医学界新聞

 

「第1回CRCと臨床試験のあり方を考える会議」開催


 「1998年新GCP施行後の臨床試験」「CRC-新しい医療職種の誕生」が現在,医師,看護職,薬剤師などの間で注目されるキーワードである。(1-2面参照
 臨床試験・臨床治験をめぐる日米欧の三極での基準の統一化(ICH-GCP)という流れの中で,わが国においても新GCPが1998年より完全に施行され,これまでとは一変した臨床試験・臨床治験が求められるようになった。そして,その中心的担い手となる臨床試験コーディネーター(Clinical Research Coordinator:CRC)に対する研修・育成・認定が現在,急ピッチに推進されている。
 そのような折り,さる10月6-7日の両日,「第1回CRCと臨床試験のあり方を考える会議(2001 in 別府)」が,別府市のビーコンプラザにおいて開催された。


「CRC」と「臨床試験」に注がれる熱い期待

 日本臨床薬理学会,日本看護協会,日本病院薬剤士会,日本薬剤師研修センター,日本製薬工業協会の主催のもとに開かれた同会は,第1回にもかかわらず,関係者の予測をも大きく超えて約800名の参加者が参集し,あらためて「CRC」と「臨床試験」に対する関心の高さが示された。
 今回の世話人代表は,この間の流れを積極的にリードしてきた中野重行氏(大分医大教授・臨床薬理学)。
 ここ2-3年,上記各団体はそれぞれ別個に,臨床試験に関わる時代的要請に応えて,厚生労働省や文部科学省などの全面的バックアップをも受けてCRCの研修・育成・認定を行なってきたが,このほどこれら関連5団体が初めて一堂に会し,CRCと臨床試験に関わる諸問題を幅広く議論する場となったもの。

日本臨床薬理学会が「認定CRCのための研修ガイドライン」を公表

 会議には,第一線の現場に立つCRCをはじめとして,今後臨床試験を担っていく看護職,薬剤師や治験責任・協力医師,各病院の施設内治験審査委員会関係者,日本製薬工業協会,傘下の医薬品メーカー臨床試験関係者,文部科学省・厚生労働省関係者,法曹関係者,患者・被験者,米国CRC関係者などが参加。現在急速に進んでいる臨床試験とCRCについて熱心な討論が展開され,国公立病院代表・私立病院代表や開業医も交えて今後の展望が探られた。
 一般演題は,臨床現場の報告や問題点の指摘,提言など48題。シンポジウム「CRCの育成と認定」,パネルディスカッション「CRCからみた臨床試験の現状と問題点」,ワークショップ「よりよき臨床試験のあり方を求めて」などの他,教育講演,特別講演,セッションなど,多彩かつ活発な発表・講演が行なわれた。
 なお,今回の会議の中で,日本臨床薬理学会によって「認定CRCのための研修ガイドライン」が公表されたことは,特筆すべき一大事項と言えよう。

「EBM確立」に向けて

 患者・被験者のベネフィットを最終的な目標においた「臨床試験・臨床治験」は,これからますます発展することが予想されるが,さまざまな領域の医療従事者が一堂に会した本会議は,そのための大きな一歩を刻することになった。
 従来,わが国の臨床試験・臨床治験は,ともすれば欧米に依存する傾向が多かった。特に,医学・医療関係者の中には,「この動向が,わが国においてEBM(evidence-based medicine)の不在をもたらしている」との自省の声も聞かれている。このような現状を大きく変化させる意味でも,この第1回会議は意義あるものとなったと言えよう。
 同会の第2回会議は,2002年10月に小林真一氏(聖マリアンナ医科大学薬理学教授)を世話人として横浜市で開催される。