが導入された経緯や,プログラムの内容などを解説。さらに参加者が患者役と医師役となって,「校内で倒れた女子学生を検査したところ,妊娠が明らかになった例」を用いて,コースのデモンストレーションが行なわれた。患者が未成年である点や,両親への告知を拒むなど,難しい問題に「自分ならどうアプローチするのか」を議論する機会も設けられた。
 ホフマン氏は,「医師は,医療だけでなく,社会的・心理的な問題にも十分考慮しなければならない場面に遭遇することが多い。このコースでは,医療を多様な側面から見つめ,いかに患者にとって最良の選択をするかを学ぶのである」と,本プログラムの大きな特徴を述べた。