医学界新聞

 

「生命(いのち)の世紀,21世紀の集中治療」

日本集中治療医学会(看護部門)開催


 さる2月28日-3月2日の3日間,第29回日本集中治療医学会が,平川方久会長(岡山大大学院)のもと,「生命(いのち)の世紀,21世紀の集中治療」をテーマに,岡山市のホテルグランヴィア岡山,他で開催された。
 今学会では,特別講演(1)「生と死とユーモア-患者のQOLを考える」(上智大 アルフォンス・デーケン氏),同(2)「Pediatric Intensive Care:Past,Present and Future」(カナダ・トロント大 Geoffrey A Barker氏),同(3)「患者・家族が医療に望むこと」(ささえあい医療人権センターCOML 辻本好子氏)をはじめ,基調講演とシンポジウムの組み合わせや,双方向による会員参加型のワークショップなどを,医師部門・臨床工学技士部門との合同セッションとして看護部門に位置づけ,「チーム医療による集中治療」を意図した企画が特徴となった。
 看護部門では,基調講演「米国におけるリスクマネジメント」(米・ワシントンProvidence Hospital Deborah Morrison Gill氏)や,教育講演(1)「現場の看護実践を見直そう」(聖路加看護大 菱沼典子氏),同(2)「臓器移植患者と家族のスピリチュアリティ-アメリカにおける現場での取組みから」(岡山大 林優子氏),同(3)「Competency:A Mechanism for Risk Reduc-tion」(米・ワシントンProvidence Hospital Byron G.Atkinson氏)の他,基調講演を受けて開かれたシンポジウム「看護におけるリスクマメジメント」(座長=愛知医大病院看護部 高木三保子氏,慈恵医大 安田信彦氏)をはじめ,9題のシンポジウムなどが企画された。本号ではこれらの中から,シンポジウム「感染院内サーベイランスの現状と今後の課題」を中心に報告する。
 なお,次号(2480号)に続報を掲載する。


■院内感染の現状と将来を議論

 シンポジウム「感染院内サーベイランスの現状と今後の課題」(座長=富山医薬大病院看護部 境美代子氏,名大大学院 武澤純氏)では,(1)院内感染対策におけるICN(感染管理看護師)の役割(岡山大病院看護部 渡邉都貴子氏),(2)厚生労働省「院内感染対策サーベイランス事業」について(国立感染研 荒川宣親氏),(3)国立大学病院感染対策協議会サーベイランスについて(弘前大病院看護部 安田文子氏),(4)国立大学病院集中治療部協議会ICU感染対策ガイドラインについて(東北大病院 松川周氏),(5)厚生労働省「院内感染サーベイランス事業・ICU部門」からの報告(武澤純氏),(6)厚生労働省の院内感染対策(救急振興財団救急救命九州研修所,前厚生労働省医薬局安全対策課 佐藤敏行氏)の6演題が報告された。

ICNの役割と課題

 (1)では,ICNの役割として「サーベイランスの結果に基づくケア・処置の手順の見直しと感染防止実践の強化」などの患者ケアや,「医療従事者への感染症伝播の予防」などの職員保健に加え,「あらゆる職種の継続的教育と訓練」などの教育の必要性を強調。また,コンサルテーション,感染対策委員会への情報提供,感染管理チームメンバーとの協働,施設間・公的機関などの対外的対応などもその役割にあげた。
 その上で,「新興感染症,多剤耐性菌,バイオテロリズムなど,世界的レベルでの感染症の取組みや,病院中心の医療から,在宅医療への変化に対応する感染管理,実務者から専門家への役割転換」などを21世紀の課題とした。
 また(2)では,日本国内と欧米で問題となりつつある薬剤耐性菌や耐性菌の将来的な動向予測を紹介。日米間の違いから画一的な対策が難しく,日本独自の対策を考慮する必要性が指摘された。(3)では,2000年10月に設立された国立大学病院感染対策協議会の活動とともに,42大学から76名が参加した研修会におけるアンケートの結果を報告。その上で,診断基準・統一サーベイランスの意義の明確化,体制作り,他組織との連携・協力を今後の課題にあげた。

統一ガイドライン作成の可能性

 さらに(4)では,米国CDC・欧州ガイドラインを参考として策定されたCPG(clinical practice guideline)の概要が示された。また,今後の課題としては米国CDCを参考とした日本レベルでのデータを出すこととし,CDCに倣った国家中枢機関設立の必要性が強調された。(5)では,厚生労働省(以下,厚労省)の科学研究である「薬剤耐性菌の発生動向のネットワークに関する研究」ICU研究部門の報告が行なわれた。
 一方(6)では,厚労省の今後の院内感染対策の方針として,院内感染対策サーベイランス事業の拡充,院内感染対策「総合的ガイドライン」の作成に加え,医療監視制度の連携,院内感染に対する正しい知識の普及などをあげ,「一般の人がわかるガイドライン作り,国立大学病院感染対策協議会との協力のもと,研究部門と文部科学省,厚労省との連携の必要性」が指摘された。
 また総合討論の場では,施設内外でのICNの権限や,国家中枢機関設立の意義などについて,フロアを交え論議された。
 なお,次回は明年2月4-6日に,剣持修会長(北大)のもと,札幌市のロイトン札幌をメイン会場に開催される。

シンポジウム「感染院内サーベイランスの現状と今後の課題」,右より座長の武澤氏,境氏,演者(発言順)

●お知らせ
 本紙では,本年3月1日より施行された「保健婦助産婦看護婦法の一部改正」に伴い,これまでの看護婦・士等の名称を,適宜,看護師,保健師,助産師,准看護師と称することとした。