医学界新聞

 

合格体験記


「新しい国試」に向けて

林 省吾(香川医大卒)

 まず最初に,共に合格を勝ち取られた皆さんに,心よりお祝いを申し上げたいと思います。正直に言って「もう2度と受けたくない」というのが今の実感ですが,これから大変な思いをしなければならない後輩の皆さんに,何か参考になるようなことが書ければ幸いです。昨年よりガイドラインが変わり,少しずつ「これからの国試」の姿が見えてきたように思います。
 「国試が変わった」とよく言われます。私自身,今までの過去問だけでは不足に感じる部分がありました。具体的にはまず,「プライマリ・ケア指向が強まる中で,知識だけではなく,実地臨床を想定した判断や処置までが求められている」ことが挙げられます。「臨床実習が重要」という意見も,おそらくここから来ているのではないでしょうか?
 しかし,実際に国試対策を始められる時期は,多くの場合臨床実習が終わってからかと思います。私は臨床実習期間中,過去問などには一切手をつけることなく,ほとんど「何もしていない」と言ってよい状態でした。本格的に「アプローチ」(医学評論社)に手をつけたのが6年の夏休みに入ってからという有様で,周りの同級生たちからも出遅れた感が否めず,当初はかなり焦りを感じておりました。何とか夏休み中にメジャーだけでも一通り終わらせようと,がむしゃらに問題だけを解いていく日々が続きましたが,今振り返ってみて,それはとても危険なことだったと思います。

臨床的な思考の訓練を

 前回および今回の臨床問題では,いわゆる「国試的キーワード」だけで答えが出る問題は比較的少なく,文章・画像全体を見ての,総合的な判断が求められる問題が多かったように思います。また,診断を1つに絞ることが難しく,鑑別診断や除外診断に頭を悩ませることも少なくありませんでした。そういった「これからの国試」を乗り切るためには,「○○を見たら××」型の勉強だけでなく,実際の臨床的思考過程に沿って問題を考えてみる態度が重要だと思います。確かに臨床実習はその貴重な機会の1つですが,過去問などを解く際にも,答えを出すことだけで満足するのではなく,1つひとつの所見や検査値の持っている「意味」を考えてみることをお奨めします。それによって病態生理の理解も深まりますし,臨床的な思考の訓練にもなると思います。
 また,私は医学界新聞でも以前紹介された「より良い医療を目指す医学生と医師のメーリングリスト」に昨年5月加入し,以来楽しく参加させていただいていますが,そこで交わされるケース・スタディや様々な議論から学んだことは,とても数え上げられるものではありません。この場を借りて,主催者である市村公一氏はじめ千名を越えるメンバー各位に厚く感謝するとともに,(本来国試対策のメーリングリストではありませんが)皆様にも強く推薦したいと思います。

変わりゆく医療への思いを

 さらに,今回の国試では一般・必修問題のみならず臨床問題でも,「これからの医療」に関わる医療保健福祉政策(公衆衛生)を意識した問題が少なくなかったように思います。これに対応するためには,後回しになりがちな公衆衛生の基本的な部分を早めに押さえておくのも一計でしょう。そしてその際には,統計数値や法律をただ覚えるだけでなく,皆さんの活躍の場となる臨床現場や,皆さん自身の医師としての生き方にも,それらが深く関わることを意識し,さまざまな思いを巡らせてみてください。それは単に公衆衛生的な臨床問題への対策になるのみでなく,皆さん自身の医師としての人生の糧にもなるのではないでしょうか?
 偉そうなことを書いてしまいましたが,私自身,満足な学生生活を送ったわけでも,人に誇れるような受験勉強をしてきたわけでもありません。私の合格には多分に運もあったと思いますが,皆さんはどうか実力で試練に立ち向かってください。その努力は皆さんの医師としてのキャリアに,決して無駄にならぬものと信じます。皆さんのこれからの日々が,単なる受難ではなく,皆さん自身の輝かしい将来につながるものになりますよう,心よりお祈りしております。

合格は研修の許可書

久野名保美(横市大卒)

 先日医師国家試験合格発表があり,よかった,研修が続けられるとほっとしています。

模試や予備校も利用

 臨床問題で得点力をつけるには,まず過去問「クエスチョン・バンク」(QB)か「アプローチシリーズ」(AP),BST(ベッド・サイド・ティーチング)で得た知識,模試を受けることだと思います。模試は1回1万円くらいするので受けたくなくなってしまうのですが,横市大ではMAC,MEC,TECOM,五幸塾の模試の希望者を募り,模試受験日を設けて受けていました。横市大現役生全員合格は,模試をこまめに受けていたということが一因になっていると思います。大学で受けてわからないことは友人とディスカッションし,60%の人が正解して自分が間違えた問題の復習はしておきました。私個人では,予備校の直前講習や「Kokutai」を利用して知識の補強をしていました。
 必修問題についてはQB必修1,2,3と「Dr.M」,「Kokutai」必修問題をやりました。知識のベースになる部分は,自分が医者だったらどうするかなと考えながらBST実習をやっていると自然に身についてくると思います。私は医療面接とSkill Analysisが苦手で,予備校の講義や「Dr.M」で対策を練りました。
 公衆衛生はQBと「Kokutai」公衆衛生対策をやりました。苦手な人は2回やっておいたほうがよいと思います。
 ペース配分はBST実習中に回っている科のAPやQBをやり,夏休みが終わるまでにメジャーを,卒試までに産婦人科,小児科を,11月から必修,公衆衛生,マイナーは1月までにやるのが理想的だと先輩に言われました。計画は守れたためしはないのですが,すべて1回は1月半ばまでに終わればよいと思います。6年の秋から始まる模試を受け,弱点確認や自分が全国でどれくらいの位置にいるか確認しつつ,メジャー2回目を模試の復習と同時にやっていました。

リラックスも大切

 私の実家は東京ですが大学は横浜でしたので電車の中で勉強したり,大学の図書館に通って勉強していました。図書館では友人と昼ご飯を食べたり,時々部活の飲み会に参加したりして気晴らしをしていました。また,運動をしないと頭が働かないし,良質の睡眠も得られないので,ジョギングや水泳を時々やっていました。
 国試直前ですが,やはり緊張して体調も乱れて風邪をひきやすくなっていました。インフルエンザにはかかりたくないと思い,11月頃予防接種を受けました。
 試験は実家から通いました。ホテルに泊まった人もいましたが,慣れている家から通えてリラックスできた気がします。普段9時間くらい寝ているので,初日はほとんど寝た気がしなかったのですが,結局5時間くらい寝ました。最初は緊張して苦手な公衆衛生を解く準備をしていたところ,頁をめくれば臨床問題でした。最初に公衆衛生がきたらへこんでいたと思います。結局3日目に公衆衛生があったので,いつくるかと思って3日とも公衆の勉強をしてしまいました。
 APには「医師国家試験合格は入り口であってこれから一人前の医師になるべく研修をうける許可書である」といったような内容が前のほうに書いてありますが,今この内容を実感しているところです。はじめの2年間で技術,知識,患者さん,ご家族の方との接し方をどれだけ学べるかにかかっていると思います。
 みなさんが無事医師の仲間入りをすることを祈っています。

  
(本頁の写真と合格体験記は関係ありません)