医学界新聞

 

「第26回日本医学会総会」第1回記者発表会開催


 「第26回日本医学会総会」の第1回記者発表会が,さる2月26日,東京の日本医師会館において開催された。
 周知のように日本医学会総会は,日本医学会が日本医師会と協力して,医学および医学関連領域の進歩発展を図り,学術面,実践面から医学における重要課題を総合的に討議することを目的として,4年ごとに開催されている。
 今回は杉岡洋一会頭(前九州大学総長・九州労災病院長)のもとで,2003年4月4-6日,福岡市の福岡国際会議場,他(展示は4月2-8日,マリンメッセ福岡,他)において開催される。
 日本医学会総会は,これまで約100年にわたって東京・大阪・京都・名古屋の4大都市に限って開催してきたが,今回初めて福岡で開催されることになる。また,21世紀初という記念すべき総会となるとともに,2003年は九州大学医学部創立百周年に当たる年でもある。
 記者発表会には,杉岡会頭の他,坪井栄孝日本医師会会長,森 亘日本医学会会長,平野実副会頭(久留米大学長),片山仁副会頭(大東医学技術専門学校校長・前順大学長),名和田新準備委員長(九大教授),永山在明総務委員長(福岡大教授),笹月健彦学術委員長(国立国際医療センター研究所長・九大教授),神代正道登録委員長(久留米大教授)が出席し,今回の医学会総会の意図や準備状況などが発表された。

  


メインテーマは
人間科学 日本から世界へ―

21世紀を拓く医学と医療 信頼と豊かさを求めて

 杉岡会頭は,「今世紀初頭において,医学・医療の最先端を確認し,その行方を十分に見定め,正しい方向づけを行なうことは,人類の未来にきわめて重要なものと考える。すなわち,近年の生命科学の飛躍的な進歩は,ヒトゲノム解析,遺伝子レベルでの医療,ヒト幹細胞を用いた再生医療,そしてクローン人間の誕生さえも可能にしつつあり,その成果が期待されると同時に,生命観や生命倫理の面からも多くの懸念が投げかけられている」と現状を分析。
 また,「生殖医療,臓器移植はすでにヒトの発生から死後の領域に踏み込み,再生医療,人工臓器など多くの福音をもたらすと同時に,いずれも人間を物質と捉える傾向を強めるため,常に人間を見失うことなく,科学の進歩を人類文化の適正な発展に導くことが必須である。一方,少子高齢化など社会構造の激変から,わが国の医療制度にも根本的な問いかけがなされ,利潤や効率では測れない人間の営みとしてのあるべき医療にも多くの指摘がなされ,知性と完成を備えた人間全体を診る信頼と質の高い医療が求められている」と今総会に懸ける抱負を説明した。
 さらに杉岡氏は,今回のメインテーマに「人間科学 日本から世界へ-21世紀を拓く医学と医療 信頼と豊かさを求めて」と掲げた趣旨を,「日本医学の叡智を結集して,新しい未来を切り拓く場としての本総会は,わが国のみならず世界の医学と医療の21世紀に向けての振興に寄与するものと期待される」と解説した。
 今総会で企画されている「学術プログラム」と「総合展示」の主な内容は,以下の通りである。

【学術プログラム】
〔記念講演〕人間としての生と死(京大名誉教授・上田閑照氏)
〔閉会講演〕地球と人類の未来……宇宙に生命は満ちあふれているか(東大教授・松井孝典氏)
〔会頭講演〕21世紀を拓く医学と医療(杉岡洋一氏)
〔特別講演(予定)
(1)佐々木和夫氏(岡崎国立共同研究機構生理学研究所所長).(2)井村裕夫氏(総合科学技術会議議員).(3)柳町隆造氏(ハワイ大学名誉教授).(4)尾前照雄氏(国立循環器病センター名誉総長).(5)杉村 隆氏(国立がんセンター名誉総長).(6)富永祐民氏(愛知がんセンター研究所総長).(7)岸本忠三氏(大阪大学総長).(8)宮下保司氏(東大教授).(9)西川伸一氏(京大教授).(10)位田隆一氏(京大教授).(11)石井威望氏(東大名誉教授).(12)向井千秋氏(NASA).(13)利根川 進氏(MIT教授).(14)高久史麿氏(自治医科大学学長).(15)尾身 茂氏(WHO西太平洋地域事務局長).(16)西澤潤一氏(岩手県立大学学長)
〔特別シンポジウム〕日本の医療の将来
〔柱1〕21世紀医学・医療の使命-疾病の解明とその克服
(1)がん.(2)心臓疾患.(3)血管病.(4)糖尿病.(5)アレルギー.(6)自己免疫疾患.(7)精神疾患.(8)神経疾患.(9)感染症.(10)痴呆.(11)運動器障害.(12)感覚障害.(13)内分泌疾患.(14)脳血管障害.(15)呼吸器疾患.(16)骨粗鬆症
〔柱2〕人間科学と医学
(1)赤ちゃん.(2)思春期(10代).(3)更年期~熟年.(4)老年.(5)寿命.(6)ジェンダー.(7)人間を考える.(8)心の解明と心の医学.(9)ヒト,ロボット,チンパンジー
〔柱3〕医療の改革を目指して
〔柱4〕医学・医療の進歩を世界に向けて
(1)脳と神経.(2)心臓と血管.(3)血液と免疫.(4)癌.(5)発生分化・生殖医療.(6)高齢化社会と医療.(7)ゲノム医科学.(8)細胞内情報伝達・分子細胞医学.(9)感染症.(10)ゲノム創薬・薬理と臨床評価.(11)注目される疾患の病因・病態と治療.(12)検査と診断.(13)治療の最前線.(14)プライマリケア.(15)緩和医療.(16)再生医学と移植医療.(17)精神医学.(18)ロボティクス・遠隔医療.(19)ナノテクノロジー.(20)環境と健康.(21)地域医療と医療行政.(22)看護とチーム医療.(23)社会保障と医療経済.(24)生命倫理.(25)歯学.(26)国際医療協力.(27)医学・医療と教育.(28)IT時代の医療情報.(29)遺伝子診断・遺伝子治療.(30)リスクマネージメント.(31)医学史.(32)人間科学.(33)アジア地域の医学と医療.(34)獣医学と医学の接点.(35)脳とストレス,画像診断の進歩,脊柱靭帯骨化症の成因と治療,輸血医療の進歩と課題,21世紀のリハビリテーション,産業衛生等
〔柱5〕医療フロンティア:何を,どこまで,何で,治せるか?
(1)大腸がん.(2)胃がん.(3)肝がん.(4)血液がん.(5)脳卒中.(6)糖尿病.(7)心筋梗塞.(8)リウマチ
〔その他〕テーマシリーズ,市民公開講座
【総会展示】
 高橋成輔展示委員長(九大教授)のもとに行なわれる総合展示のテーマは,「社会が育てる医学と医療」。総会登録者を対象とする「学術展示」(マリンメッセ福岡,他)と一般市民向けの「公開展示」(福岡ドーム,他)の2種類がある。
■学術展示(テーマ=現代医療の光と影)
(1)Human Science-人間科学
(2)Human Service-機器・サービス
(3)Human Security-環境・世界
■公開展示(テーマ=みんなで創る健康社会)
[第1展示]人間を科学する-ヒトはどうなっているの
[第2展示]支え合う暮らし-誰もが気持ちよく暮らすために
[第3展示]共生の未来-安心・安全・納得の社会へ
[第4展示]コミュニティ・ドーム:市民と医療関係者の対話の場

●事前登録受付中
 第26回日本医学会総会事務局では,2002年4月より事前登録の受付を開始している。詳細は下記まで。
◆第26回日本医学会総会事務局:
〒812-8582 福岡市東区馬出3丁目1番1号 九州大学大学院医学研究院内
 TEL(092)643-7501/FAX(092)643-7502
 URL=http://www.isoukai.com/