医学界新聞

 

これからの医療はどうあるべきか?

セミナー「米国臨床留学への道」開催


 さる11月24日,東京の女子栄養大学にて日米医学医療交流財団と野口医学研究所の共同主催による第2回のセミナー「米国臨床留学への道」が開催され,米国への臨床留学に関心を持つ医学生・研修医を中心に多数の参加者を集めた。今回は,特に「日本の医療改革と日米医学交流の果たす役割」をメインテーマに掲げ,単に,米国への臨床留学事情を紹介するだけではなく,患者を講師として招いたり,厚生労働省やマスコミ関係者の講演から,医療改革のあり方を討議するなど,ユニークな試みも行なわれ,興味深いものとなった。

 

 5部構成で行なわれた本セミナーでは,前半に第1部「米国臨床研修者の見た日本の医療の現状」,第2部「医学生,研修医の見た米国の医療の現状」,第3部「指導医が医学生,研修医に求める課題」が組まれ,米国にポストを持つ医師や臨床留学経験者などを講師に,日米医療の比較や臨床留学の最新事情について報告が行なわれた。
 一方,後半は趣をあらたに,これからの医療のあり方を考えさせる企画が用意された。第4部「患者が求める医療の理想像」では,患者が自分自身の医療体験から,参加者に対してあるべき医療者の姿を語り,第5部「日本の医療の現状と将来」では,厚生労働省の伊澤知法氏(医政局総務課課長補佐)が「厚生労働省の考える21世紀医療政策」を,NHKの飯野奈津子氏(解説委員)が「日本の医療政策の課題」をそれぞれ講演した。

よい医療を評価する仕組みが必要

 その中で伊澤氏は,日本の医療提供体制の効率化に触れ,特に人口あたりの病床数の多さ,医療施設の機能の未分化などの問題を指摘した。また,飯野氏は医療改革をめぐる最近の動向を報告し,「改革の重要な側面は財政問題だ。欧州で導入されている医療費の伸び率管理制度を導入するかどうかが,大きな争点となっている」と指摘した。
 さらに飯野氏は「質の高い医療を望むなら,国民はもっとお金を払わなければならない。どれだけのお金を公的な医療に使うか,混合診療を認めるかなど,『お金と医療』の問題をどうするのか,私たちは選ばなければならない時期にきている」との考えを提示。同時に,日本の病院をよりよく変えるためには,まずは情報分析が不可欠であり,診療報酬なども含めて,「よい医療は評価される仕組みにしていかないと,日本の医療に活力がなくなってしまう」と述べた。

患者さんの思いを大切に

 第1-5部のプログラムの後には,米国日本人医師会長を務めるロイ・芦刈氏(ニューヨーク医科大)による基調講演「日米医療の相違を踏まえた医学交流のあり方」,および,セミナー全体の締めくくりとなるパネル討論「国際化社会に求められる良医を育てる」が企画され,芦刈氏の他,尾島昭次氏(岐阜大名誉教授),佐藤隆美氏(トーマスジェファーソン大),加我君孝氏(東大),亀田信介氏(亀田総合病院),Gerald Stein氏(ハワイ大)が加わり,フロアとの間で活発な討議が行なわれた。
 最後に,企画進行役を務めた青木剛和氏(トーマスジェファーソン大)が,「本日,一番胸に残ったのはやはり,患者さんの生の言葉ではなかっただろうか? 私たちはこの患者さんの思いを大切にしていかなければならない」と挨拶をし,熱のこもったセミナーの幕を閉じた。