医学界新聞

 

看護診断・介入・成果の実証をテーマに

第7回日本看護診断学会が開催される


絶妙なコンビぶりを発揮させたフォーラム司会の岩井氏(左)と大島氏(右)
 さる6月21-22日の両日,第7回日本看護診断学会が,江本愛子会長(三育学院短大)のもと,「21世紀-看護診断・介入・成果の実証」をメインテーマに,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 なお,昨年アメリカで開催された第14回NANDA(北米看護診断協会)大会で新しい看護診断分類法(タキソノミー II)が承認されたが,今学会はそれを受けた初めての学会となった。また,NANDAとNIC(看護介入分類),NOC(看護成果分類)のパートナーシップ強化を進めてきた,NANDAの前理事長ドロシー・ジョーンズ氏(ボストン大)およびパトリシア・ジョーンズ氏(ロマリンダ大)を招聘。前者は「標準看護用語への動きとその背景」・「機能的健康パターンとアセスメント・スクリーニングツールの開発と改良」を,また後者は「結合性:パーソナルホールネス理論に向けて」と題する講演を行なった。
  
交流セッションAの様子(左)。なおワークショップでは,「不安」や「感染のリスク状態」「知識不足」など,11の診断カテゴリーごとにグループに分かれて討議された(右)


多彩なプログラムを企画

 同学会では,会長講演「成果のみえる看護」をはじめ,フォーラム「看護診断・介入・成果-今日の焦点」(司会=聖路加看護大 岩井郁子氏,山梨県立看護大 大島弓子氏),ワークショップ「介入・成果につなげよう看護診断」(コーディネーター=北里大 岡崎寿美子氏,臨床看護・管理研究所 古橋洋子氏),相互に意見交換を行なう場を設定し互いに評価をする事例セッション「看護診断の妥当性の検討-同僚相互評価を用いて」(プレゼンテーター=亀田総合病院 開田有紀子氏,阿部征子氏),また今大会の新しい企画として,専門領域の研究グループが看護診断活用の現状と課題を話題提供し,参加者とともに今後の方向性を探ろうとの趣旨による対話型の交流セッション「看護専門領域における看護診断の活用と課題」(全6題,下表参照)が行なわれた。さらに,看護診断用語検討委員会報告「看護診断を導入した看護教育カリキュラムに関する検討:文献的考察」(日赤看護大・日本看護診断学会看護診断用語検討委員 黒田裕子氏)や同学会の研究助成演題として,「看護診断過程における看護婦の情報収集能力の現状とその問題点-情報収集とその活用方法の検証」(岐阜大 松波美紀氏,他),「周手術期患者のボディイメージの修正過程とその対処方略」(聖路加看護大大学院 藤崎郁氏)の報告も行なわれた。

医師・看護婦間での共通言語が必要

 江本会長は,「優れた看護診断のためには,保健医療システムや文化に即した看護診断の開発,および臨床判断を高めるための看護診断教育が必要」として,具体的な事例をあげ,手がかりとなるデータの収集などによる「診断推論法」を提示した。
 また,ドロシー・ジョーンズ氏は「ANA(アメリカ看護婦協会)公認の用語開発団体」として,NANDA,NIC,NOC,在宅ヘルスケア分類(V.SABA),患者のケアデータ(J.Osbolt),オハマシステム(K.Martin),SNOMED RT(Systematized Nomenclature of Medicine)をあげ,世界の看護者が共通して使える言語の統一の必要性を説いた。
 一方,看護診断・介入・成果の目的・意義を実証するためには,今後の取組みや課題,方向性を論議する場が必要として設けられたフォーラムには4氏が登壇。「日本文化に即した看護診断用語」(国立看護大学校 上鶴重美氏),「IT時代における電子カルテと看護診断」(山口大 山下美由紀氏),「協働と連携における看護診断用語の課題-医師サイドからの一考察」(慶大川村雅文氏),「看護実践国際分類(ICPN)の動向と今後の課題」(日本看護協会 岡谷恵子氏)の視点からの考察が述べられた。
 この中で川村氏は,医師・看護婦間での共通言語が必要とした上で,「医学診断用語はすでに社会的な認知を得ている言語だが,看護診断用語はどちらかと言えば各論を避けて,包括的な概念を表わすものが多い」と指摘。「患者,家族,地域に説明をするためにも,個々の看護診断名の意味するところを明確に定義し,簡単に理解できるような日本人の書いた教科書が望まれる」と述べた。なお,総合討論の場でも「患者にわかる言葉」と「専門用語の必要性」をめぐって論議。「日本の文化に則った日本語にする必要がある」「一般用語にし直さなくとも,患者に説明をする時にわかりやすく解説すればよい」との意見も出された。



表 「交流セッション」専門領域グループ
A.クリティカルケアと看護診断:日本看護診断学会研究推進委員会
               (東海大 藤村龍子氏,慶大 松田美紀子氏)
B.リハビリテーション領域への看護診断導入の課題
   :国際リハビリテーション看護研究会
               (青森県立保健大 石鍋圭子氏,都立保健科学大 石川ふみよ氏)
C.在宅ケアにおける看護診断の活用と今後の課題
   :日本看護診断学会研究推進委員会
               (愛知県立看護大 草刈淳子氏,日大板橋病院 鹿渡登史子氏)
D.助産診断の実際-学生指導を通して:日本助産診断・実践研究会
               (桐生短大 青木康子氏,東邦大医療短大 斎藤益子氏)
E.産業看護と臨床看護の連携のための看護診断-働く人々へのケアを効果的に行なうために:さんごの会
               (東海大 河野啓子氏,同 荒木郁乃氏)
F.看護基礎教育における看護診断の教授/学習    (名大 中木高夫氏)