医学界新聞

 

チーム医療をさらに発展,向上させるために

第36回「糖尿病学の進歩」が開催される


 さる2月22-23日の両日,第36回「糖尿病学の進歩」が,河津捷二世話人(埼玉医大総合医療センター)のもと,「血糖値の正常化をめざして」をテーマに,さいたま市の大宮ソニックシティで開催された。
 今回の「糖尿病学の進歩」では,医師・コメディカル向けのレクチャーが15テーマ(19題),シンポジウム2題,セミナー1題,コメディカル向けとしてレクチャー13テーマ(24題),シンポジウム・セミナー各1題,また医師向けにはレクチャーが14テーマ(24題),シンポジウム2題,トピックス1題が行なわれた。その他,ランチョンレクチャーが6題,イブニング・ナイトレクチャー各1題,さらに糖尿病市民公開講座として「ひとごとではない,糖尿病」(総合司会=河津世話人)が企画された。
 本号では,これらの中から,昨年初めて誕生した「日本糖尿病療養指導士」に焦点をあてたレクチャー「日本糖尿病療養指導士への期待と認定機構のあり方」(東京都済生会向島病院 北村信一氏),および「糖尿病療養指導の向上をめざして」のレクチャーから,数少ない看護職講演の1つである「患者教育成功の秘訣」(日赤看護大 河口てる子氏)を中心に報告する。


糖尿病療養指導士の課題を提示

 北村氏は,レクチャーで「糖尿病とその合併症の増加を防ぐための治療の重要な分野である療養指導に携わる有能な療養指導士を養成し,患者の健康維持と福祉向上をめざす」目的で誕生した「日本糖尿病療養指導士」の認定機構に関し,これまでのいきさつを報告。
 また,昨年実施された第1回認定試験が行なわれた結果,4342人(合格率84.2%)が初の糖尿病療養指導士(CDE)となったが,「その多くが,看護師および栄養管理士であった」と述べた。今後,年1回の認定試験が行なわれるが,第2回試験(本年3月10日に試験実施)の結果,合計で6000名を超えると予測。そうした場合,日本人の糖尿病患者数(約700万人)から,患者1167名に対しCDE1人になると算出される。一方,1986年から養成が始められたアメリカでは,1万1000人のCDEが存在し,患者比は818人に1人となる(患者数約900万人)ことを報告した。
 さらに,CDEの今後の問題として,数の分布に地域差があることを指摘するとともに,(1)療養指導技能向上の継続研修,(2)医療法遵守の療養指導,(3)パイオニア精神での活動,(4)CDEの生涯教育,(5)合併症防止貢献の結果を出す,をあげた。
 一方で認定機構の今後の問題としては,(1)「合併症防止」の目的に叶う認定レベルの模索,(2)地区CDE(認定機構以前から,都道府県単位の日本糖尿病協会が独自に認定をしている資格者)との統合問題,(3)CDEの研修と活動支援,(4)認定機構の健全運営などをあげた。その上で氏は,「すべては日本の糖尿病患者の健康と福祉のためにという心を持ち,合併症防止の結果を出して社会的評価を高めよう」と結んだ。

糖尿病患者の行動変容を支える

 「糖尿病療養指導の向上をめざして」のレクチャーでは,チーム医療や教育カリキュラムをテーマとした講演に加え,河口氏が「患者教育成功の秘訣」をテーマに登壇。
 氏は,「指導を守らない患者へのストレスから不満と不信が生ずる。また,患者は『看護師さんの言うことはわかるけど』と言いながらも,できないことが多い。そのような患者を相手にした時に,無力感や不安が起こる。医療者としてのジレンマから,看護師はバーンアウトし職場を辞することもある。一方で,患者も『自分はだめな患者』と追い詰められ,心を閉ざしてしまう」として,熱心な指導者に起こりがちな「医療者の指導悪循環型」を指摘。
 その上で,患者の行動変容の段階について解説。患者には熟考期があり,その後に「医療者の受容的雰囲気が最重要」となる学習意欲を感じる準備期,さらにそれを経て行動期に移るとし,期ごとの患者教育への支えとなる具体的な方策を提示した。
 なお,まとめにあたり氏は,「最初から100%をめざすのではなく,課題を小さくして成功体験につなげるような段階を踏むこと。つらい患者の気持への共感を伝えることが大切。そのためには看護職が糖尿病に対する正しい知識をたくさん持っていることが重要」と述べた。
 なお,この他にも「日本人の糖尿病の特性:1型,2型糖尿病」や,さまざまな糖尿病合併症における最新情報なども報告。さらに,「糖尿病診療ガイドライン」や「健康日本21の推進」など,看護職に必要とされる数多くのレクチャーが企画された。