医学界新聞

 

「からだ」のわかる看護の探求をテーマに

第6回聖路加看護学会学術大会開催


 さる9月29日,第6回聖路加看護学会学術大会が,菱沼典子会長(聖路加看護大)のもと,「『からだ』のわかる看護の探究」をメインテーマに,東京・築地の聖路加看護大学において開催された。
 今学会では,会長講演「私たちが出会う丸ごとの『からだ』」(菱沼氏)をはじめ,シンポジウム「からだを診る・見る・看る」(座長=聖路加国際病院 高屋尚子氏,聖路加看護大 香春知永氏)を企画。また,事例検討が「患者・家族が真に医療者に求めるものは」(聖路加国際病院 竹田佳代氏)など2題,話題提供として「ベッドの居間化」(聖路加看護大 小澤道子氏)など2題が行なわれた他,一般演題12題が発表された。

「形態機能学」と「丸ごとの“からだ”」

 菱沼会長は,「疾病の診断・治療を主目的とする医学においては,人体を細分化し解剖・生理学的に身体を見ることに間違いはなかっただろうが,健康生活を補う看護は診断・治療を目的とはしておらず,解剖・生理は日常生活の援助手段として使う」と定義。看護におけるからだの見方は,「形態機能学」として,総論に(1)何のための行動か,(2)恒常性維持のための物質の流通,(3)恒常性維持のための調節機構を,また各論としては(4)動く,(5)食べる,(6)息をするなどをあげ,「日常生活行動と生命現象のつながり」を基本に授業を行なっていると述べた。その上で氏は,「看護援助は神経系,循環系という系統別に区切ってからだの一部が反応するのではなく,全身が反応するもの。日常生活行動の視点から看護者が見るからだを,『丸ごとの“からだ”』と呼びたい」と提言した。

看護の視点で「みる」を検討

 メインテーマを受けて企画されたシンポジウムには,横山美樹氏(聖路加看護大),縄秀志氏(長野県看護大),長濱晴子氏(日本バイオビレッジ協会),岡田美賀子氏(聖路加国際病院)の4氏がシンポジストとして登壇。
 横山氏は,からだを診る時の基本手技となる,「フィジカルアセスメント」について,聖路加看護大における位置づけ,教育方法の実際などを概説。また,縄氏は,「ケアリング」の視点から「からだの反応の複雑性」を探るとともに,領域を越えた研究者ネットワークの必要性を訴えた。
 自身が「重症筋無力症」と診断され,治療を継続している長濱氏は,「自己治癒力」に関して考察。岡田氏は,ペインコントロールナースの立場から,患者のQOLにつながるアセスメントの重要性を指摘した。