医学界新聞

 

日本における遠隔診断の実態とのその将来
聖ルカ・ライフサイエンス研セミナー開催


 聖ルカ・ライフサイエンス研究所(日野原重明理事長)の,研究事業の一環である医師・看護職を対象とした「電話通信などによる健康指導に関する研究セミナー」が,さる7月7日,東京・築地の聖路加看護大学講堂にて開催された。なお,第5回目となる今回のテーマは,「電話および電送による遠隔診断の日本における実態とその将来」。
 「21世紀の医療は,診察室における治療をいかに縮小し,有効な在宅ケアによる指導をするかという方向に向かいつつある。その指導は,電話その他による遠隔診断,治療である」(日野原氏)とした今セミナーでは,以下の6講演の他,パネルディスカッション(写真)も企画された。
 (1)21世紀の遠隔医療-旭川医大の取組み(旭川医大・眼科 吉田晃敏氏),(2)島根県立中央病院における地域医療支援-遠隔医療支援を中心に(島根県立中央病院・総合診療科 木村清志氏),(3)ティーベック社における電話相談サービス-その動向について(ティーベック社 奈良岡ミツ氏),(4)訪問看護における電話相談(聖路加国際病院 押川真喜子氏),(5)小児科領域における電話相談の対応と注意点(立教大・聖路加国際病院 大矢達男氏),(6)ライフプランニングセンター(LPC)におけるナースによる電話相談のカリキュラムと実態(LPC 石清水由紀子氏)

3D映像による遠隔手術を実施

 なお,(1)の吉田氏は,旭川医大眼科学教室が国際ISDN回線を利用し,1996年11月から米・ハーバード大医学部附属スケペンス眼研究所との間で行なわれている,リアルタイムでの眼科遠隔医療手術の映像を紹介。術者が研究所側に術式の確認を行なうなど,距離を感じさせない臨場感が伝わってきた。また,同教室では1994年から地域の基幹病院との間で遠隔医療ネットワークを進めているが,2000年7月からは中国・南京中医薬大と3D映像による遠隔医療を行なっていることも紹介。さらに,1997年には同大病院内に遠隔医療センターを設立させ,地方病院との全診療科での遠隔医療をめざすプロジェクトを展開していることも明らかとした。
 今セミナーからは,リアルタイム映像による遠隔医療が,高速通信網の発展にともない今後は国内だけにとどまらず,海外の基幹病院との間でますます進むことが示された。一方で看護においては,進化する医療界にあって,患者サポート機能として遠隔医療,人と人とのコミュニケーションがより重要になることを予感させた(参照:本号9-12面「特別編集」鼎談)。