医学界新聞

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


児童生徒の検尿陽性者に対する最新かつ適切な対応を解説

学校医のための小児腎臓病のみかたと指導
内山 聖 編集

《書 評》阿南茂啓(九州学校検診協議会腎臓検診専門委員会委員長/阿南小児科医院)

義務化された学校検尿に伴う現状に対応

 児童生徒に対する学校検尿が法律で義務化されて,腎疾患の早期発見・早期治療がなされるようになり,その有用性は一般に認められるところとなりましたが,まだまだ多くの問題を残しています。執筆編集をされた内山教授も述べられているように,特に事後措置について国の統一した見解が示されておりませんので,大きな地域格差が生じています。
 このような現状をふまえて,腎疾患が専門ではない多くの学校医のために執筆された本書は,誠にユニークな,他に類をみない,暖かい内容で,内山教授の狙いどおりの書となっています。
 内容について2,3触れさせていただきます。
 学校検尿では多くの軽症の腎疾患が発見されますが,その管理は厳し過ぎないようにと,しばしば警告をしています。
 第3章「外来治療と専門医に送るタイミング」というタイトルを見ただけで,われわれ開業医・学校医としては飛びつきたくなります。血尿・蛋白尿,その他の各種腎疾患の外来治療と腎生検の適応について,また尿路感染症の扱い方など,つまり専門医へ送るタイミングが詳しく述べられています。さらに第4章では,「主な腎疾患の病態と予後-患者への説明のために」と続くのですからこたえられません。この章では,微少血尿から各種腎疾患について,患者への説明に必要なその治療法と特に予後について,症例を提示しながら懇切ていねいに解説されています。そして最後に,小児期腎不全の最近の動向について,腹膜透析,血液透析の問題点から腎移植についてまで述べられています。
 腎疾患児の予防接種をどうするかは,開業医・学校医として悩まされる問題の1つです。第7章「腎疾患児への予防接種」では,特にステロイドを使用している腎疾患児の予防接種について,症例を提示しながら,実践に則して詳しく説明されています。

全国の学校の保健室にぜひ備えてほしい1冊

 執筆陣は,内山教授をはじめ小林収教授以来日本の小児腎疾患研究のメッカ新潟大学小児科の関係者です。生まれるべきところで生れた書です。実は私も,もう40年も前になりますが九大の小児科に入局してすぐ,わずか数か月でしたが小林教授の下で腎生検を勉強させていただいた関係などもあり,本書には特別の感慨があります。
 すべての開業医・学校医の先生方,そして研修医の先生方にもぜひ読んでほしいものです。できれば,全国の学校の保健室に1冊備えてほしいと思いますし,その他の学校保健関係者にもぜひ一度読んでもらいたい書です。
A5・頁232 定価(本体3,200円+税)医学書院


魅力全開,一人法によるトータルコロノスコピーのすべて

プラクティカルコロノスコピー 第2版
岡本平次 著

《書 評》幕内博康(東海大教授・外科学)

 岡本平次著『プラクティカルコロノスコピー』第2版が出版された。第2版が出されたということは,とりもなおさず第1版が売れたということである。また,多くの読者の役に立ったということであり,引いては多くの患者の福音につながったということであろう。
 さて,著者の岡本平次先生は1948年のお生まれで,当年53歳と脂の乗り切ったコロノスコピストであり,有名な新谷弘実先生の愛弟子の1人である。岡本先生は開業前の一時期,東海大学医学部外科学講師として勤務しておられたこともあり,私自身も家内も,また,大切な患者さんたちも先生に定期的に検査をしていただいているとともに,教室員が何人も直接指導を受けている。中には岡本平次の直弟子を名乗る向井正哉や,ついにクリニックに勤務してしまった田口貴子もいるわけである。先生は技術の人であり,そのライブデモンストレーションは100回におよび,特徴あるヒゲと人なつっこい丸い目,独特な語り口を,コロノスコピストで知らないものはないであろう。

初心者に大腸内視鏡の実施意欲をかき立ててくれる内容

 さて,本書は“一人法によるトータルコロノスコピー”のすべてが記されている。まず「前処置」から始まり,「どうしたら苦痛なく短時間で盲腸まで挿入できるか」,「どこに困難部位があるのか」,「通常と異なる高等テクニックと補助手段」などが書かれている。ここを読むと,すぐにでも内視鏡がスムーズに挿入できるような気がするから不思議である。初心者に大腸内視鏡をやってみたいと思わせるものがある。特に「高齢者での注意点」は,高齢者がいちじるしく増加している昨今,大いに参考になる。「前処置・前投薬の注意点」に始まり,「施行中の循環動態の見分け方」,「スコープの選択」,「助手のあり方」など詳述されている。細心の注意を払わなければ落とし穴が口を開けていることがよく理解できるとともに,その「留意点7か条」を守って上手にやってみようとのファイトもかき立ててくれる。また,内視鏡の進め方の1つに,車での山道走行に例えての記述もあり,「きつい急カーブの続く山道は急ハンドルを避け,直線的に最短コースを走れ」ということなど,一度読むと忘れられない憶えやすい書き方がなされている。偶発症についても自らの経験を通して記述されていて,思わず引き込まれて読み進んでしまう。どうしたら予防ができるか,不幸にも起こしてしまったら,「黄玉」がみえてしまったらどうするか,循環器系,呼吸器系合併症の記述も具体的である。内視鏡医自身のケアの項も興味を引くところであり,他にない特徴であろう。A型性格についてなど,小生自身を振り返っても身につまされるところがある。最後のQ&Aも,著者が実際に受けた質問の中から重要なものを選び出したもので,大変参考になる。

楽しく読めて勉強できる「栄光のコロノスコピストへの道」

 とにかく読み出したら引き込まれて止まらなくなる。楽しく読めて勉強できる。著者の語り口のうまさ,臨場感あふれる文章は,とてつもなく多数の,いや,右中指MP関節脱臼を起こさせるほど多数の臨床例と,これまた多くの講演,ライブデモンストレーションに裏打ちされたものである。本書の読後には,天才岡本に数歩とも近づけるであろうし,「栄光のコロノスコピストへの道」を歩き出すことができるものと確信している。
B5・頁296 定価(本体19,000円+税)医学書院


透析治療のすべてを完璧に網羅

臨床透析ハンドブック 第3版
John T. Daugirdas,Peter G. Blake,Todd S. Ing 編集/飯田喜俊,今田聰雄 監訳

《書 評》飯野靖彦(日医大教授・内科学)

 透析治療に携わる医師,研修医,看護師,臨床工学技士にとって必携の書である『臨床透析ハンドブック』の第3版が出版された。
 この本は,透析の適応から始まり,血液透析,腹膜透析,透析患者の特殊な問題としての心理・栄養・血清酵素値など,また,透析合併症などをすべて網羅しており,書名のとおり透析治療のハンドブックとして完璧なものになっている。さらに,翻訳本ではめずらしく,日本の透析治療に考慮した日本で入手可能なダイアライザー,透析機器の説明が監訳者の手によって加えられているのもすばらしい。この本によって新たに透析医療を学ぶ研修医や看護師はもとより,すでに透析医療に携わっている透析医,臨床工学技士にも新しい知識がふんだんに盛り込まれており,有用な本となっている。また,透析を専門にしていない一般研修医にとっても,透析患者の合併症診療を行なう上で座右に用意したい本でもある。

最新のEBMに基づく透析治療

 内容は,最新のEBMに基づいた記述がされており,特に血液透析については,米国の慢性透析ガイドラインであるDOQIにそって解説されている。NIHのHEMO研究や米国のデータベースを用いた透析量の問題や最近の話題である無形成骨にも言及されている。さらに,家庭透析,連日透析,夜間透析の利点,腹膜透析でのブドウ糖以外の浸透圧剤などの使用についても解説されている。
 監訳者の飯田喜俊先生と今田聰雄先生は,私の尊敬する透析医の方々であり,細かい内容のチェックがなされているのが原文と読み比べてすぐに理解できる。翻訳者も透析医療のエキスパートの方ばかりであり,豪華な顔ぶれとなっている。これだけの実力者が翻訳を担当されたことによって,この本の価値がさらに上昇しているのは間違いない。
 透析医療に関係するすべての医療従事者が本書を読み,20万人を超える透析患者さんがよりよい治療を受けられることを期待しています。
B5・頁592 定価(本体9,800円+税)MEDSi


本邦の産科病理の第一人者による胎盤病理アトラス

目でみる胎盤病理

中山雅弘 著

《書 評》武田佳彦(東女医大名誉教授・産科婦人科学)

 胎盤は,胎児の体外臓器として母体との接点にあり,その着床は妊娠成立の起点であり,妊娠維持に直接的に関与するが,母子の物質交換機能の大半を担っている。そのため着床現象や代謝・内分泌機能は,詳細な検討が進められているが,胎児の病態と直接的に対応する胎盤病理の検討は,母児の臨床像との関連が困難なため必ずしも十分ではない。ことに,病理形態学の素養を持つ研究者の不足が隘路になっていることも,本領域の発展を妨げている一因である。

広く周産期医学への活用が期待される胎盤病理の解明

 本書では,著者の豊富な臨床経験をもとに,疾患との対比を行ないながら胎盤病理がきわめて簡明に論述されている。胎盤の観察について胎児面では,羊膜・絨毛膜炎,母体面では,妊娠中毒症,胎盤早期剥離,胎盤割面では,梗塞・血栓などもっとも関連性の強い疾患を例示して系統的な検索手順を解説している。臍帯についても,長さ,太さ,付着異常,過捻転など臨床に対応して検索が整理されている。このように具体的な観察方法の解説は,臨床医にとって胎盤病理の重要性を再認識し,疾患のより深い理解を得るための大きな手助けとなろう。一方,胎児発育障害における絨毛構造の萎縮性変化や絨毛血管の梗塞,フィブリノイド変性などの虚血性病変は,発育障害と関連することが知られているが,chorangiosisと無血管絨毛の混在など特異な病理像を提示しており,発症病態の解明に大きな手がかりを与えている。
 羊膜・絨毛膜炎で代表される子宮内感染症の胎児への波及も,胎盤病理に明確に反映することが示されており,生後の新生児感染症の病態解明への重要性を指摘している。
 また,最近ではART(assisted reproductive technology)のために一卵性双胎の頻度が増し,双胎間輸血症候群が臨床上大きな課題となっているが,血管吻合の状態から1児死亡の原因解明に胎盤病理は,欠くことのできない要件である。これらの疾患群については,マクロの形態的特徴を検鏡所見と対比させながら,全体の疾患病態の把握を心がけている。このような手法による胎盤の形態病理からの解析は,臨床像の理解にきわめて有用である。
 中山博士は,専門の病理医として積極的に胎盤病理の解明を進められた数少ない研究者の1人であり,周産期医学の発展を支えられた功績はきわめて大きい。
 本書は,胎盤病理の立場から疾患群を巧みに整理して臨床像を浮き彫りにしており,周産期医学の臨床で広く活用されることを期待したい。
B5・頁120 定価(本体10,000円+税)医学書院


全面カラー化しOSCE導入にも対応の整形外科学教科書

標準整形外科学 第8版
石井清一,平澤泰介 監修/鳥巣岳彦,国分正一,中村利孝,松野丈夫 編集

《書 評》三浪明男(北大教授・整形外科学)

新進気鋭の若い執筆陣による絶えまざる改訂

 石井清一,平澤泰介両名誉教授監修の『標準整形外科学』改訂第8版が発刊された。1979年に初版が発刊されたころ,筆者は,ちょうどいわゆるGeneral Orthopaedicsの修練を終了し,より専門分野へと進んだ時期である。したがって,自分自身の学生時代に本書を見る機会はなかった。しかし,最近の臨床基本そして臨床応用コースのほとんどの学生は,本書をまるで座右の書のようにポリクリの際に持参しており,私も学生に疾患を説明する際に「本書のどの部分を見てください」と言うまでに詳しくなっている。つくづく私の大学時代に本書のようなすばらしい本があったらよかったのに,と思う良書である。
 本書の内容については,すでに20年以上にわたり医学生,卒後まもない整形外科研修医,看護師学生,看護師,理学療法学科学生,理学療法士,作業療法学科学生,作業療法士などのゴールド・スタンダード的な教科書としてもっとも読まれており,定評のあるところである。また本書のすばらしいところは,改訂するたびに新進気鋭の若い執筆陣(監修者は“若い血”と表現しているが)を必ず加えて,現在の整形外科のアップツーデートな考え方をいち早く取り入れていることと思う。どうしても教科書は陳腐な,現在ではあまり用いられていない考え方を踏襲することが多い中で,本書がこのように絶えず積極的な改訂でアップツーデートな考え方を加えていることが,愛読者数が増え続けている理由の1つと思う。

特筆すべき全面カラー化と参加型臨床実習ための付録

 今回新たに特筆すべき点は,全面的にカラー化して大変読みやすくなっていることである。さらにもっともすばらしい特筆すべき点は,新しく採用した『診療の手順』というコーナーの新設である。最近の医学教育は,OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)に代表されるように,正解を求めるのではなく問題解決能力を臨床の現場において効果的に学習する目的で,診療参加型臨床実習が導入されつつあり,私の大学でも積極的な参加型臨床実習に重きを置くこととなってきている。そのためには,診断過程において患者さんが自覚症状を訴える局所所見にのみ目を奪われることなく,その局所と機能的に関連している隣接諸器官からも同様の自覚症状が起こりうることを,常に念頭に置く必要がある。そのために,各章の冒頭に診療のステップをリストアップした『診療の手順』として掲載されている。またすばらしいことに,この『診療の手順』は別冊付録としてまとめて収載されているので,いつでもどこでも簡便に見ることができるように配慮されていることである。
 さらに,こうして内容が充実してくると,読者である医学生諸氏の負担が多くなることを懸念して,コア・カリキュラムとして学ぶべき必修事項と,高度な参考事項とを分けるために,後者を明確な小文字として区別していることも知識の整理と学習の目途となり,学生にとって勉強しやすいし,私たちも指導する際に便利と考える。大変細やかな配慮で感心している。
 本書は,学生や卒後まもない整形外科研修医だけでなく,経験を積んだ専門分野のみを行なっている整形外科医にとっても欠かすことのできない珠玉の1冊である。学生から整形外科医にとっての生涯の座右の書に出会えたような本書が発刊されたことを大いに喜ぶとともに,ここに書評を書かせていただいた光栄に感謝したい。
B5・頁840 定価(本体9,200円+税)医学書院


いざ救命,医療スタッフに不可欠のポイントがいっぱい

チーム医療のための呼吸循環管理マニュアル
塚本玲三,相馬一亥 編集

《書 評》深澤伸慈(順大附属順天堂医院・吸入療法室)

 現在の救命医療において,呼吸・循環の管理は不可欠です。また,安全で高度な医療を提供するためには,複数の医療スタッフが治療にかかわるチーム医療が必要です。

患者管理を系統的に幅広くアプローチ

 『チーム医療のための呼吸循環マニュアル』は,呼吸・循環不全の病態から始まり,この2面から患者管理を系統的に幅広くアプローチしています。しかも間欠的にまとめ上げられているため,臨床において必要または重要な項目を早く的確に把握することができます。そして救命処置や人工呼吸管理においては,フローチャートを使用することにより,より具体的な処置の方法を知ることができます。さらに臨床において必要な手技,医療機器については,写真または図解解説されてまとめられているため,治療方法,手技,使用される医療機器などを系統的に理解することができます。そして最後に疾患別呼吸・循環管理の症例をあげ,より具体的に学ぶことができる構成になっています。例えば,第3章の「呼吸管理」においては,「呼吸管理の意思決定」に始まり,「酸素療法」,「吸入療法」,「マスクCPAP」,「人工呼吸器」,「非侵襲的な呼吸モニタリング」,「侵襲的な呼吸モニタリング」,「呼吸リハビリテーション」の構成になっています。「人工呼吸器」の項については,「NPPV」より始まり,「人工呼吸器の選択」,「各人工呼吸器の特長と設定方法(NPPVも含む)」,「各モードの適応,効果,短所」,「トラブルシューティング」,「保守管理」,「ウィーニングのポイント」,「人工呼吸器の中止と抜管」,「人工呼吸管理のポイント(具体的な数値をあげて)」からなり,重要な項目がわかりやすく,探しやすく,箇条書きに解説されています。

本書を参考に重傷患者の呼吸・循環の管理を

 本書は,「患者に焦点を置き,本書を参考にしさえすれば,重傷患者の呼吸と循環の管理ができる」と著者が書かれているように,臨床における呼吸・循環管理のポイントを知るうえで,インデックス的なわかりやすいマニュアルとして評価が高いものと思います。またチーム医療を行なううえで大切な知識の共有という観点から,臨床工学技士,看護師,理学療法士など多くの医療スタッフの方々が呼吸・循環管理のポイントを理解するために参考になる著書であると考えられました。
A5・頁200 定価(本体3,000円+税)医学書院