第2504号 2002年9月30日


看護師と静脈注射について

厚労省が検討会で方針案を提示


●「新たな看護のあり方に関する検討会」の動向

「静脈注射ができるもの」との解釈に

 「少子高齢化の進展,医療技術の進歩,国民の意識の変化,在宅医療の普及,看護教育水準の向上などに対応した新たな看護のあり方について検討することにより,質の高い効率的な医療の提供を推進する」ことを目的に,厚生労働省(厚労省)の「新たな看護のあり方に関する検討会」(座長=東京都立保健科学大 川村佐和子氏)が,本年5月より開催されている。同検討会では,(1)医師よる包括的指示と看護の質の向上による在宅医療の推進,(2)医療技術の進歩等に伴う看護業務の見直し,(3)これらを推進するための方策,を検討内容とし,特に(2)に関しては,「看護師等による静脈注射の実施」「医療機関における医師の包括的指示のあり方」に関して議論が交わされている。

●看護職の90%が静脈注射を実施
 さる7月24日に開催された第3回検討会では,上記した「看護師等による静脈注射の実施」が議題に取りあげられた。この席で厚労省は,「94%の医師が看護師・准看護師に静脈注射を指示している」「90%の看護師・准看護師が日常業務として静脈注射を実施」などの調査結果(平成13年度厚生科学特別研究より)から,(1)法解釈と実態との乖離がある,(2)医療施設や在宅においても,看護職員が静脈注射を実施することへの国民のニーズが高まってきている,(3)看護教育においては,静脈注射に関する原理原則,薬剤の作用および特性,緊急時の対応等が習得され,緻密な観察に基づく的確な判断力と技術力のある看護職員が育成されている,などを理由に,「現行の厚生省医務局長通知(1951年9月15日)を改め,看護師等が静脈注射を実施できるものとする」との方針を提示した。

●「看護師の業務外」の理由
 なお,1951年通知において「静脈注射が看護師の業務外」として禁止されてきた理由は,(1)薬剤の血管注入により,身体に影響を及ぼすことが大であること,(2)技術的に困難であること,の2点。また厚労省は,具体的対応策としては,(1)静脈注射実施に関する解釈通知の変更,(2)看護基礎教育における教育内容の提示(看護学校養成所に対する通知),(3)院内での静脈注射教育内容の提示(病院,診療所,関係団体への通知)などを示した。
 これらに関しては,委員からは「免許を持たない学生の実習教育」や「IVHも静脈注射の範疇とするのか」などの意見が出されるとともに,「訪問看護・在宅における『死亡診断書』作成規制の緩和」の法整備も今後考えられるとの意見もあった。
 なお同検討会では,8月に「緩和ケアにおける疼痛管理」を課題にモルヒネを中心とした麻薬の取扱いについて,9月には「中間まとめ」についての議論が行なわれた。

「安全管理」を最優先として

 この7月に提示された「看護職者による静脈注射」をめぐっては,検討会に委員も参加している日本看護協会(南裕子会長,52万人)も,「安全確保のために組織全体の問題として,適切な職種による分担やルールを確立する必要がある」として,現場に必要な管理体制やガイドラインが整備されることを確認しながら検討会に参加していくことを表明している(協会ニュース,8月15日号)。
 また,昨年創設された日本看護技術学会(理事長=健和会臨床看護学研究所長 川島みどり氏)では,本年10月20日に開催される第1回日本看護技術学会(別掲参照)の前日のプレイベントでこの問題を取り上げ,緊急フォーラム「看護師と静脈注射について」を開催する。

●日本看護技術学会が「緊急フォーラム」を開催

 日本看護技術学会は,「21世紀を迎えた今日,少子高齢社会にあって,看護を必要とする人々は増加し,適切な看護を責任を持って提供していく看護職の責務が問われている。今日まで看護は,細かい観察と多くの工夫を重ね,人々の健康生活に貢献してきたが,営々と積み重ねてきた看護技術について,その効果と根拠を明確に示すことが求められるようになった。インフォームドコンセントの時代,看護の提供にあたっても,その目的,内容,効果等に関して説明する義務と責任がある。今,看護職者らが行なっているさまざまな技術について,その効果とメカニズムを科学的手法を用いて明らかにすること,また,経験的知識を発掘してその根拠を探索すること等により,さらなる看護技術の開発をめざして,本学会を設立。これらの研究活動を通して看護学の学術の発展に寄与するとともに,看護実践の向上に貢献することを目的とする」を設立趣意として発会された。
 今回の緊急フォーラムの開催にあたり同学会は,「厚労省の『新たな看護のあり方に関する検討会』では,看護師等が静脈注射を実施できる方向での論議が進み,国としても『看護師等が静脈注射を行なえる』という,従来の考え方を覆す決定を出す方向のようである。看護業務と静脈注射をめぐる問題は,法的解釈をめぐって50年前からずっと論議され続けながら,すでにこれを看護師が行なっている施設も増えていると言う。しかし,『行なってもよい』ということになれば,現実の看護の仕事にさまざまな影響をもたらすばかりか,安全性の面からも検討することは多くある。
 そこで,職場の実態や基礎教育の現状を踏まえた看護職者の意見交流を図るために,日本看護技術学会では緊急フォーラムを開催する。関心のある方々の積極的な参集を期待したい」との声明を出している。
 なお,緊急フォーラムは10月19日(10:00-12:00)に,東京・文京区の文京シビックホールで開催されるが,参加者は9月17日現在,定員(会場の都合により,先着150名)を超える申込みがあり,申込みは締め切られた。
 本フォーラムの内容に関しては,本紙11月25日発行の看護版(2512号)にて詳報する。また,弊社発行の看護系雑誌での掲載も予定しているので,参考にされたい。
◆連絡・問合せ先:健和会臨床看護学研究所内 日本看護技術学会事務局
 TEL(03)5813-7395/FAX(03)5813-7396
 E-mail:jsnas@nifty.com