医学界新聞

 

在宅高齢者の問題点と可能性を論議

第44回日本老年医学会「在宅介護フォーラム」より


 さる6月12-14日の3日間,第44回日本老年医学会が,高崎優会長(東医大)のもと,東京・新宿の京王プラザホテルを会場に開催された(2493号にて既報)。
 今学会では,「21世紀のよりよき老人医療の確立」をテーマに,会長講演をはじめ,招聘講演や日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)による特別講演「加齢とQOL」,3題のシンポジウムの他,教育講演12題,若手企画シンポジウム2題,日韓合同シンポジウム,市民公開公開講座「介護保険と高齢者医療」,ワークショップ「老年者疾患別ガイドラインの現状と改正点-呼吸器」などを企画。なお,一般演題発表は308題(口演175題,ポスター133題)に及んだ。
 本号では,これらの中から,コメディカル,福祉関係者,介護に関心のある市民の参加で行なわれた,在宅介護フォーラム「在宅高齢者の医療と介護-その問題点と可能性」(司会=慶成会老年学研究所 斎藤正彦氏,山口県立大 田中耕太郎氏)の話題を報告する。


在宅介護に携わる者が一堂に会して

 一般市民も参加した「在宅介護フォーラム」には,ソーシャルワーカーの立場から渡辺姿保子氏(河北総合病院在宅ケアセンター)が,また介護福祉士の立場から西和子氏(コスモスライフ訪問介護サービス),訪問看護師の立場から横田喜久恵氏(新宿訪問看護ステーション),社会福祉士の立場からは板垣恭子氏(北山伏在宅介護支援センター)が,さらに医師の立場で平原佐斗司氏(梶原診療所)の5名が登壇した。
 渡辺氏は,313床,平均在院期間15.2日の河北総合病院で,「ソーシャルワーカーが2001年に退院準備援助にかかわった対象者は866名」と報告。そのうち507名が転院,自宅退院は319名で,うち河北訪問看護ステーション利用者は53名であり,患者・家族が望むこととして「看護職のようなケアは家族にできない。費用の安い施設で療養させたい」などであったと述べた。
 また西氏は,ホームヘルパーの96%が「医療行為経験者」であり,具体的な医療行為例として,外用薬塗布,座薬挿入,インスリン注射,経管栄養管理,吸痰,ガーゼ交換などをあげた。なお,その要因として利用者・家族の「医療行為認知度の低さ」を指摘し,人材育成の緊急性と医療職との連携の必要性を説いた。
 横田氏は,「看護職者が独立して起こすからこそ意義がある訪問看護ステーション事業だが,介護保険の施行にあって,医師にも,また社会的にも認知されていない事業」という問題を抱えている実態を報告。今後の課題として,(1)訪問看護介入の効果の明確化,(2)予防的対応サービスの強化,(3)医療依存度の高い利用者へのケアマネジメント,(4)経営の安定化などをあげた。
 なお平原氏は,「事業者間の自由な競争や苦情処理等の監視的システムだけでは,介護の質は十分に向上しない」と述べ,今後の在宅高齢者の医療と介護が充実するには,「チームアプローチの定着が必須」であることを指摘した。