医学界新聞

 

インフォームド・コンセントの意義を論議

第29回日本集中治療医学会が開催される


 さる2月28日-3月2日の3日間,第29回日本集中治療医学会が,平川方久会長(岡山大大学院)のもと,「生命(いのち)の世紀,21世紀の集中治療」をテーマに,岡山市のホテルグランヴィア岡山,他で開催された(2479号に既報)。
 今学会では,「(1)20世紀の生命科学と先端医療技術を駆使した医療,(2)インフォームド・コンセント(以下,IC),プライバシーの保護を基点においた,人間性を尊重した医療,(3)限界をわきまえた医療,(4)安全な医療が,21世紀の集中治療である」との平川会長の考えのもと,特別講演3題をはじめ,基調講演7題,教育講演9題の他,シンポジウム17題,ワークショップ5題を企画。なお,一般演題は医師・看護・臨床工学技士部門から512題の発表が行なわれた。本号ではこれらの中から,特別講演「患者・家族が医療に望むこと」(ささえあい医療人権センターCOML 辻本好子氏)を受けて行なわれた,シンポジウム「ICの諸問題」(写真)における話題を報告する。


自らが選択できる医療であるために

 特別講演で辻本氏は,COMLに寄せられた電話相談の内容を紹介。その上で,消費者が考える医療とは,「確かな医療技術に支えられた,安全で安心と納得のできる医療」であると指摘。また,そのためにはコミュニケーションを重視した個別性の尊重と医療情報の提供が不可欠とし,「消費者自らが選択できる医療であることが望ましい」と伝えた。また氏は,「病気が治らなくても支払いをしなければいけないのか」という相談があったことを報告するとともに,「医療側と患者・家族の間に流れる大河には,双方からの架け橋が必要」と訴えた。

多方面から考えるIC

 辻本氏をコメンテーターに迎えて行なわれたシンポジウム「ICの諸問題」(座長=名大病院看護部 三浦昌子氏,岡山大 太田吉夫氏)には,看護師の立場から梶清友美氏(岡山大病院看護部),医師の立場から真弓俊彦氏(名大),患者の立場から菅俣弘道氏(医療事故被害者),リスクマネジメント担当者の立場から安田信彦氏(学校法人慈恵大学),法律家の立場から菊元成典氏(リード法律事務所)の5人が登壇。
 梶清氏は,「ICとは,日々の看護行為の中に求められている患者と家族の願いである」などを,集中治療現場での看護に関するICの特徴にあげ,症例を通した援助のあり方や看護師の役割について述べた。真弓氏は,「医療従事者のICへの認識はまだ十分とは言えない」として,名大におけるICの質の向上をめざした活動を報告。1977年の「メンタルサポートを考える会」,2000年の「IC委員会」の設立経過とともに,「患者の権利章典」の作成に至る経緯を解説。さらなる整備として,「医療支援専門員」や「リエゾンチーム」の必要性を強調した。
 また,医療事故で愛娘を亡くした菅俣氏は,「患者側の積極的な医療参加が安全な医療となる。再発防止のための信頼関係を構築するためにも十分なICが必要」と述べた。一方,安田氏は,(1)患者との信頼関係の強化,(2)患者の安全対策への参加促進,(3)説明義務を遂行することがICの「リスクマネジメント上の意義」と提示。「画一的ではない,患者・家族の理解度に合わせた説明が重要」と強調した。菊元氏は,医療訴訟の判例をもとに,「説明義務違反」の観点からその実態を報告した。