医学界新聞

 

家族とともに創る家族看護学

第9回日本家族看護学会が開催される


 第9回日本家族看護学会が,さる9月7-8日の両日,横田碧会長(岩手県立大)のもと,「家族とともに創る家族看護学」をメインテーマに,岩手県の岩手県立大を会場に開催された。
 今学会では,22群94題に及ぶ一般演題発表の他,会長講演「家族とともに探索してきて」や,特別講演「在宅看護-家族がナースに望むこと」(在宅看護研究センター・看護コンサルタント(株) 村松静子氏),および,市民公開と位置づけたシンポジウム「家族看護の実践は,どこまできているか-家族のニーズに応えるために」(座長=慶大 原礼子氏,家族看護学研究所 渡辺裕子氏)が企画された。


数多くの家族との出会いに学ぶ

 会長講演「家族とともに探索してきて-家族,この不思議で魅力的なるもの」を行なった横田氏は,これまでの数多くの家族と出会いから学んだ,気づき,考えを整理し,自身を振り返る総括として講演。
 さまざまな国籍で構成された「満艦飾家族」や,裏門からの退院をしていった「障害児を持つ家族」からは,「家族とは複雑多様な存在である」こと。また,家族内のコミュニケーションの混乱がみられた,会話のない嫁と舅の間に入った娘の悩みからは,「コミュニケーションは学習し直すことができること」や,「コミュニケーションの悪循環は修正が可能であり,和解の可能性があること」など,15の事例からの学びを述べた。その上で,家族関係の支援として,(1)「親業」(トーマス・ゴードンによる)の学習,(2)リペアレンティング(育ち直し)の体験,(3)看護者が家族に役立つ存在となっていくことをあげ,「豊かな心を持って家族に同伴すること」とまとめた。
 一方,特別講演では,在宅看護の先駆者である村松氏が,最近は看護師としての仕事よりも「臨床心理士」としてのかかわりが多くなってきた現状を述べるとともに,「在宅看護20年」の原点は自分の家族,両親とのかかわりにあったことを紹介。多くの家族との出会いの実例から,看護職としてどのように接してきたかを切々と語り,会場の参加者の共感を誘った。氏はその上で,「患者・家族に対して,看護職は単なる技術者ではなく,また指導者ではなく支援者であってほしい」と結んだ。
 なお,今学会では初の試みとして,(1)「入院中の患者に付き添う家族への支援を考える」(主催者=宮崎医大 鶴田来美氏,草場ヒフミ氏),(2)「がん患者・家族の会:かたくりの会」(同=岩手県立大 横沢せい子氏),(3)「多胎児の家族への看護支援」(同=岩手県立大 福島裕子氏),(4)「『親業』ってなに? 何か役立つことがありそう!」(同=岩手県立大 柴田尚子氏,横田会長)の4テーマでの「自由集会」を開催し,多くの参加者から好評を得た。