医学界新聞

 

「医療の質の向上をめざして」をテーマに

第2回日本クリニカルパス学会開催


 第2回日本クリニカルパス学会が,さる11月21-22日の両日,古庄巻史会長(市立岸和田市民病院)のもと,大阪市の大阪国際交流センターで開催された。
 同学会は,昨年11月に,「患者ケアの質的向上と効率化を追求するための効果的手段として,クリニカルパスへの関心が高まっている」として,「チーム医療によるクリニカルパス手法のさらなる普及をめざし,患者中心の医療・ケアにより貢献したい」との趣旨のもと,須古博信氏(済生会熊本病院長)を理事長に,山嵜絆氏(東京都済生会中央病院副院長)を副理事に選出し,誕生した。なお同学会は,「臨床現場における具体的なクリニカルパスの導入・運用,および改善を支援することを目的とする」と会則に掲げている。


盛りだくさんの内容とあふれる参加者

 「医療の質の向上をめざして」をメインテーマとした今学会では,会長講演「最前線病院におけるクリニカルパス」をはじめ,特別講演1「チーム医療を支えるシステム」(同学会名誉理事/聖路加国際病院理事長日野原重明氏),同2「EBMとクリニカルパス」(京大 福井次矢氏),教育講演1「パスで病院はどう変わるか」(東医歯大 阿部俊子氏),同2「クリニカルパスとリスクマネジメント」(九大 鮎澤純子氏)の他,シンポジウム1「パス導入を成功させるには」(司会=市立岸和田市民病院 山中栄治氏),同2「パスとチーム医療の推進」(司会=国立南和歌山病院長 森脇要氏,写真1)や,パネルディスカッションが「カルテ・記録とパス」(司会=聖路加看護大 岩井郁子氏),「パスと医療の標準化」(司会=須古理事長)など3題,さらにワークショップが5題企画されるなど,盛りだくさんの内容であった。
 また,看護職を筆頭に医療関係者が一堂に会した今学会には,設立2年目にかかわらず一般演題発表(口演,ポスター)は270題を数えた。なお,参加者も当初の予想を大幅に超える2700人となり,主会場をはじめ満席となる会場が相次ぎ,急遽会場ロビーにモニターTV設置するなどで対応した(写真2)。古庄会長は,開・閉会の挨拶で,参加者数の見込み違いを詫びるとともに,予想外の反響に,「学会設立1年で,新生児期から一気に乳児期に成長した。今後もパスが乳児期から幼児期,学童期に成長することを期待したい」と述べた。

クリニカルパスとチーム医療

 特別講演を行なった日野原氏は,「クリニカルパスは一貫した流れだが,患者の病気回復へ向けた意欲を持たせるものでなくてはならない。無味乾燥なモノにしないためには,チームの各員が,感性を持ってチーム医療にあたる配慮が必要」と述べるとともに,「患者の痛みがわかる医療者育成」の重要性を説いた。
 また福井氏は,EBMとクリニカルパスとの関連に言及し講演。EBMに則ったクリニカルパスの有効性を提示した上で,「クリニカルパスやガイドラインが普及することにより,考えなくなる医療者が増えるのではないか,との危惧があるが,そのためにも教育の段階より,エビデンスを使うことから,エビデンスを作ることへの転換が必要になろう」との見解を示した。
 教育講演を行なった阿部氏は,「医療の標準化は,患者中心の医療に必要」とした上で,これまでの患者の「おまかせ医療や見えなかった医療」から,「医療の消費者は患者」としての参加型へと医療は転換すると指摘。今後の課題に,国レベルでのガイドライン作成,標準化で報われる診療報酬,情報開示,などをあげた。
 なお,シンポジウム2では,藤堂彰男氏(西神戸医療センター),花見ゆかり氏(松下記念病院),岡利一郎氏(滋賀医大),笠原善郎氏(福井県済生会病院),伊藤公一氏(伊藤病院)の5名が登壇。それぞれの施設におけるクリニカルパス導入の経緯や,メリット,ならびに問題点などが報告された。
 次回は,明年11月22-23日の両日,山嵜副理事を会長に,横浜市のパシフィコ横浜で開催される。