医学界新聞

 

聖路加国際病院創立100周年記念セミナー開催




 聖路加国際病院(理事長=日野原重明氏,院長=櫻井健司氏)創立100周年記念セミナーが,さる10月17日に,東京・中央区の聖路加看護大学において,「新世紀の病院経営」をテーマに開催され,将来の病院経営をリードする意欲に満ちた参加者が多数集まった。

今後の病院経営には何が必要か

 最初に登壇したRobert S. Lawrence氏(ジョンズ・ホプキンス大)は,「アメリカにおける病院経営と患者サービスの認識」と題して講演を行ない,1990年代のアメリカにおいては,小さな病院や診療所が大きな組織と提携して交渉力をつけていった例や,一方で近年,病院の衰退がアメリカにおいて大変顕著であることなど,アメリカ医療の現状について紹介した。
 続いて「患者の選択・医療の使命」と題して講演した河北博文氏(河北総合病院)は,日本の医療報酬制度の中では,病院の経営において中・長期的な計画を立てる必要がなかったという点に触れ,その結果,非常に貧困な医療を作り出したと指摘。その上で「現在の延長線上で考えるのではなく,未来を前提として今から何を準備するか考えるほうが将来に対して的確に対応できる」と,今後の病院管理に対しての考え方を示した。
 また,長谷川敏彦氏(国立保健医療科学院)は,「21世紀における医療連携の展望とその課題」と題して講演。これからの医療は,家にいる患者を,ITを駆使してさまざまな機関が連携して支えるものになると述べた。そのため,連携をどのようにとっていくかが問題になるとし,「今まで通りではなく,勇気と創意で新しい社会を実験し,さまざまな挑戦のうち1つでも成功できれば社会への貢献になる」と述べ,まとめとした。

日米からのパネリストが議論

 上記の3名に加えて,Mitchell T. Rabkin氏(ハーバード大),福井次矢氏(京大)をパネリストとして行なわれたパネルディスカッション「新世紀の病院経営」(座長=笹川記念保健協力財団理事長 紀伊国献三氏,聖路加国際病院長 櫻井健司氏)の中で福井氏は,今後の病院のあり方についてのポイントとして,(1)エビデンス利用のためのシステム整備,(2)臨床研究支援ユニット,(3)ホスピタリストをつくる,(4)公衆衛生的考え方を持ったスタッフの配置の4点をあげた。また,Lawrence氏は,アメリカにおいては,州によって無保険者の医療費を補助するための公的な基金があると紹介し,「このような制度こそ全米に広げるべきである。無保険者に罰を与えるべきではない」と強調した。
 ディスカッションの最後に櫻井氏は,「超高齢社会,価値観の多様化,経済が要因となって,患者ニーズ,疾病構造も変化してくる。本セミナーは新世紀における聖路加国際病院の使命,役割を考える上でも非常に有益だった」と締めくくった。