医学界新聞

 

第9回「総合リハビリテーション」賞授賞式開催


近赤外線分光法による筋内酸素動態測定法の臨床応用研究が対象に

 第9回「総合リハビリテーション」賞〔主催=(財)金原一郎記念医学医療振興財団,後援=『総合リハビリテーション』編集室〕が,木村美子氏(産業医大病院リハビリテーション部)・他による「近赤外線分光法を用いた運動時の外側広筋内酸素動態の測定-再現性および筋仕事量,全身酸素摂取量との関係」(『総合リハビリテーション』28巻8号掲載)に決定。その贈呈式がさる9月25日,東京都・文京区の医学書院の本社会議室で開催された。
 木村氏の受賞論文は,近赤外線分光法による筋内酸素動態の測定法を臨床応用しようとするもの。筋活動のエネルギー消費,エネルギー効率や筋疲労などに関して,本方法論の確立によって論じうる領域が拡大されるものと期待され,論文の独創性,着実な展開,今後の将来性が評価された。
 選考委員を代表して,編集委員の千田富義氏(秋田県立リハセンター)が,「本研究では,運動によって増加するデオキシヘモグロビンが元に戻る回復時間を指標として,その再現性,筋仕事量との関連,全身酸素摂取量との関係を分析して,測定尺度としての信頼性・妥当性を検討することが中心となっているが,それぞれの関係がスマートな形で抽出されており,興味深く,意義がある」と選考過程,受賞理由を説明。

理学療法士が初の受賞

 引き続き開催された祝賀会では,編集委員会を代表して伊藤利之氏(横浜市総合リハセンター)が,「本賞は広くリハビリテーション関連分野における研究活動を促進し,特に若い研究者を育てたいという目的で作られたもの。その趣旨にふさわしく,これまで医師だけでなく,看護職,作業療法士,臨床心理,体育などの種々の職種の方が受賞されているが,リハビリテーション医学における代表的な職種の1つである理学療法士の方の受賞はこれまでなく,今回が初めてであることは特に意義深いことと思う」と,本賞の創設者である上田敏氏(同紙編集顧問)のメッセージを代読。続いて「今回の授賞は,編集同人のご意見も広く聞いた上で編集委員会で決定したもので,20世紀を締めくくる記念すべき年の受賞者が理学療法士の方であったことは,たいへんうれしく思う」と祝辞を結んだ。
 これを受けて木村氏は「もちろん私にとって第一は臨床である。しかし,研究をするにも恵まれた大学病院という環境で働いている以上は,研究は権利でもあるが『義務』であると捉えている。何らかの形で研究をして,その結果を,臨床に追われて研究ができない方たちに還元していくことが私たちの仕事だと思って,共同執筆者の方々と協力して研究を続けている」と,臨床現場での研究の意義を強調。
 同時に「就職以来,研究テーマとしてきた『体力』に関連して,近赤外線分光法測定の器械を知り,集めたデータがこの『総合リハビリテーション賞』という形で実を結んだことは,本当に光栄に思っている。今回の受賞を機に,これからもさらに臨床と研究を両立させながら,多くの方々によいデータを提供できるよう,EBMを主体にして研究を続けていきたいと思う」と謝辞を述べた。
 『総合リハビリテーション』誌の創刊20周年を記念して設けられた同賞は,同誌に掲載された全投稿論文を対象に,最も優れた論文を表彰するものである。来年も引き続き,同誌に掲載された論文の中から次回の「総合リハビリテーション」賞が選考される。