医学界新聞

 

全国から医学生らがシンポジウムに参集

医学生と医師のML第1回シンポ開催


 「よりよい医療をめざす医学生と医師のメーリングリスト」の主催による第1回シンポジウムが,さる6月9日,東医歯大で開催され,全国からメーリングリスト(以下,ML)のメンバーである医学生や研修医,指導医ら101名が参加した。
 本MLは1999年に東海大医学部学生(現6年)の市村公一氏が開設したもの。大学・施設を超えた相互研鑽,医療や教育に関するディスカッションの場として,多くの医師,医学生の支持を得て,急速に会員数を増やしている(現在会員数約750名)。

医学生のうちに「すべきこと」

 シンポジウムでは,まず,「各地の自主的な勉強会の紹介」が企画され,(1)「基礎から臨床へ」(聖マリアンナ医大グループ),(2)「ケーススタディ」(北大グループ他),(3)医療面接(東女医大グループ),(4)ACLS(東医歯大・千葉大グループ他)の各グループからの報告をもとに,勉強会のあり方についての議論が行なわれた。
 午後からは,これらのグループを母体に,実際の症例をもとに4チーム対抗のケーススタディ「試合」も実施された。
 本MLはもともと,「さまざまな症例を呈示してみんなでその診断を考え,投稿してもらい,ディスカッションを通じて病態生理の理解を深め,クリニカルスキルを高めること」(市村氏)を目的に始まったこともあり,各チームは奮闘。大いに盛りあがった。
 一方,続いてのスモールグループディスカッションは,「臨床実習が始まるまでにすべきこと」,「卒業までにすべきこと」をテーマに,カリキュラムの違いを超えて「すべきこと」を探る企画。
 8人程度のグループで行なわれたディスカッションでは,大学や施設の違いを超えて,初めて直接出会ったもの同士が,「医学を学ぶ」ことについて,普段抱いている思いをぶつけ合い,それが刺激的だったらしく,好評であった。なお,各グループでのディスカッションの成果を,大まかにまとめたものを以下に記す。

 

 

●臨床実習が始まるまでにすべきこと
 (1)自分の目標を定める
 (2)ハート(心)を学ぶ

 (社会勉強,いろいろな人との交流,よく遊ぶ,実際の医療現場を見る,他)
 (3)ブレインを鍛える
 (病態生理の理解,解剖・生理・病理,画像診断に役立つ人体の構造の理解,系統講義と症候学を結びつけつつ学ぶこと,ケーススタディ等で症候からのアプローチを知ること,他)
 (4)医療面接の学習
●卒業までにすべきこと
 (1)ハート(心)を学ぶ

 (社会勉強,学内外の交流,幅広い知識の吸収,国際的な視野の涵養,幅広い読書,夢を持ち,語る,豊かな人間性の涵養,自分のやりがいを見つける,他)
 (2)医師となる自覚を持つ
 (自分を見つめ直す,「医師」になることの自覚/覚悟,ロールモデルを見つける,病院見学,チーム医療の理解,患者さんへの接し方)
 (3)ブレインを鍛える
 (問題解決能力,最低限必要な知識・手技,ACLS,EBM,英語)
 (4)その他
 (後輩に教える,体力をつける,他)

尽きぬ議論,「また会いたい」

 シンポジウムの最後には,パネルディスカッションが組まれ,模擬患者(SP)として医学教育に関わる黒岩かをる氏(九州山口SP研究会),MLでよき指導医役として慕われている長嶋隆氏(聖マリアンナ医大)と桑平一郎氏(東海大),米国の臨床医という立場から,MLでの議論によい刺激を与え続けている大杉満氏(ワシントン大),そして,2年目の研修医で家庭医療学研究会学生・研修医部会代表を務める中村明澄氏(国立病院東京医療センター)がパネリストとして登壇し,「よい医師とは何か」,「よい医師をめざして何をすべきか」などを話題に,フロアを交えて討議した。
 医学生たちが次々と発言に立ち,閉会後もパネリストの周りに集まり,議論を続ける姿を見ていると,「もっともっと学びたいことがたくさんある」,「いい医療をやりたいんだ」,そんな彼らの気持ちが伝わってくる。
 尽きぬ議論は,懇親会,さらには2次会へと,夜11時ごろまで続いた。
 「これだけMLで議論をしていれば,自然に相手の顔が見たくなる。そんな素朴な気持ちが原点だった」,とシンポジウムの発案者で,企画に協力してきた桑平氏は話す。
 そして,その「素朴な気持ち」にたくさんの医学生たちが共感した。IT時代になろうとも,医療は人と人との営みだ。「会ってみたい」,「話してみたい」という気持ちから,全国から学生らが集い,出会ったということには,大きな意味がある。
 「また,やろうよ」,「また,会いたいね」そんな声が聞こえてきた。

●「よりよい医療をめざす医学生と 医師のメーリングリスト」参加方法
 所属と氏名,MLで使用するE-mailアドレスを明記のうえ, koichimura-tok@umin.ac.jp まで申込めば誰でも参加可能