医学界新聞

 

「第26回国際内科学会議」開催にあたって

Global Physicians Network: A Challenge for the New Century

黒川 清 第26回国際内科学会議組織委員長


 この国際内科学会議では,内科学の科学的知識とその診療への判断や根拠,新世紀を担う内科医の教育研修を推進するとともに,世界各国の内科医の交流ネットワークを形成し,グローバリゼーションの21世紀における臨床医学の国際的な標準化,連携を推進することを重要な目的としました。
 東洋医学と西洋医学の接点になる日本,それも歴史を感じさせる京都で本会議を行なうということで,東西の医学の融合を鑑み,「Global Physicians Network: A Challenge for the New Century」をメインテーマに掲げました。総合内科と内科各専門分野の融合と分化,生命科学の進歩,Evidence-Based Medicineとその実践ワークショップ,ゲノム科学,長寿社会,生命倫理,脳と心,行動と社会,再生医療等の横断的なテーマを主要題目とし,世界のトップレベルの演者の参加を得て,特別講演,シンポジウム等が行なわれます。
 会議の構成は,プレナリーセッション,シンポジウム,ケーススタディ,デモンストレーションコーナー,日本内科学会創立100周年記念展示,商業展示などを企画しています。午前中に各領域の先生方が参加できるセッションを2会場設け,午後には各専門9分野に分かれてのセッションを計画しています。日本語による症例検討セミナー・シンポジウムも開催する予定です。専門分野ばかりでなく,横断的なプログラムが多く組み込まれており,明日を担う内科医に求められる適性,感染症の世界動向,患者の安全と医療過誤,再生医療,高齢化社会,患者管理の質と医療経済,医学医療倫理等について世界最高レベルのスピーカーをお招きしています。
 これらの成果は,国内の広い層の内科医に大きな刺激を与えることはもちろん,その視野を広げることが期待でき,日本における内科学発展,統合化に大いに寄与することでしょう。内科学は専門分野に細分化され,逆にこれらを統合する重要性を強く再認識させられることが多いわけですが,本会議はこのような観点から非常に重要な意義を持つものと思われます。先進諸国,開発発展途上国を含めて,世界の内科医が参集して,内科学の現状を把握し,国際化の21世紀を迎えるにあたって,その進路を論ずることができるのではないかと期待しています。

第26回国際内科学会議
組織委員長 黒川 清


 第26回国際内科学会議が,黒川清組織委員長のもとで,きたる5月26-30日の5日間,京都市の国立京都国際会館において開催される。
 本会議が日本で開催されるのは,1984年以来18年ぶりのことで,今年創立100周年を迎える日本内科学会の記念行事のハイライトの1つとして位置づけられている。

国際内科学会議と日本内科学会

 この会議は国際内科学会(ISIM)が2年ごとに開催する会議(International Congress of Internal Medicine)であり,1948年に準備委員会がスイスのバーゼルで設立され,第1回は1950年,フランスのパリで開催された。
 日本内科学会がISIMに加入したのは1952年で,1954年の第3回会議以降,毎回各分野の代表的な科学者が参加している。その運営に関しても,井形昭弘氏(前鹿児島大学長)が理事長を務めた他,元日本内科学会理事長大島良雄氏,日本内科学会名誉会員日野原重明氏らなどが国際内科学会の役員として活躍してきた。
 特に日野原重明氏の尽力により,「Hinohara-Sasakawa Lecture」が設立され,1990年から2000年の学会までこの特別講演が1つのハイライトとして認識されてきた。
 1984年には織田敏次東京大学名誉教授を会長として第17回国際内科学会議が日本で初めて開催され,国内外から高い評価を受けた。

内科学の変化と国際内科学会

 黒川清組織委員長は,「日本内科学会創立100周年記念:医の調和を求めて-日本内科学会100年の歩みと課題」(『日本内科学会雑誌』)の中で,「医学の進歩は目覚しく,特に内科の専門分野への分化は進み,次第に“内科学会”のあり方,目的が問われるようになってきたのは,日本のみならず世界中の課題であり,国際内科学会もその例外ではなかった。(略)
 高齢化社会,“南北問題”,疾病構造の変化と生命科学の進歩,遺伝子操作技術の進歩と生命倫理など,それぞれの国がそれぞれの問題を抱えながら医療構造,医療制度,医学教育や研修などの課題に取り組んでいる。しかも,高齢化社会,疾病構造の変化,新しい感染症の課題,生命科学の進歩と生命倫理,遺伝子を巡る問題などの大きな問題を抱え,交通と情報の技術の進歩による“国際化”の時代に,国民の期待と要求は限りなく広がる。“EBM”も実はインターネットなどの手段が容易になったからこそ可能になったのであり,このような情報が“どこでも,誰でも(患者さんも,国民も)”手に入るようになると,われわれ医師の診療内容も公開せざるを得なくなる。これらが現在の医学教育改革,研修の義務化,医療事故多発,医療制度改革などへの底流にある」と強調している。
 さらに黒川氏は,「多くの皆さんの参加と協力と得ながら,これからの日本とアジア,そして日本と世界の内科医がプロとして国境を越えた医療と医療人の育成に関わり,貢献していくことこそが社会に対する責任であろうし,この機会に世界に発信し,伝統ある日本内科学会が世界に向かってメッセージを送りたいものと考える」と結んでいる。

◆第26回国際内科学会議事務局
 〒100-0005 千代田区丸の内1-5-1 
 新丸の内ビルヂング6階21区
 TEL(03)5220-3380/FAX(03)5220-3649
 E-mail:26icim@icim.gr.jp
 URL=http://www.icim2002.org


●第26回国際内科学会議 参加者募集中
 5月26-30日/京都市・国立京都国際会館

【主なプログラム】

◆会長講演
黒川清氏(第26回国際内科学会議組織委員長),Joseph Johnson III氏(国際内科学会長)
◆日野原-笹川レクチャー
患者の安全と医療過誤の減少-世界的挑戦(ボストン大 John Noble)
◆プレナリーセッション
(1)幹細胞生物学と細胞移植(スタンフォード大 Irving Weissman),(2)加齢医学の動向(ロチェスター大 William J. Hall),(3)老齢化世界-すべてが縮小していく(カリフォルニア大デイヴィス校Faith Fitzgerald),(4)患者管理の質と医療経済(カリフォルニア大サンフランシスコ校 Lee Goldman),(5)感染症の世界動向(WHO David Heymann),(6)免疫病-研究室から臨床へ(阪大 岸本忠三)
◆シンポジウム
(1)再生医療,(2)医学・医療におけるIT革命,(3)骨粗鬆症の治療と予防,(4)腎障害進展の防止-現在から明日へ,(5)心血管疾患の予防・早期発見,(6)痴呆性疾患の臨床診断と治療,(7)抗生剤耐性菌(ACP/内科専門医会),(8)画像診断の現状と将来,(9)医学・医療における倫理,(10)Helicobacter pylori に関するコンセンサス,(11)進歩する心臓カテーテル診療,(12)関節リウマチの新しい治療,(13)糖尿病の最新の治療,(14)内科領域におけるガイドライン,(15)明日を担う内科医に求められる適性とは何か,(16)血液学の最新トピック,(17)HIVと新興感染症,(18)21世紀における呼吸器疾患の潮流,(19)代替療法の現状と将来,(20)消化器癌-遺伝子よりベッドサイドへ,(21)分子標的療法,(22)CPRとECCの2000年国際基準
◆レクチャー&トピック
(1)COPDに関するガイドライン,(2)ANCA関連血管炎の発症機序と治療,(3)増血幹細胞移植における最近の進歩,(4)アルツハイマー病と前頭側頭痴呆の遺伝学と生物学,(5)ハーブ療法の実際,(6)気管支喘息治療の進歩,(7)食後血糖コントロールの重要性
◆グローバル・フィジシャンズ・ネットワーク
(1)世界各地における自己免疫性肝疾患の有病率と特性の比較,(2)アジアにおける悪性リンパ腫の診断と治療,(3)心筋炎・心筋症,(4)脳血管障害
◆ケーススタディ
(1)特異な症例の発表,(2)酸・塩基・電解質バランス,(3)老人病患者,(4)診断の謎
◆優秀演題発表
内科領域におけるアウトカム研究
◆日本語セッション・シンポジウム
(1)日本における介護保険の現況と今後の展望,(2)日常診療でよく見られる疾患に対する漢方治療,(3)先進的IT技術を活用した地域医療ネットワーク委託事業-電子カルテを中心とした地域医療情報
◆日本語セッション・症例検討
(1)循環器,(2)神経,(3)呼吸器,(4)腎臓,(5)膠原病・アレルギー,(6)消化器
◆一般演題
ポスターセッション約840題