医学界新聞

 

国民の信頼に応えるライフサポーターをめざして

平成13年度日本看護協会通常総会開催


 日本看護協会(南裕子会長)の平成13年度通常総会および全国職能別集会が,さる5月16-18日の3日間,福岡市のマリンメッセ福岡で開催された。なお,同協会の総会が地方で開催されるのは,一昨年の横浜市(横浜アリーナ)での開催以来であり,九州地区で開催されるのは初めてのこと。
 また,同総会においては,これまで「看護婦養成制度の一本化に向けて,准看護婦養成停止を実現させよう」「ILO看護職員条約の批准と勧告の適用を促進させよう」などのスローガンを掲げていたが(昨年は4つ),本年は「口ずさみやすいスローガンに」とのことから,「21世紀,国民の信頼に応えるライフサポーターをめざしてネットワークする看護職」という,より具体的なイメージを持つスローガンが掲げられた。
 さらに,ICN(国際看護婦協会)の「看護婦の倫理綱領」が2000年に改訂され,「看護婦には4つの基本的責任がある。健康を増進し,疾病を予防し,健康を回復し,苦痛を緩和することである」の前文からはじまる綱領文,およびICN・ICM(国際助産婦連盟)の所信声明が提示された。


一歩後退した「男性助産師」の道

 南会長は冒頭のあいさつの中で,「会長就任以来,『ビジョンを持って国民とともに楽しく歩む看護協会』をモットーに協会事業を進めてきた」と述べ,本年は医療事故防止対策と看護職の責務に対する対応策に取組むとの姿勢を示すとともに,「国民の信頼に応えるライフサポーターをめざす看護職の専門職集団として,保健・医療・福祉の分野における課題に取組んでいきたい」と表明した(写真)。
 また,保助看法の一部改正案として,障害者が医療職の免許取得への道が開かれる「絶対的および相対的欠格事由」の撤廃・削除や守秘義務の創設,保健婦・士,看護婦・士,助産婦の「師」への名称改正および男性助産師の創設,などがあげられている。このうち男性助産師については,「国会内で総員の理解が得られないとのことから,成立が遅れるだろう」と述べたが,今後も男性の助産婦資格取得のための活動は続けられる。

卒後研修必修化に向けた検討を開始

 なお,本年度の事業計画の重点項目には,(1)会館建設と組織の強化,(2)准看護婦養成停止の早期実現と移行措置の検討,(3)介護保険制度の適切な運用の推進と訪問看護事業の拡充,(4)国民の健康づくりの推進,(5)医療・看護における安全対策の推進,(6)生涯学習の推進,(7)専門看護師・認定看護師の認定と導入の拡大,(8)国内外の防災・災害看護ネットワークの構築を据え,これらに基づいて事業が進められる。このうち,看護制度に関する項目では,改めて「看護婦・士の卒後研修の必修化」の推進が盛り込まれ,制度化に向けた検討が始められることになった。また,上記(4)に関連しては,「看護職者に喫煙者が多い」との指摘があることから,「看護職者の喫煙対策」を提起し,今後実態調査を行なうとともに禁煙対策の普及に努める方針が打ち出された。
 その他,議案審議では,准看護婦の移行教育の早期実現を願う意見が相次いだ。

南会長が再選,副会長が3人体制へ

 なお,同協会の会員は51万256人(3月31日現在)となり,初めて50万人を超えた(全就業者数に対する入会率は48.9%)。また,今回行なわれた役員改選では南会長が再任,副会長の井部俊子氏(聖路加国際病院副院長)が監事に就任したことに伴い,新たに新道幸恵氏(青森県立看護大学長),森山弘子氏(東女医大病院看護部長)が副会長に選ばれ,千田徳子氏(西円山病院副院長)との3人体制となった他,嶋森好子常任理事に代わり,新たに楠本万里子氏(日本看護協会出版会)が常任理事に就任した。


■シンポジウム「看護記録と情報開示」
 助産婦・看護婦・看護士合同職能集会で開催

 全国職能別集会が開催された5月18日には,助産婦職能集会と看護婦・看護士職能集会の合同企画によるシンポジウム「看護記録と情報開示」(座長=同協会看護婦・看護士職能理事 高嶋妙子氏,同助産婦職能理事 渡部尚子氏)が開催された。

看護記録のあり方と情報開示の利点

 同シンポには,押田茂實氏(日大),川合政恵氏(島根県立中央病院),上谷早苗氏(みなと医療生協総合病院),鳥羽克子氏(聖路加国際病院)および嶋森好子氏が登壇。
 押田氏は,看護記録は経時的記録がよいとした上で,「(1)いつ,(2)どこで,(3)誰が,(4)何をしたか,(5)記録者名,が正確・詳細・簡潔に記載されていることが望ましい」と述べた。また川合氏は,全国に先がけて導入を試みた島根県立中央病院の電子カルテシステムを紹介。患者にわかりやすい情報が提供できるなどの利点を示した。
 上谷氏は,全患者を対象に毎朝ベッドサイドにカルテを配布し,情報提供している実態を報告。さらに診療情報管理士である鳥羽氏は,診療記録には「真正性,客観性,迅速性,見読性,完全性が求められる」とし,共通言語を持つ記録の標準化を今後の課題にあげた。
 最後に嶋森氏は,これまでに厚生省で行なわれてきた審議会や協会の取組みを紹介。診療情報の基本的なあり方や記録開示はなぜ必要なのかなどを解説した。