医学界新聞

 

金原一郎記念医学医療振興財団

第32回認定証(第17回基礎医学医療研究助成)贈呈式が開かれる


 (財)金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=理化研脳科学総合研究センター所長 伊藤正男氏)は,このほど「第17回基礎医学医療研究助成」の交付対象者として,応募総数248名の中から30名(助成総額1500万円)を選出し,さる10月3日に,東京・文京区の医学書院本社において,第32回認定証贈呈式を開催した(助成対象者および研究内容を掲載)。同財団は基礎医学の振興を目的として,(1)基礎医学医療研究助成,(2)研究交流助成,(3)留学生受け入れ助成,(4)研究出版助成の4つの助成事業を行なっており,1986年の設立以来,総計1100件・総額5億806万円が贈呈されている。
 開会に際し,金原優同財団常任理事(医学書院社長)は,「医学書院創業者金原一郎の意思を継いで設立され,民間の財団として15年間活動を続けてきた。医書出版等の基金から成り立っている同財団の認定証贈呈式は,今回で32回目となる。大変ご苦労をされている基礎医学の若い研究者を中心に助成を行なっている」と述べ,「今回の助成を励みに,今後もさらに研究を進めていただき,基礎研究に限らず,さまざまな方面での活躍を期待する」と激励した。
 認定証の贈呈の後,同財団理事で選考委員長を務めた野々村禎昭氏(東大名誉教授)が,「今回は特に応募者のレベルが高かった。オリジナリティがあり,かつきちんとした内容のものを評価し,8倍という非常に高い倍率の中から助成対象者を選んだ」と選考の経緯を説明。「地方の受賞者から『机で受賞の知らせを読み,涙が出た』という手紙も届いている。今後も自信を持って研究に励んでいただき,研究の成果は当財団が発行する『生体の科学』誌への投稿をお願いしたい」と祝辞を述べた。
 これを受け,受賞者を代表して北川元生氏(千葉大)が,「お忙しい中選考にあたってくださった野々村選考委員長をはじめとする選考委員の方々,ならびに財団関係者の方々に心より感謝申し上げたい」と謝意を表すとともに,「私自身,米国での留学経験があるが,米国ではNIH(National Institutes of Health)以外にも,それに匹敵するような助成機関がいくつもあり,米国における研究の多様性の一助となっている。当財団のような機関が発展することは,日本の基礎医学研究の発展に貢献できるものと考える。今後の財団の発展を祈念している」と,今後に対する期待を述べた。


金原一郎記念医学医療振興財団

第17回基礎医学医療研究助成金交付対象者とその助成対象(研究内容)


(1)   生田宏一(京大ウイルス研/生体応答):クロマチン修飾と構造変換によるリンパ球抗原受容体遺伝子座の組み替え制御機構
(2)   石井優(阪大/情報薬理):RGS蛋白質による三量体G蛋白質シグナルの生理的調節機構とその分子基盤の解明
(3)   石黒啓一郎(ハーバード大/癌生物):ヒトG0期静止細胞におけるクロマチン構造の不活性化機構に関する研究
(4)   猪狩勝則(東女医大膠原病リウマチ痛風センター):伝達不平衡テストによる関節リウマチの原因遺伝子の解析
(5)   井原義人(長崎大原爆後障害研):分子シャペロン・カルレティキュリンによるPKB/Aktシグナル伝達制御機構の解明
(6)   大隅典子(東北大/形態形成解析):哺乳類脳形成における転写因子Pax6の機能解明
(7)   北川元生(千葉大/腫瘍病理):Notchシグナル伝達系におけるMastermindの役割
(8)   熊谷啓之(群馬大/薬理):血管平滑筋細胞の形質転換につながるシグナル伝達経路の解明
(9)   鈴木聡(秋田大/生化学2):前立腺の発生,分化,発がん制御と脂質メディエータPTEN
(10)   関丘(阪大生命機能研/細胞ネットワーク):真核細胞染色体DNA複製の開始過程とその制御機構の解析
(11)   高橋孝太(久留米大分子研/細胞工学)
:異数体生成モデル酵母株mis6の相互作用因子の系統的探索
(12)   田島陽一(都臨床研/生命情報):α-ジストログリガンの糖鎖形成異常を伴う遺伝性筋ジストロフィーの分子病態解明と糖転移酵素LARGEを用いた治療法の開発
(13)   秦野伸二(東海大総医研/分子神経):筋萎縮性側索硬化症の新規遺伝子(ALS2)および遺伝子産物の分子機能の解明
(14)   浜田淳一(北大遺伝子病制御研):インテグリンαvβ3を介した転移関連遺伝子の転写調節機構の解析
(15)   坂東俊和(東医歯大生体材研/機能分子):塩基配列を認識するテーラーメイド抗がん剤の開発
(16)   久原真(札幌医大/薬理):ヒストン脱アセチル化酵素Sirファミリーの哺乳類中枢神経における機能解析
(17)   平尾敦(慶大/発生・分化生物):幹細胞の未分化性維持機構と細胞周期制御
(18)   堀修(金沢大/神経分子):小胞体におけるストレス応答は,ミトコンドリアの機能維持及び生存に重要な役割を担っている
(19)   松浦徹(ベイラー大/分子人類遺伝):Spinocerebellar ataxia type10における病態機構の解析
(20)   松崎吾朗(琉球大遺伝子センター/分子感染制御):第2のT細胞集団・γδT細胞の機能の解明
(21)   松田覚(名大/分子病態):アダプター分子を中心とした発がん機構解析
(22)   松野浩之(岐阜大/生命細胞):線溶系阻害因子(Serpins)の血栓形成における役割の解析:新規血栓症治療薬としての可能性
(23)   松本満(徳島大分子酵素研/情報細胞):リンパ組織の形成に関わるリンホトキシン・シグナル伝達機構の解析
(24)   村木靖(山形大/細菌):C型インフルエンザウイルスの増殖におけるイオンチャネル蛋白CM2の役割の解析
(25)   柳茂(神戸大/機能ゲノム):神経回路網形成における反発因子セオフォリンの細胞内シグナル伝達機構の解析
(26)   柳沢純(筑波大/応用生物/食品生化):エストロゲンレセプター(ER)の分解制御機構の研究
(27)   山懸和也(阪大/分子制御内):核内受容体HNF-4αによる糖脂質代謝制御機構の解明
(28)   山野辺貴信(北大/統合生理):神経系における信号伝達の信頼性とノイズの関係
(29)   横井伯英(千葉大/遺伝子病態):ヒト1型糖尿病の遺伝子解析研究
(30)   横田義史(福井医大/生化学1):G0期細胞の長期生存を支える分子機構