医学界新聞

 

「実践・理論・研究の充実」を論議

第7回日本糖尿病教育・看護学会開催


 第7回日本糖尿病教育・看護学会が,さる10月5-6日の両日,佐藤栄子会長(愛知県立看護大)のもと,「糖尿病教育・看護の新たな展開へ向けて-実践・理論・研究の充実」をメインテーマに,名古屋市の名古屋国際会議場で開催された。
 今学会では,会長講演「糖尿病患者への真の貢献をめざして-患者理解と援助の立脚点を改めて問う」(佐藤氏)をはじめ,招聘講演「韓国における糖尿病看護・研究の現状」(韓国・梨花女子大看護学部 Kyungeh An氏)の他,教育講演が(1)「糖尿病の運動療法-新しい研究成果の活用」(名大総合保健体育科学センター 佐藤祐造氏),(2)「新しい時代における看護研究の方略-糖尿病:生活習慣病に対して,看護が貢献できることは何か」(東大 村嶋幸代氏),(3)「中本の美味しい食事虎の巻」(ホテル一畑総料理長 中本喜代数氏)の3題,また,シンポジウム「日本糖尿病療養指導士・認定看護師(糖尿病看護)の役割と専門性」(座長=松浜病院 佐々木ミツ子氏,稲沢市民病院 石田久恵氏,写真)が企画された。


新たに誕生した認定看護師が活躍

 今春,日本看護協会認定看護師の新たな分野として,糖尿病看護認定看護師が15名誕生した。その役割については,「個人・家族・集団に対し,熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践する。その看護実践を通して,他の看護師に対して指導を行なうとともに,コンサルテーションも行なう」とされている。今学会の交流集会では,糖尿病看護認定看護師による「認定看護師-エンパワーメントをもたらす看護援助」(企画・演者=日本看護協会看護研修学校糖尿病看護学科一期生一同)を企画し,その役割などを強調した。なお,交流集会は他にも,「糖尿病遺伝医療と看護」(企画=山口県立大 張替直美氏,日本赤十字看護大 中木高夫氏),「高齢糖尿病患者とQOL」(企画=岐阜県立看護大 坂田直美氏,同 小野幸子氏)など7つのセッションで行なわれたが,どの会場も参加者であふれるほどの盛況ぶりであった。
 さらに,その他のプログラムとして,「エンパワーメントをめざす糖尿病患者教育」(座長=天理よろづ相談所病院 石井均氏,演者=ミシガン糖尿病研究教育センター Martha M. Funnell氏)など5題の同時開催セミナーも企画された。なお,一般演題は患者心理,自己管理,フットケアなど32群119題が口演・示説で発表された。

糖尿病教育者の要件とは

 佐藤氏は会長講演で,今学会のメインテーマのコンセプトとして,(1)看護の原点である真の人間(患者)理解のあり方,患者中心のあり方を問い直す,(2)糖尿病における問題実践の専門性をさらに高め,患者教育や指導の進歩発展に寄与できる,(3)糖尿病医療における最も今日的な課題である遺伝医療やITに対する看護実践の方向性を探求する,(4)実践への活用に寄与できる糖尿病看護研究のさらなる充実をめざす,をあげ,「患者理解,患者教育への進歩に貢献できる学会としたい」と述べた。
 また氏は,「糖尿病教育者の要件」として,「(1)患者の間違ったことを指摘する人ではなく,(2)患者が失敗を打ち明けられる,(3)患者のセルフケア継続の支えになる,(4)患者の価値観に合わせた多用な教育・指導の仕方を考えられる,(5)患者の生活をあらゆるアプローチの主座に据える,ことのできる人」と指摘した。

糖尿病療養指導士と認定看護師

 患者の生活と人生の質を高める糖尿病治療のために,日本糖尿病療養指導士(CDE)はチームスタッフとしてどのようにかかわっていけばよいのかを探るシンポジウムには,CDEの資格を有する看護師(阿部医院 渡辺鈴子氏),同理学療法士(聖マリアンナ医大東横病院 石黒友康氏),同薬剤師(富山医薬大病院 格谷美奈子氏),および糖尿病看護認定看護師(慶大病院 中野裕子氏)の各立場から4人が登壇した。
 渡辺氏は,地域での活動を通してCDE看護師の役割を紹介。CDEを対象とした調査からは,「基礎知識が得られ,自信がついた。他施設との交流が容易になった」などの結果を報告した。また,石黒氏は理学療法士が糖尿病治療に参画できなかった理由について,「(1)保険請求上の問題,(2)他の医療スタッフの認識不足,(3)従来のリハビリテーション医学の範疇でないこと」を外的要因に,また「(4)他の医療スタッフに対するアナウンス不足,(5)従来の障害の概念とギャップ,(6)糖尿病治療における認識不足」を内的要因にあげ,理学療法士の専門性を生かして,糖尿病治療のチームスタッフとしてかかわる可能性を示唆した。
 格谷氏は,「薬に対する情報を他のスタッフに提供することもCDE薬剤師の大きな役割」と述べるとともに,患者への薬物療養指導を担う責にあるとした。さらに中野氏は,「日本看護協会認定看護師」の共通の役割について解説した上で,各スタッフが糖尿病看護認定看護師と同程度の看護実践ができるように育てることで,糖尿病看護の質の向上に寄与することにその任があることを述べた。
 なお,次回は明年9月27-28日の両日,佐々木ミツ子会長のもと,新潟市の朱鷺メッセで開催される。