医学界新聞

 

医療充実が必要な21世紀は「看護の時代」

平成14年度日本看護協会通常総会開催


 日本看護協会(南裕子会長,会員約52万4000人)の平成14年度通常総会および全国職能別(保健師職能・助産師職能・看護師職能)集会が,さる5月29-31日の3日間,東京・北の丸公園の日本武道館を主会場に開催された。
 本総会では,「看護は100年以上も前から,健康の援助に努めてきた。看護師の役割は,その人らしくいきいきと生きるためのライフサポーターである。福祉・医療体制の充実が必要な21世紀は,まさに看護の時代と言える」との考えから,本年度のスローガンとして「21世紀,国民の信頼に応えるライフサポーターをめざしてネットワークする看護職」を掲げた。
 また,本年,同協会は創立55周年を迎えることから,2日目の総会終了後に,永六輔氏(作家)による創立55周年記念講演を企画。氏の軽妙な語り口に参加者は大いに沸いた。
 なお,昨年福岡県・博多で開催された通常総会で取り入れられ好評だった大型スクリーンによる投影方式を今年も踏襲。壇上の役員のみならず,質疑応答時の発言者の姿もスクリーンに映し出された(関連記事)。


看護職のたばこ対策

 総会開催にあたり南会長は,「協会創立55周年を迎える記念すべき総会で,初めて保健師・助産師・看護師の名称が使える」と述べ,名称変更の法制化までの経過を報告。また,初めての診療報酬マイナス改定となった今年度の診療報酬改定などに関連して,医療制度の抜本的改革が必要と訴え,さらに高齢者医療問題の次の課題は「精神保健医療福祉制度の改革」であることを強調した。
 さらに,同協会内に昨年4月設置された「医療・看護安全対策室」に触れ,さらなる情報提供や,相談・支援体制を図り,各都道府県看護協会と連携した医療・看護安全対策の推進や,リスクマネジャーの養成が急務であるとした。
 なお,南会長は「まちの保健室」モデル事業活動や准看護師の移行教育問題(後述),専門・認定看護師制度などに関しての想いを述べるとともに,「国民の健康づくりの推進」に関連し,「看護職者のたばこ対策」「児童虐待予防における看護職の役割」「産業看護に関する諸問題の検討」の重要性を指摘した。協会は,そのための特別委員会を設置して積極的に取り組んでいる現況を報告した。
 特にたばこ対策については,看護職者の4人に1人が喫煙者であるという昨年度の調査報告を憂慮し,「保健医療職として自覚を持って禁煙の保健行動を積極的に提案・実践を図る」ことを目標に,たばこ対策を専門に推進する人材育成の方針も明らかとした。このたばこ対策の人材育成については,「看護職の喫煙問題対策検討委員会(委員長=山梨県立看護大短大 倉田トシ子氏)が,すでに「禁煙支援指導者研修カリキュラム(案)」を教育委員会に提案しており,看護教育・研究センター(清瀬市)と神戸研修センターを会場に,各50名,3日間コースの研修会開催を,今年度の事業計画の1つとして打ち出した。

准看護師から看護師への移行教育に新たな方針

 重要議案の1つとして提出された「准看護師養成停止および准看護師から看護師への移行について」に関しては,岡谷恵子専務理事がこれまでの経緯や,これからの見通しを含めた新たな提案を行なった。
 同協会は,これまで「将来に禍根を残さないためにも,准看護師の養成停止なき看護師への移行教育はない」としてきたが,昨年の総会時に「2001年秋の段階で准看護師養成所の動向を見極め,一定の判断をしたい」と提案し,承認されている。協会では養成所への「正確な聞き取り調査」を実施。その結果,2001年4月に452校で新入生募集が行なわれた養成所が,本年4月には322校に減少することが判明。しかしながら,1学年入学定員は,1万6224人が見込まれ,同時期の看護師養成所(3年課程)の1学年定員3万4200人の47%を占め,依然として准看護師の養成数の多いことを示している。
 これらの現状から,協会は「現時点では,准看護師の養成停止のめどがたったと判断することはできない。したがって,准看護師養成停止に向けた活動を,今後も強化して継続していかなくてはならない」と確認した。その上で「現場での経験の長い准看護師などは,2年課程への進学が現実問題として難しい」として,具体的な移行教育を模索。「教育の機会が得られる方法を提案することが必要だ」として,「2年課程の通信教育制を,弾力的に運用して実施することを,厚生労働省に提案,要望する」との方針を立て,提案に至った。なお,通信教育制を取り入れた理由としては,(1)通信教育に有用な教育ツールや教材の開発が飛躍的に進んでいる,(2)1度に多くの入学者の受け入れが可能,(3)現在の就業形態や生活を維持しながら受講できる,(4)入学が居住地や教育機関の偏在等に影響されにくい点をあげた。
 協会が示した具体的な通信教育におけるカリキュラム案は,「科学的思考の基盤・人間と人間生活の理解」が主旨の基礎分野7単位(315時間),「人体の構造と機能・疾病の成り立ちと回復の促進・社会保障制度と生活者の健康」とする専門基礎分野14単位(315時間),「基礎・小児・成人・精神・老年・母性・在宅看護学」からなる専門分野25単位(750時間)の講義に加え,臨地実習16単位(720時間)の計2100時間。
 このうち先の1380時間の講義は,(1)印刷教材による授業,(2)放送授業,(3)面接授業,(4)レポートの添削指導の方法で行なうが,弾力的運用として,他の教育機関で履修したものを読み替える「単位認定方法」をとる。また臨地実習については,一定の臨床経験を考慮した運用(具体案:臨床経験10年以上の者は,自己の経験の中から専門領域ごとに事例分析を行ない,また専門領域の事例を持たない者は,模擬患者での事例検討・実習とし,レポート審査で単位認定を図る)と解説した。なお,面接授業は4週(20日)-6週(30日)を義務づけたが,単位認定試験の後に卒業で「看護師国家試験受験資格」が得られることは,これまでの2年課程と同様であり,その先の「看護師国家試験」合格につながらなくては「看護師」の資格は得られない。
 この提案は圧倒的賛成多数で採択されたが,新たな方向性として示された「移行教育問題」は,今後の各関係機関との調整で前進・推進されることになろう。その一方で看護協会は,「原則として,中学校卒業での看護師の道が残されていることは問題」として,「今後も准看護師養成停止に向けた活動は強化する」ことも,提案項目に盛り込んだ。
 その他,今年度の事業計画の重点事業とされたのは,(1)新会館の建設(2003年中に完成予定),(2)組織の強化,(3)医療制度改革と政策提言,(4)准看護師養成問題の早期解決と移行の推進,(5)訪問看護事業の拡充,(6)国民の健康づくりの推進,(7)医療・看護における安全対策の推進,(8)専門看護師・認定看護師の認定と導入の拡大,(9)防災・災害看護ネットワークの構築,(10)国際協力体制の推進の10項目であった。