医学界新聞

 

看護学教育検討機関の設立を提言

第11回日本看護学教育学会開催


 第11回日本看護学教育学会が,さる8月4-5日の両日,小山眞理子会長(聖路加看護大)のもと,横浜市のパシフィコ横浜において開催された。
 今学会のメインテーマは,「新しい世紀の看護学教育を拓く」。同テーマの会長講演やAlba DiCenso氏(カナダ・マックマスター大)による招聘講演「エビデンスに基づく看護学教育」&「エビデンスに基づく看護学教育を促進するための方略」をはじめ,フォーラム「看護教育におけるエビデンス」,シンポジウム「卒業時の能力(コンピテンシィ)と生涯教育」を開催。さらに,日本看護学校協議会(山田里律会長),全国公立短大協会(斎藤秀晁会長),日本看護系大学協議会(新道幸恵会長),日本看護協会(南裕子会長),文部科学省(高等教育局 正木治恵氏),厚生労働省(医政局看護課長 田村やよひ氏)が一堂に会する駅伝講演「新しい世紀の看護学教育への発信」が企画された他,交流セッションが6テーマ開催された。次回は,明年7月に札幌市で開催される。


看護学教育への3つの提言

 会長講演を行なった小山氏は,近年の看護婦養成所,および看護系の短大や大学の推移や,養成所と大学では研修費・研究費などに5倍の格差がある実態などを提示。教育機関は違っても「同じ国家資格」であることから,「学校種別による環境差改善の必要性」を指摘した。また,その上でこれからの看護学教育への提言として「(1)管轄省庁および学校種別を超えた看護学教育を検討するシステムの構築=横の連携,(2)育てるための学校と実践の場との協働と連携=縦の連続性,(3)Evidence-Based Nursing Education(EBNE)」とまとめた。なお(1)については,高等教育を担う文部科学省と,看護職の教育・免許・職業を司る厚生労働省との間に「看護学教育検討機関」を設けることを示唆した。
 一方,EBNの第一人者として知られるDiCenso氏は,EBNEとは何か,EBNEのバリア探究,EBNE促進のための方略,に関して講演。看護基礎教育でエビデンスを活用する方法として,(1)他者の研究成果を大いに活用する,(2)授業の前には文献検索を行なう,(3)学生の疑問には耳を傾ける,(4)自ら研究を行ないエビデンスを見出す,(5)研究成果は公表する,(6)共同研究で輪を広げる,(7)上手な情報交換をする,をあげた。

看護基礎教育における「神話」

 看護基礎教育と継続教育との重要な接点であるコンピテンシィとはどのようなものか,またどう育成し,それはどのように測定・評価できるのか,さらに看護職としての研鑚や継続的な自己教育としての生涯教育をどのように積み上げていくのかについて論じたシンポジウム(座長=東医歯大 井上智子氏,聖マリアンナ医大病院 陣田泰子氏,写真)では,基礎教育の立場から中山洋子氏(福島医大)が登壇。
 氏は,看護基礎教育における神話として,「(1)看護過程を展開できるようになれば論理的な思考ができるようになる,(2)多くの情報を得ることができればより適切な判断ができる,(3)看護過程の展開ができることが看護基礎教育のゴール」をあげ,看護過程を再考する必要性を説いた。また,看護基礎教育で育む能力として,差異を見分ける力,人を尊重できる倫理観,相互作用の中で成長するコミュニケーションをあげたが,氏の「神話」に関しては,その後のフロアを交えた総合討論の場でも話題となった。