医学界新聞

 

「患者主体の医療と診療情報管理」を論議

第27回日本診療録管理学会開催


 第27回日本診療録管理学会が,さる9月6-7日の両日,大道久会長(日大)のもと,「患者主体の医療と診療情報管理-医療の科学性と透明性をめざして」をメインテーマに,東京・台場のホテル日航東京において開催された。
 今学会では,会長講演「医療の科学性をめざした診療情報管理」をはじめ,特別講演「米国の診療録記載および管理から学ぶべきもの」(秀明大医療経営学 廣瀬輝夫氏),教育講演「EBMと医療記録」(徳島大 久繁哲徳氏),シンポジウム「患者主体の医療と診療情報管理」(座長=済生会神奈川病院 山本修三氏)を企画。また,要望演題として「医療の質および効率向上への診療情報の活用」(座長=日大 梅里良正氏),「医療の安全への診療情報の活用」(座長=日大 寺崎仁氏)の2題,および一般演題は,「退院時サマリー」や「診療記録の開示」など14群,3題(要望演題各4題含む)が発表された。
 本号では,メインテーマに沿ったシンポジウムの概要を報告する。


診療情報の共有化が話題に

 本シンポジウムでは,「患者主体の医療を追求する中で,医療記録や診療情報が望ましい医療の実現にどのように寄与できるのかなど,最新の成果を踏まえ,今後の展望に向け討議したい」(山本氏)との意向により,只野寿太郎氏(佐賀医大),森功氏(八尾総合病院),伊藤伸一氏(総合大雄会病院),瀬戸山元一氏(高知県・高知市病院組合)の4氏が登壇。
 只野氏は,「診療録は,論文と同じで後世に残るもの」とした上で,「診療情報の共有と記録の質向上のためには,中央管理による1患者1診療記録や診療録と看護記録の一体化は有効な手段」と強調。また,「科学的記録を担保するためには,診療情報管理士の配置が必要」と指摘し,「安全,情報開示や法的な視点を含めた,具体的な望ましい記録のあり方を検討する必要がある」と述べた。さらに,「医師-看護職の信頼関係をチェックすることも診療情報管理士の大切な役割である」と,今後の医療において,診療情報管理士が重要な役割を担うことを示唆した。
 また森氏は,日・独の医療事故対策に触れるとともに,懲罰ではなく,教育と安全管理のために独自に制定した「医真会医療審判制度」を紹介。実際に,医師の業務を停止させたことなどを報告し,「形式だけでなく実態を示すことが重要」と述べた。
 伊藤氏は,「誰が見ても理解できる診療記録をめざす」べく,医療の質向上に向けて情報公開を推進するための診療録整備を図った経過を報告。カルテチェックを点数化するなどの新しい取り組みを紹介するとともに,「診療録は,患者と医療提供側共通の記録であり,両者の信頼関係と医療の安全性確保に資するものと考えられる」と述べ,継続的なカルテチェックシステムの構築と,標準化された電子カルテの導入を今後の課題であるとした。
 瀬戸山氏は,21世紀医療のキーワードに,(1)患者中心,(2)情報開示,(3)安全管理,(4)市場原理,(5)IT革命をあげ,「待たせない,持たせない,わかりやすい」医療サービスの実践にあたり,全国に先駆けて行なった島根県立中央病院での「電子カルテ」の導入などの試みを紹介した。また氏は,情報開示の基本条件として,(1)患者の視点での診療,(2)患者の診療参加,(3)自己選択,(4)診療情報の共有化をあげ,診療情報の2次利用や医療継続のための連携として,患者の視点での医療情報ネットワークシステムの構築の必要性を説いた。
 総合討論の場では,医療審判制度や情報の共有化などが話題となったが,山本氏は「情報の共有化は何でも見せればよいというのではなく,患者にとって必要なものを選択する必要はある」と述べた。