「看護学教育のあり方に関する検討会」報告書がまとまる
「全国国公私立看護系大学教育担当責任者説明会」開催
文部科学省は,さる3月26日に,「全国国公私立看護系大学教育担当責任者説明会」を,東京・千代田区の一ツ橋記念講堂で開催。2001年7月から行なわれてきた「看護学教育のあり方に関する検討会」(座長=岐阜県立看護大学長 平山朝子氏)報告として,「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」と題する報告書を公表した。
同検討会ではこれまでに「臨地実習ワーキンググループ」および「コア・カリキュラムワーキンググループ」での検討を重ね,2001年11月には「看護系大学における教育の充実に向けて」をテーマに,3日間にわたり全国の看護系大学・病院の担当者を集めて「看護学教育ワークショップ」を開催(本紙,2002年1月28日付,第2471号参照)するとともに,6回にわたる会合を開いてきた。
なお,平山氏と2つのワーキンググループの座長を務めた新道幸恵氏(青森県立看護大学長),佐藤禮子氏(千葉大学看護学部長)は,本説明会に先立つ同日午前に文部科学省(高等教育局長)を訪れ,上記報告書を提出した。
世界に発信できる看護教育に
本説明会では,冒頭に村田貴司氏(文部科学省高等教育局医学教育課長)があいさつに立った。村田氏はその中で,「社会の期待への対応,質の高い看護」をめざすべく,(1)臨地実習の改革→看護実践能力の育成,(2)カリキュラム改革→看護実践能力の質の保証,(3)教育の質の向上と改善→教育の質の恒常的改善などからなる「大学における看護実践能力の育成」を解説。その問題点とその対応を明らかにするとともに,21世紀の看護教育は「カッコイイ=Quality, Access,Content,Openness,Effectiveness」が主軸になると指摘した。また氏は,結びにあたり「日本社会のみならず,世界の共感を得るような方策追究のための検討会設置であった。世界に発信できるような看護教育になることを願う」と述べた。関係大学の連携と協力が重要に
次いで,平山座長が,「検討の基本的考え方」,「看護学の教育内容のコアである技術学習項目」などからなる本報告書の内容を解説〔別掲表参照。なお,全文は「看護教育」(医学書院)43巻5号に掲載する〕。氏は,検討会における「看護学教育の課題」について,(1)基本的な看護実践能力の習得が不十分,(2)医療人としての素養が身についていない,(3)患者の権利擁護者としての立場で行動できない,(4)患者とのコミュニケーション能力不足などが指摘されたと報告し,「医療の中で看護職者が果たす役割,プロフェッショナル性を教え,患者の権利擁護者としての教育を充実させることなどが期待されている」と述べた。また,「看護学教育には臨地実習が不可欠」との検討会の基本的な考えを示すとともに,「大学間共用試験」などを取り入れた卒業時の到達度の確認や,そのための指導体制における基盤整備の必要性も説いた。
さらに,各看護系大学の関係者へ向けたこれからの課題として,(1)学士課程全体を視野に入れたコア・カリキュラム,(2)学生の看護実践能力の質を保証するための仕組みづくり,(3)実習受け入れ施設との連携の充実と教育の基盤づくりをあげ,大学間の連携と協力が重要になることを示唆した。
日本看護系大学協議会でも検討を
その後,検討会委員の辻本好子氏(ささえあい医療人権センターCOML)と,米本恭三氏(都立保健科学大学長)から「今後の取組みに向けて」と題する発表があり,「報告書」への質疑応答が行なわれた。質疑応答では,「臨床に密着した指導者が必要」「実際問題として,すべての学生を『できる』レベルにまで到達させるためには人材不足であり,医療施設との連携体制もそこまで追いついていない」「卒後研修も大いに視野に入れるべきではないか」などの意見が出された。また,日本看護系大学協議会長を務める新道氏は,「5月末に協議会総会が開かれる。協議会でも事業計画として,報告書をどう扱うかを検討していきたい」と述べた。
●報告書 「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」(目次)
はじめに
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