医学界新聞

 

日・中・韓における腎不全看護の現状と課題を論議

第4回日本腎不全看護学会が開催される


 第4回日本腎不全看護学会が,さる11月24-25日の両日,宇田有希会長(眞仁会顧問)のもと,「新世紀の腎不全の看護-基本・連携・主張」をメインテーマに,横浜市・みなとみらい地区のはまぎんホール「ヴィアマーレ」で開催された。
 今学会では,会長講演「新世紀の腎不全の看護-基本・連携・主張」の他,教育講演 I「看護婦さんのための医療経済学入門-透析医療経済を中心に」(横浜第一病院名誉院長/関東学院大 日台英雄氏),同 II「コミュニケーションの原点-相互理解の深まりを求めて」(中央大 岸信行氏),および国際シンポジウムと位置づけた,「日・中・韓における腎不全看護の現状と課題」が行なわれた。なお,開催前日の23日には,同学会主催による市民講座,「元気で長生き,PPK(ピンピンコロリ,元気に生きて生を全うする)のコツ!」が,昇幹夫氏(産婦人科医/「日本笑い学会」会長/「元気で長生き研究所」所長)によって行なわれた。

専門領域としての腎不全看護

 会長講演を行なった宇田氏は,「医療事故発生は,高度の技術が要求される場で起こるのではなく,そのほとんどは初歩的なミスによるもの」とし,透析医療における重篤な事故発生は372件(2000年)と報告。そのうち死亡または生命を脅かす事故は246件(66.1%)で,最も多いのは「針刺し事故」であったことを明らかにした。
 また氏は,腎不全(透析)看護は専門領域の看護であるとして,患者サービス,健康観・倫理観,ホスピタリティ,生命倫理などは専門看護婦の視点で捉えていく必要性を述べた。さらに,今後育成されるであろう腎不全専門看護婦に必要な基本的知識に,ケアの質のアセスメント,移植免疫学・臓器移植の理解,患者・スタッフの教育,情報の収集と管理など10項目をあげた。
 なお,氏はまとめにあたり,日本透析医学会などの関連学会や看護系学会との連携を密にしていくこと,近隣諸国との相互交流が,今後の腎不全看護を担う「学会の役割」と述べた。

今後の相互連携に期待が

 江川隆子(阪大),伊野恵子(聖路加レジデンス)両氏の司会のもとに行なわれた国際シンポジウム(写真上)には,韓国から朴仙美氏(大韓看護協会腎臓看護分野会長,写真右より2人目),中国から任建華氏(北京協和医院血液浄化中心技師長,写真右より3人目),そして日本からは水附裕子氏(横須賀北部共済病院,写真左より2人目),さらに日本側のコメンテーターとして,波多野照子氏(済生会八幡総合病院,写真左端)が登壇。
 朴氏は,韓国のこれまでの腎臓看護分野の歴史や,「腎臓看護師」(1695名)の役割,業務,資格などを紹介。任氏は,50万人とされる中国の透析患者の一般的な現状や,透析センターにおける業務などを報告した。一方水附氏は,20万6000人(2000年)を超えた日本の慢性透析患者や,3万人を超える透析看護婦(専従者は約2万5000人)を取り巻く現状などを述べた。総合討論の場では,各国の課題が提示され,今後も連携を図ることが確認された。