医学界新聞

 

「ありのままの自分」を語る

第8回NABAフォーラムが開催される


 さる3月30日に,第8回NABA〔日本アノレキシア(拒食)ブリミア(過食)協会:鶴田桃江代表〕フォーラムが,東京・秋葉原の東京都中小企業振興公社で開催された。
 NABAは,拒食・過食・自己誘発嘔吐・偏食・下剤乱用などの摂食障害からの回復を願う人々が安心して集える場として,1987年に発足した会員制の自助グループである。同協会では,仲間とともに体験を分かち合い,回復や成長を手助けすべく,ミーティングや会報の発行,ワークショップの開催を企画するとともに,電話などによる相談業務,家族のためのプログラムなどの業務活動を行なっている。

自分を省みる時間

 今フォーラムでは,NABAメンバーおよび障害者の親・家族のための自助グループ「やどかり」会員による体験談が語られた他,アトラクションとしてメンバーでもあるインストラクターによるエアロビダンスや「なんちゃってサイコドラマ」,創作曲「魂の家族」が披露された。
 体験談を語ったA子さんは,「『私はダメなんだ』という弱さを知るのがつらくて,症状がレベルアップすると,異性との接触に依存していた。仲間の支えがあることは大切」とNABAを心の拠り所としている心情の述べた。また,派遣社員として勤務するK子さんは,「小さい時からアトピーや喘息があり,みんなと一緒に楽しむことができなかった。30歳になった最近では,距離をおかずにコミュニケーションがとれるようになり,ようやく思春期を迎えた思い」と語った。またK子さんは,それに反して注目してほしいという思いも強くあり,評価されないと過食に走る傾向があると今は理解している。「自分を省みる時間があることは重要」として,昔の嫌なことは忘れられるようになってきたことも述べた。さらに,「親が変わらなければ」とやどかりのメンバーになったある母親は,「会員となってミーティングに参加していく中で,夫・姑との関係から自らも問題を抱えていることに気づかされた」と語った。
 「摂食障害歴40年の先輩」と豪語するC子さんは55歳。「発症のきっかけは警察官で厳格な父親」と述べたが,26歳の時に「摂食障害があることを理解してくれた」男性と結婚し,ブラジルで生活。その後帰国し,趣味の油絵を覚え,ヨガ歴も15年となるが,現在は顔を見るのも嫌だった父親と同居している。自らを,「毎日しっかりと食べ吐きしている,元気印の人」と評価しているものの,「本当はやわ」であることも強調し話を結んだ。

出会いと交流の中で自分を語る

 「明日があるさ」の曲に乗せたエアロビ体操などが行なわれたアトラクションでは,「カウント・アップ・ダウン」(クイズ形式で,司会者の質問に椅子から立ち上がることで「YES・NO」を答えるもの)が行なわれた。「船・飛行機などを利用し遠隔地から参加した人」をはじめ,症状が今朝あった人,妻・夫に腹を立てている人,過食はお菓子派かおかず派か,などの質問が出され,参加者の背景もわかる。なお,「食べ物以外に依存をしている人」の質問には多勢が,「今回初めて摂食障害者にあった人」の問いには3名が「YES」と答えた。
 同フォーラムの最後は,さまざまな立場の参加者がそれぞれの思いを語る,会場全体の「分かち合い」で締めくくられた。
 「初めて自分が摂食障害であることを告白した。摂食障害と母に告げるくらいなら死んだほうがまし,と思い生きてきた」「親として参加していたが,自分自身にも過食があることがわかった」「園芸作業をしていく中で,症状が止まった。仕事に集中したいがために朝・昼・夜の定期的な食生活となったためかもしれない。趣味や仕事を優先した生活で自然に症状が止まることもあるようだ」「こうなったのは親のせい,と思ってきたが,1人暮らしをするようになった今は,恨む気持ちも薄らいできた」「ギャンブル依存。自助グループに入り22年間の依存から開放された時,自分の存在がなくなったように思った。死にたいと思うこともあるが,生きていていいんだと思えるようになった」「母親の言いなりになって,よい子を演じてきた。これからは『いいかげんに生きる』ことをめざして生活していきたい」などの声が聞こえてきた。
 NABAは,「いいかげんに生きよう」を合言葉に集まりを持ち,「自分らしい生き方」を探すグループでもある。摂食障害が社会的に注目されだして久しいが,摂食障害者が集い,体験を聞くこと,自身も心を開き自分を語れることは,回復や成長に向かう大切なことの1つであり,相互の回復効果は大きいものがある。なお,NABAでは摂食障害者や家族,関係者による61のメッセージを集めた『分析おことわり!』(東峰書房,1800円)を今月発行。また,本人・家族だけでなく,友人や医療関係者も「応援団」としてかかわっているNABAでは,常時会員も募っている。
◆連絡先:〒156-0057 東京都世田谷区上北沢4-19-12 シャンボール上北沢212
 NABA事務局 TEL(03)3302-0710