医学界新聞

 

「糖尿病療養指導士」の必要性を論議

第6回日本糖尿病教育・看護学会開催


 第6回日本糖尿病教育・看護学会が,さる9月15-16日の両日,川田智恵子会長(岡山大)のもと,「ヘルスプロモーションの方策を活かした糖尿病教育・看護をめざす」をメインテーマに,岡山市の岡山シンフォニーホール,他で開催された。
 今学会では,会長講演「根拠に基づいた糖尿病教育の取組みをめざして」(川田氏)をはじめ,特別講演Ⅰ「アクションリサーチ:現場からの理論の創造のための研究方法-糖尿病教育・看護への活用をめざして」(英・バース大教育学部 Jack Whitehead氏),同Ⅱ「私の糖尿病」(岡山旭東病院 吉岡純二氏),教育講演3題,シンポジウム「糖尿病教育のシステム作り-1次予防,2次予防,3次予防を考えて」(座長=日本赤十字看護大 河口てる子氏,北大附属病院 川口洋子氏),および市民公開講座を兼ねたパネルディスカッション「日本糖尿病療養指導士の活動をいかに発展させるか」(座長=平塚共済病院 佐藤昭枝氏)などが企画された。
 なお,本年3月に行なわれた「第1回糖尿病療養指導士」試験の結果,受験者5154名のうち,4343名が合格。看護婦・士,准看護婦・士は1956名であったことに加え,本年4月より開始された認定看護師(糖尿病看護分野)には19名が受験し15名が合格したことも報告された。明年春には,初の糖尿病看護分野の認定看護師が誕生の運びとなる。
 本号では,糖尿病療養指導士の必要性が論議されたシンポジウムを中心に報告する。


糖尿病予防-地域からの発信

 糖尿病患者は,1997年の実態調査で1370万人と算出され,その後も患者は増加。糖尿病性腎症などの合併症患者も増え,医療費も増加の一途を辿っている。糖尿病の1次予防は発症予防,2次予防は早期発見,3次予防は合併症の治療・教育を行なうこと(WHOの概念)であるが,日本においてはこれらの機能が有効に働いていないと指摘されている。このことから,今学会のシンポジウムでは,先駆的なシステム作りと活動をしている富山県と島根県の実例を紹介し,効果的で効率的なシステムの検討とともに,システム構築のためにはどのような施策が考えられるか検討された。
 シンポジストとして,吉田百合子氏(富山医薬大)が「富山県における『糖尿病アタックプラン』,スタッフ研修と糖尿病1次,2次,3次予防のかかわり」を,武田倬氏(鳥取県立中央病院)が「糖尿病教育のシステム作り,島根県における1次予防から3次予防まで」を発表。その後,及川孝光氏(三和銀行東京健康管理センター)ら3氏がコメンテーターとして登壇した。
 吉田氏は,富山県では1996年より『糖尿病アタックプラン』を策定し,医療・行政が一体となって糖尿病予防に取組んでいる実態を報告。3年間を1クールとして看護職をはじめ関連職種にスタッフ教育を行ない,それぞれの職種が対策の各部分を担うという共通基盤と連携が予防を有効なものにしていることを述べた。
 また武田氏は,患者の数に比較して糖尿病認定医・指導医,認定教育施設が少ないことを指摘し,地域の糖尿病療養指導士の必要性を強調した。その上で,「島根県糖尿病療養指導士」を育成し,長年にわたり進めてきた島根県での糖尿病スタッフ教育の経過や,県内各地の医療機関,地域の中で活躍している現状を報告。地域の糖尿病療養指導士の問題点として,(1)学会の日本糖尿病療養指導士との整合性,(2)質の全国的均一化,(3)活動の場の確保,(4)医療法遵守の徹底などをあげ,糖尿病の予防には,「保健・医療・福祉の一体となった取組みが必要」と強調した。